【完結】悪役王女は裏で動くのがお好き

みやちゃん

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レンドランドの告白

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レンドランドは誰を見るわけでもなく遠くを見ていた。
「父上は素晴らしい王だった。ずっと尊敬していた。父としても統治者としても。健康を害しながらも、色々な政策を打ち出していた。王の引き継ぎ教育が始まり、政務の詳細がわかりさらに尊敬する気持ちが強くなった。」

レンドランドはミルアージュをフッと見て
「特にここ数年の政策が特に素晴らしかった。戦がなくなり国力が安定したのもあるだろう。しかし、この国の何十年も将来を見据えた政策は本当に驚かされた。」

レンドランドはキラキラした目をしてこの国の政策を語った後、フゥとため息をついた。

「そんな頃、宰相から真実を教えられた。姉上が行なっていた事だと‥」

そう、次代の王となるレンドランドへは真実を話さなければならない。
ミルアージュからしか引き継ぎのできないものも多かったからだ。

「そこで、姉上が長年、何をしてきたのかを知った。そこで私は思った。自分にはこれ以上の政策をできない。この国を導くのは私ではない。姉上が王になるべきだと。」

その想いがレンドランドの自殺未遂という最悪の結末を迎えた。

「なぜ相談してくれなかったの。レンドランド‥わたくしはあなたの母よ。その思いをどうして打ち明けてくれなかったの。」
涙を流しながら女王は言葉を発した。

レンドランドは黙って答えない。
代わりに見かねたミルアージュが答えた。

「言えなかったのですよ。レンドランドが王となるのを一番期待していたから。」

女王も国民たちも皆、レンドランドに期待していた。
まだ経験の少ないレンドランドにとっては過度な期待であり、プレッシャーだけが大きくなっていった。

「それは‥」

女王は政治には疎かった。
レンドランドの悩みを理解することは難しい。
ミルアージュの実力を見極めることはできないのだから。
そのことをレンドランドはわかっていた。
そして、王としての将来に期待している母にミルアージュの方が良い王になるなど言えなかった。

ミルアージュの目から見てレンドランドは王としての素質は十分あると思っている。
知識や経験が足りなければ、これから足していけばいい。
優秀な臣下も沢山いる。
協力しあって国を作り上げれば良いのだ。

だから、そんなに追い詰める必要はなかったと思うが、それはレンドランド自身の心の問題‥
王として全ての責任を負わねば‥
プレッシャーの中、自分より優れた者がいると知ったレンドランドの絶望がどのくらいのものだったのか。
亡くなった父王なら問題がなかった。
亡くなっている以上誰かが変わりをしないといけないのだから。

事実は違った。
姉という身近な存在であり、自分が生まれたことにより王位を奪ってしまった存在だ。
プレッシャーと不安の中、王となるべく努力していたレンドランドにとって心が折れてしまう程の衝撃だった。

王は統治する者、民の前に立ち、希望を与え守る者、民の前で常に強くいなければならない者‥
自分の役割を自ら放棄するような者に誰もついていかない。
王太子の自殺未遂が表に出れば、王位継承剥奪は間逃れない。
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