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第三話 開き直り
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翌日、SP付きで出社したカテリーナは日本人の作法で社長に頭を下げた。
「ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした、家族も親の職業も関係ありません、今まで通りお願いします」
後で他人だったと解っても職場を首になるのだけは避けられるように無難に話をした。
社長を含めた11人の社員は居ない間に誰かから、何かを聞いていたみたいで状況を受け入れていた。
とりあえず、銀行口座が使えなくなってしまったので、今月の給料は現金手渡しで貰えるように社長にお願いすると、あっさりと聞いて貰えた。
12人しかいない零細企業は社長の一存で融通が利くから助かった。
問題は給料日まで18日ある、それまでは棟尾議員から借りたカードで過ごすしかない。
口座引き落としになっている家賃や光熱費はどうなるんだろう?
まだ二ヶ月分ぐらいは落とせるだけの残高はあったはずだけど……
カテリーナは悩みが尽きなかったけど、真面目に目の前の仕事をするしかなかった。
杉原巡査長は椅子を借りて背後でスマホをイジり始めた。
お昼休みになると、いつものように近所のファミレスへランチに出た。
ずっとボッチ飯だったけど、今日は杉原巡査長がついてくる。
杉原巡査長はカテリーナの腕をつかんで引っ張ると、高そうな焼き肉屋を指さした。
「あのお店にしましょう」
カテリーナは必死で叫んだ。
「お金ありません!」
杉原巡査長は友達みたいに親しげに言い切った。
「大丈夫です、大統領の御令嬢とランチなら経費で落とせます」
カテリーナは杉原巡査長が楽しそうにしている理由を悟った。
この人、経費で高い食事が出来るのが楽しみなんだ。
カテリーナは悩んだ。
警察の経費なら、使ったのは杉原巡査長になる。
後で間違って使ったと発覚しても民間人に請求なんて出来ないはず。
カテリーナは開き直って警察の経費で昼から焼き肉を奢って貰った。
食べ放題でもランチセットでもなく、特上ロースを山盛り頼んだら時間が昼休みギリギリになってしまったけど、得をした気分だった。
仕事が終わり帰ろうとしたら、会社の前に高級車が止まって棟尾議員が待ち構えていた。
連れてこられた場所は政治家が主催するパーティみたいだった。
集まってきたマスコミに写真を撮られた。
ウクライナ戦争がどうとか聞いてくるから、適当に無難な一般論で戦争反対と言っておいた。
カテリーナはマスコミから政治家まで、大勢の人間にオモチャにされているウチに状況を理解した。
本物は顔写真一枚公表されていないし、何があっても表に出てこない。
生年月日と名前以外で一致しているところは何も無いけど無いけど、自称したニセモノでもバレようがない。
ロシアでプーチンの娘を名乗ったら消されるけど、日本ならやりたい放題。
何か聞かれてデタラメに答えても誰も検証できない。
他人だって証拠が出てきても、それはプーチン・パパが作ってくれた偽装だと言い張れば良い。
このまま政治難民として日本に帰化してしまえば、公的支援とかいろいろ貰えるかもしれない。
棟尾議員に帰化申請を受理してもらえるようにお願いしたら、あっさりと役所に掛け合ってくれると言って貰えた。
カテリーナは開き直って、会ったことも無いプーチンの娘を名乗ることにした。
そして、早くプーチンが失脚して忘れ去られた老害になる事を祈った。
カテリーナの目の前の悩みは給料日までの生活費をどうするかだけど、都合良く講演会に出演して欲しいとお願いしてきた市民団体の代表者が現れた。
日本で10年暮らしながら身に付けた、空気を読んだ日本語で遠回しに金に困っていると言ったら、講演料を払う言われた。
カテリーナは重要なことをちゃんと伝えた。
「銀行口座は凍結されているから当日に現金手渡しでお願いします」
土曜日になれば現金が手に入る。
カテリーナは借りたカード、杉原巡査長の経費、講演料の三種の神器があれば当面の生活は何とかなりそうだと安心していた。
「ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした、家族も親の職業も関係ありません、今まで通りお願いします」
後で他人だったと解っても職場を首になるのだけは避けられるように無難に話をした。
社長を含めた11人の社員は居ない間に誰かから、何かを聞いていたみたいで状況を受け入れていた。
とりあえず、銀行口座が使えなくなってしまったので、今月の給料は現金手渡しで貰えるように社長にお願いすると、あっさりと聞いて貰えた。
12人しかいない零細企業は社長の一存で融通が利くから助かった。
問題は給料日まで18日ある、それまでは棟尾議員から借りたカードで過ごすしかない。
口座引き落としになっている家賃や光熱費はどうなるんだろう?
まだ二ヶ月分ぐらいは落とせるだけの残高はあったはずだけど……
カテリーナは悩みが尽きなかったけど、真面目に目の前の仕事をするしかなかった。
杉原巡査長は椅子を借りて背後でスマホをイジり始めた。
お昼休みになると、いつものように近所のファミレスへランチに出た。
ずっとボッチ飯だったけど、今日は杉原巡査長がついてくる。
杉原巡査長はカテリーナの腕をつかんで引っ張ると、高そうな焼き肉屋を指さした。
「あのお店にしましょう」
カテリーナは必死で叫んだ。
「お金ありません!」
杉原巡査長は友達みたいに親しげに言い切った。
「大丈夫です、大統領の御令嬢とランチなら経費で落とせます」
カテリーナは杉原巡査長が楽しそうにしている理由を悟った。
この人、経費で高い食事が出来るのが楽しみなんだ。
カテリーナは悩んだ。
警察の経費なら、使ったのは杉原巡査長になる。
後で間違って使ったと発覚しても民間人に請求なんて出来ないはず。
カテリーナは開き直って警察の経費で昼から焼き肉を奢って貰った。
食べ放題でもランチセットでもなく、特上ロースを山盛り頼んだら時間が昼休みギリギリになってしまったけど、得をした気分だった。
仕事が終わり帰ろうとしたら、会社の前に高級車が止まって棟尾議員が待ち構えていた。
連れてこられた場所は政治家が主催するパーティみたいだった。
集まってきたマスコミに写真を撮られた。
ウクライナ戦争がどうとか聞いてくるから、適当に無難な一般論で戦争反対と言っておいた。
カテリーナはマスコミから政治家まで、大勢の人間にオモチャにされているウチに状況を理解した。
本物は顔写真一枚公表されていないし、何があっても表に出てこない。
生年月日と名前以外で一致しているところは何も無いけど無いけど、自称したニセモノでもバレようがない。
ロシアでプーチンの娘を名乗ったら消されるけど、日本ならやりたい放題。
何か聞かれてデタラメに答えても誰も検証できない。
他人だって証拠が出てきても、それはプーチン・パパが作ってくれた偽装だと言い張れば良い。
このまま政治難民として日本に帰化してしまえば、公的支援とかいろいろ貰えるかもしれない。
棟尾議員に帰化申請を受理してもらえるようにお願いしたら、あっさりと役所に掛け合ってくれると言って貰えた。
カテリーナは開き直って、会ったことも無いプーチンの娘を名乗ることにした。
そして、早くプーチンが失脚して忘れ去られた老害になる事を祈った。
カテリーナの目の前の悩みは給料日までの生活費をどうするかだけど、都合良く講演会に出演して欲しいとお願いしてきた市民団体の代表者が現れた。
日本で10年暮らしながら身に付けた、空気を読んだ日本語で遠回しに金に困っていると言ったら、講演料を払う言われた。
カテリーナは重要なことをちゃんと伝えた。
「銀行口座は凍結されているから当日に現金手渡しでお願いします」
土曜日になれば現金が手に入る。
カテリーナは借りたカード、杉原巡査長の経費、講演料の三種の神器があれば当面の生活は何とかなりそうだと安心していた。
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