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回復と強化。

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「それとですなマサトどの、あなたが着ていた鎧なのじゃがあれはどう見てもミスリルなのじゃが、どこで手にれなすった」
 始めてこの里に来た日は鎧など着ていなかったはずなのじゃがと、長老は更に追求してくる。
 隠していても仕方がないので正直に話すことにした。

「あれは牢屋の柵なんですよ」

「なんと柵を加工したのですか、エルフでも加工するのに準備や時間を要すると言うのに。それを一瞬で? いやはや素晴らしい。しかも大剣はミスリル合金ではないでしょうか?」

「はい鉄とミスリルの合金です」

 長老は唸る。ミスリルは加工が難しいことから合金は作れないとされていたと。

「あの鎧は歩けるようになりましたら檻に戻しておきます」

 残念だけど元々俺のものじゃないしな。だが長老はそれには及ばないという。

「我が里を救っていただいたこととメルリィの婿と言うこともありますので、あの鎧はあなたに進呈させていただきましょう」

 なんかすっかり結婚する話になってるんだけど? まるであの鎧が結納品のように見えてきた。

「結婚するか分かりませんよ?」

 鎧をくれる理由が結婚を前提では受け取れない。なにより帰れる可能性があるかもしれない以上結婚するのは不誠実だ。

「ああ、すみませぬ。娘のように育てていたメルリィに恋が来たのが嬉しくて、はやりました。これは里を救っていただいたお礼としてもらってください」

「結婚しなくてもですか?」

 俺がそう言うとメルリィが悲しそうな顔をして、罪悪感が俺を襲う。

「ええ、かまいません。エルフに二言はありませぬ」

「そうですか、分かりました。では遠慮なくいただきます」
 メルリィに頼みスマホを取ってもらい手に握らせてもらって鎧を整理棚に収納した。
 
「ほう、奇妙な術ですな」

 長老は俺のスマホを見て首をかしげる。異世界にスマホはないから不思議なのだろう。

「これは異世界の石板タブレットです」

「なるほど、異世界のですか、その力は人前では見せない方がいいでしょう」

「なぜです?」

「そのような能力はこの世界に存在しないからです。人間に見つかったら良いように利用されるか、最悪殺されますな」

 元の世界ならいざしらず、こんなファンタジー世界じゃ驚異にしかならないな。

「なるほど、分かりました。それと話は変わるのですが理力と言うのをご存じでしょうか?」

 今回長老と会うのはこれが本題だ。理力についてはメルリィにも聞いたのだが彼女は聞いたことがないと言う。長老ならなにか知っているかもしれないと言うので、今回の会合をセッテイングしてもらったのだ。

「理力……ずいぶん懐かしい名ですな」

「なにかご存じなのですか」

「理力とは魔王の力です」

「魔王の力……」

 長老の話では魔王は理力を使い、その力で世界を征服しようとしたと言う。そしてその理力とは自然を操り具現化する能力だと言われていると言う。

 なるほど何となくは分かった。

 つまり魔力は非現実の力、理力は現実の力と言うことだろう。
 非現実と現実。もしかしたら前回死んだ魔王は俺たちと同じ世界の住人だったのかもしれない。

 それと、体力、知力、魔力、理力、気力などの力は使えば使うほど強化されるのだという。森ドラゴンと戦うとき俺は無意識で気力を振り絞って戦っていた。無意識だからここまで限界を超えて気力を使ってしまったのだ。
 そして限界を超えるまで戦ったおれの気力は限界を超えて上がっていた。

 名前:マサト

・体力2/59
・知力10/10
・魔力0
・理力10/10
・気力1/120

 数値化はこのスマホ特有だが、力の強さを感覚でわかる長老が言うには俺の気力は常人の限界を遥かに上回っているという。

 名前:ミチル

・体力6/6
・知力20/20
・魔力0
・理力10/10
・気力10/10

 体力だけ1上がっていた。走ったからだろうか……。

「雅人くん見せて見せて」
 ミチルがベッドに飛び乗りスマホを覗きこむ。

「これひどくない? 私全然上がってないよ」

「いやいや、ちゃんと体力1上がってるじゃん」

「ブーひどいな」
 そう言うとミチルは俺の腕を掴みほほを膨らます。-

 ん?

 なんかボディタッチが激しいのが気になるな、それに無理に明るく振る舞ってるような気がするし。

「委員長、何かあったのか?」

 いつもの様子と違うミチルに俺は違和感を感じ聞くがミチルは「え、なんで?」と俺の言っている意味がわからないと言うような態度をとる。

「なにか無理してるような感じだぞ」

「……そう言うところだよ」

 ミチルはそう言うとそっぽを向く。

「なにがだ?」

「なんでもない。後、そろそろ委員長やめて欲しいな」

 確かに、いつまでも委員長呼びじゃ他人行儀すぎるな。

くすのきさん」

 その言葉にミチルはむくれる。

「……私も名前で呼んでいるんだからミチルで良いよ」

「分かったそうさせてもらう」

「それでミチル――」
「ひゃい!」

「でなミチル」
「ひゃい!」

「話が進まないよ委員長」
「ミチルです」
「……ひゃい」

「ミチルも知ってる通りこの国は人間が支配している。だから身体が回復したら次の町に行こうと思う」

「そうだね、戦争が起こる前に情報を集めた方がいいかも」
 今人間の世界は獣人との戦争準備に入っている。そしてこの国は獣人の国と距離的にも近い。
 戦争を避けるにはなるべく早く移動しなければならない。

「それと活動資金がない、この里をでる前に鉄のインゴットを作って次の町で売ろうと思う。戦争には鉄が必要だからたぶん高値で買い取ってくれる」

「分かった、ならいっぱい砂鉄用意しておくね」

「頼むよ、たぶんそろそろ身体も動くと思うから。気力も急激に回復してる気がするし、すぐに動けるようになると思う」

 メルリィの話では限界を越えて気力を使ったから気力を回復させる為の魂の力が損傷そんしょうしたんじゃないかと言う。
 まあ、その損傷した魂の力も気力が1ということは回復したようだ。

「それとマサトどの、森ドラゴンの死体ですがミチルどのの技で素材にして保管してますので、身体が動くようになったら持っていってもらって構いませんので」

「もらっても良いんですか?」

「はい、マサトどのが倒したものですから」

 森ドラゴンの素材か武器とかに使えるだろうか。

「ありがとうございます」

 その日は長老に鎧と素材のお礼を言って話を終えた。長老が部屋から出ていくとメルリィが俺の方へ一目散にくる。

「マサト私もつれていってくれるんだよね」

「元の世界に帰るのが目的だけど、それでもいいのか?」

「ああ、当たり前だろ」

 そう言うとメルリィは俺のベッドに乗るとミチルと反対の腕を取り頬をすり寄せる。

「メルリィさんハレンチです!」

「いや、あんたもやってるだろ」

「頬をスリスリはしてません」

「やりたきゃやれば?」

 そう言って挑発するメルリィに頬を膨らませてミチルは怒るのだった。
 なんか今日はよくむくれるなとミチルの顔を見た
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