上 下
11 / 23

一文無しの神官。

しおりを挟む
 街道を歩いていると遠くに建物が見えてきた。

「あれが目的地の町ヘルボルンよ」

「大剣を使うような神様がいれば良いんだけど」

「うーん、確かヘルボルンにある神殿は闘神ヨルムンツよ武器は鉤爪ね」
 はい、却下。

 まあ、焦る必要はないかもしれないな。

 俺たちはそのまま町へ行くと町の入り口で守衛と神官服を着た人が揉めていた。

 順番を待っていると、どうやらお金がなくて入場できないようで、神官服の男はこんな所に放り出されたら死んでしまうと嘆く。

「メルリィ、町の入場にお金必要なのか?」

「ああ、私たちの分なら心配するな長老から少しだがお金をもらているからな」
 そう言うと小袋からお金を取り出した。

「この人の分肩代わりできないかな」

「マサトはお人好しだな。まあ、そう言うところが好きなんだけど」
 そう言うとメルリィは俺に銅貨を5枚渡した。どうやら入領税は銅貨5枚で良いようだ。

 俺は守衛にこの人の分ですと銅貨5枚を渡す。それを見て神官は喜ぶ。

「おお! あなたちはなんと慈悲深いことか」
 神官は俺の足元に膝まつき礼を言うので気にしないでくださいと言い神官を立たせた。

 町の中に入るとミチルが俺に「良いことをしましたね」といって微笑む。
 俺は「俺のお金じゃないから、あまり立派な行為とは言えないけどね」と自虐的に笑う。

「いや、これはマサトの金だぞ」

「ん? 長老からもらったものだろ?」

「里を救ってくれたお礼だ。少ないけどな」
 メルリィはすまなそうに言うがお礼がほしかった訳じゃないから、お金が少しでもあると言うのはありがたいよ。

 メルリィは俺に抱きつき「そう言うとこだぞ」と言って俺にキスをする。
 いや、ちょ、意味わからないからねメルリィさん。

「ちょ! こんな道の往来でハレンチです!」

「ミチルは堅いな。好きなときにキスしても誰も文句など言わないぞ」

「いやいや、ハレンチだろ。入場を許可したくないぞ」
 守衛が俺たちの話に入ってきて不埒ふらちだぞと注意をする。

「すみません」
 俺は謝りメルリィからお金をもらうと守衛に渡した。

「町の中ではあまり不埒なことをするなよ」

「はい、申し訳ないです」
 俺はもう一度守衛に謝るとメルリィは下をペロリとだしウインクをし、ミチルは鼻をピスピスさせてそれ見たことかと勝ち誇る。

 やっぱり常識を知らないと言うのは異世界で生きるのに不安要素の一つだよなと先行きが不安になるな。

 そんなことを考えながら町に入ると先程の神官が俺たちの前に立っていて深々と頭を下げて、少し俺と話をしたいと言うのだった。


――――――――――――――――――――――――

第10回ドリーム小説大賞にエントリーしました。

応援していただけるとやる気MAXでモチベーションが有頂天になります
応援よろしくお願いします(`・ω・´)ゞ

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

処理中です...