【完結】愛する者を手に入れる事が皇帝になる条件です

みやちゃん

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祭りの思い出

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「はぁ、良かった」
お祭りを思い出してアイルーナは息を吐く。

生まれて初めてお祭りというものに参加した。
人が多くて、賑わってて、色んな物があって‥
人々が幸せそうに笑いあってた。

私たちも普通の恋人同士に周りの人達から見えていただろう。
お祭りの雰囲気にのまれたからか自然と距離が近くなり、一緒に笑いあえた‥

お祭りの思い出が鮮やかに思いだされる。

まず、フィンと手を繋いで歩いた。
護衛ができなくなるとゴネてたけど、無理やりに押し付けて良かった。
フィンはずっと周囲に気を配ってたから疲れただろうけど。
横に並んで手を繋ぐ。
その距離感にドキドキしてフィンの温もりを感じる事ができた。

その後、フィンと一緒にご飯を食べた。
外で食べ歩くというのは毒を仕込まれる心配がない。
お行儀が悪いと人目を気にする必要もない。
何食べようかなんて色々探すのが楽しかった。

そして、フィンとお揃いのピアスを買った。
お互いの瞳の色。
お店の人からお互いに相手の色を持っていれば、ずっと一緒にいられるって言われていると教えてもらった。

そのピアスをテーブルの上に置いて眺める。
高い物じゃない。
でも、どんなに高価な宝石よりステキな宝物だ。
ニヤニヤが止まらない。


皇帝の唯一の皇女。
帝国では私の顔は民衆にバレていたし、何より暗殺が日常茶飯事で外に出ることも難しかった。
私はともかく周りが巻き込まれる可能性が高かったから。

宰相はフィンをこんな国に追い出すなんてと思ったけど‥
本当にこの国に来て良かった。
帰ったら感謝しなくちゃ。
でも嫌味に聞こえるかも。
私の感謝に青筋を立てて怒る宰相を想像してクスッと笑いが出る。

宰相はフィンを私から離したかったのだ。
自分の息子を私の婿にする為に、常に私の側にいるフィンが目障りで裏で手を回し、留学という形で国外に出した。
本当に皆勝手な事をする。
それが15年前の悲劇につながったのに‥

友達ができた。
フィンと恋人のような時間を過ごせた。

どれも初めての経験だ。
そしてこの先もう経験できない事だ。

これが幸せというものだろうか?
誰かと一緒にいて、こんなに穏やかに過ごせるなんて。
敵じゃない。
媚びてくる者じゃない。
警戒をしなくても良い心地よい時間を共有できる。

きっとお父様が私に与えたかったものはこれなんだろう。
昔お父様がこの国で感じる事ができた幸せな時間。

皇帝を目指さなければ手に入ったもの?

「そんな事考えても意味ないのに‥」
フッと自虐的な笑いが出た。

何を考えているんだろう?

私は皇帝になる。
そう決めたのは自分だ。
その為にここまで頑張ってきた。
今ここで諦めるわけにはいかない。

フィンを巻き込んでしまったのは申し訳ない。
私のワガママだ。
フィンが傷つく結果となるかもしれない。

皇帝となったら全てを諦めるから‥
だからもう少しだけ。
もう少しだけ今のこの時間を私にください。



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