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ミルアージュの思い

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女王は表情がなくなり、口を開くことができなかった。

豊かな小国のアンロックは常に周囲の国から狙われていた。
その中で、国を、国民を守るためには皆を導く象徴である王の存在は必要だった。
その王が不出来の者がなれば‥
国はすぐに衰退する。
王が亡くなればミルアージュに教えられる者がいなくなる。
王は焦っていた。
自分が死ぬ前に何としても国を守れる優秀な次期王を育てなければと。

ミルアージュもその事は十分理解していた。
「犠牲ではないわよ、そうするしかない状況だった。でも、お義母様がアリメール王国から嫁いで来られて状況は一変した。強国の後ろ盾を持ったアンロックは今までのように攻められなくなった。」

ミルアージュ7歳の頃、王は近くの大国の第一王女を正妃に迎えた。
現、アンロック女王だ。

娘に甘々だったアリメール国王が、一目惚れをしたという彼女の強い希望を叶えたもので政略的な意味はあまりなかった。

アリメールにとってメリットはない結婚でもその当時、小国だったアンロックにとっては救いの神だった。

「お父様は、自分の健康状態を知りながらも自分を愛して嫁いできてくれたお義母様をとても愛しておられた。お父様の幸せそうな顔を見るのは、本当に久しぶりで私も嬉しかったの。」

ミルアージュも思い出したのかクスッと笑みがこぼれた。

「大国で皆から愛されて育った王女であるお義母様はキラキラしていて眩しくて、この国を救った。お父様にとっても私にとっても、とても恩義のある大切なお方なの。」

皆から愛され、人を疑うことを知らない女王。
そのままでは国を治めるのも難しかった。
だが、ミルアージュはそのままの女王でいて欲しかった。
だから本来、女王がするべき政務もミルアージュが行なっていた。
綺麗事ばかりではない世界‥
中継ぎである女王が辛いことをしなくても良いとミルアージュは思っていた。
それが例え、自分の我儘だとしても父が愛し、自分が大好きだったお義母様でいて欲しかった。

そんなミルアージュの告白を聞いた女王は眉を下げた。

自分が嫁いできて、レンドランドを産み、王位継承権を奪った‥
今まで憎まれていると思っていた義娘からどれだけ愛されていたのかを知った。

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