上 下
13 / 23

古代神ディスグレア。

しおりを挟む
「おい、あんたらスゲーな。あのゴンザレスになにもさせないとか」
 中肉中背の男が俺に近寄ってくる。

「おい、それ以上こちらに寄れば敵と見なす」
 男はウンウンとうなずくと仲間の元へ戻っていった。

「マサト君、今の人は別に敵じゃないんじゃない?」
 ミチルが俺の対応に不満な表情を見せる。

「ミチルは本当に平和ボケだな。今のはマサトの対応が正しいぞ。ここはさっきのやつらのテリトリーだ誰が敵か分からないからな」
 とメルリィがそう言うとミチルは「そっか~」と言いながら上の空になる。

「どうしたミチル大丈夫か?」

「大丈夫だよ~。ただ、ううん……なんでもない」
 そう言うとミチルは押し黙った。
 最近メルリィと話してばかりでミチルと意思の疎通ができてないな。
 今日、宿をとったら少し話し合うか。

 俺たちはテーブルにつくと神官サディスに話の前に好きなものを頼んで良いと伝えた。

「本当によろしいので?」

「ええ、構いませんよ」
 助けるなら中途半端はいけない。ちゃんと助けられないなら最初から助けるべきじゃないってばあちゃんが言ってたからな。

 俺の許可が降りるとサディスは食事を頼む食い溜めと言わんばかりにテーブルにと料理が並ぶ。

「これ一人で食べるんですか?」

「すみません、痩せの大食いなもので。本当に死ぬかと思いました」
 いつもは道に生えている食べられる草を食べて飢えをしのいでいるのだとか。
 聖職者って言うのは存外大変なものなのだな。

「それでお話と言うのは」
 あらかた料理を食べ尽くしたサディスに俺は用件を聞いた。

「はい、あなた方お二人は神のご加護がないですよね?」
 サディスはミチルと俺を指差し言う。

「良く分かりますね。私たちはまだ神の加護を得られていません」
 サディスの説明では神官にはその人間が何の神の加護を受けているのか見ただけで分かるそうなのだ。
 この世界は改宗が禁忌とされており。改宗させたものも罪に問われるからだそうだ。

「それで、もしよろしければ我が神ディスグレアの加護を受けてはと思ったのです」

「ディスグレア? そんな神聞いたことがないぞ」
 メルリィが神の名前を聞いて訝しむ。

「ええ、女神ディスグレア様は古代神ですから、一般にはその名前は伝えられてません」
 古代神、俺の心がワキワキしだす。

「それで、その神の武器はなんなのですか?」

「武器は大剣と長剣の二刀流で戦神です」
 そう言うと懐から神像を取りだし俺たちの前に置く。

「かっこいい……」
 神様に対してかっこいいなんて言葉は不敬だが、大剣と長剣を持ち身体には龍が巻き付いていて背中には炎を纏っているその姿はそう形容するしかなかった。

「さらに――」
「入ります! 信徒にさせてください!」
 俺はサディスの言葉を遮り入信の決意の言葉を口にした。

「本当ですか!?」

「ええ、こんなにも素晴らしい神の信徒にならない訳ないじゃないですか」
 そう姿形が美しい以外に武器が長剣と大剣なのだ。まるで俺の為にいる神だ。これを逃したら俺はたぶん加護無しのままだ。

「すみませんディスグレア様の像を作ってもいいでしょうか?」

「これから作るのですか?」

「はい、お時間は取らせません、一瞬で作れますから」

「何をするのかわかりませんが、一瞬でしたら構いませんよ」
 俺は整理棚から出した鉄のインゴットをバッグから出したように見せ、テーブルの上に置くと鉄のインゴットに製作クリエイトを使いディスグレア像を作り出した。

 もちろん大きさは元の大きさの四分の一だ。

「「すばらしい」」
 俺とサディスの声が重なる。
 鉄で作られたディスグレア像はサディスの持つ木の神像よりも神々しく美しかった。

 俺たちはその素晴らしさに握手をした。

 意味は分からないが握手せずにはいられなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

処理中です...