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第四章

第65話 世界の敵

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 勇者を倒して数か月が過ぎた。季節は秋も深まり、食べ物がおいしい季節だ。

 この数か月でやったことは色々ある。

 まずは戦闘員の人間配下のレベル上げが終わった。予想はしていたが、やはりアンデッドはレベルが上がりにくいので、皆俺よりは弱い。良い職業を持っている高レベル者の配下はヨーマ君より少し強いくらいのステータスになった。一般兵士はヨーマ君より弱い。
 一番大きいのは騎士が全員聖騎士になったことだ。新たに16名の騎士が聖騎士になり、夢の聖騎士隊が完成した。これで配下の聖騎士は19名だ。といってもレベル上げの最後の方で聖騎士になったので、聖騎士のレベルは10ちょっとしかないから、特別強いわけでもないけどな。アンデッドだから光魔法も使えないし。ほぼ気分が良いというだけだ。まあホーリーシールドはアンデッドでも使えるようなので、多少は強いだろう。それにもともと高レベルだった女騎士や騎士団長は普通に強いしな。まあ女騎士は俺にやられる前は聖騎士に任命されていたので聖騎士に戻っただけだが。

 非戦闘員の人間配下はまだレベル上げをしていない。無職や神官の人間配下も後回しだ。たくさんいるBランク魔物の配下を上げた方が強いからな。まあ弱くてもお気に入り配下は先にレベル上げをしたが。グレイとつのっちも高レベルの戦士になった。戦いに出す気はないので、あまり意味はないが不意打ちされても簡単にはやられないという安心感が重要だ。逃げ足も速くなったので浄化も躱せるだろう。グレイやつのっちがやられたらショックで戦えなくなるかもしれないからな。・・・主にユリアさんが。
 メイド剣士と料理人剣士もお気に入りなのでレベル上げをした。半分戦闘員なので護衛としても普通に有能だ。

 ヨーコちゃん用装備は残念ながら新たに購入することはできなかったが、ヨーラムさんのつてで何とか首都の有名職人にサイズ調整を頼むことができた。なので、勇者の仲間だったイケメン聖騎士の魔法の靴と防具をヨーコちゃん用に改造してもらった。イケメンは鋼装備で十分だ。別にいやがらせではない。単に一番サイズが近かっただけだ。これでヨーコちゃんの装備も聖騎士にふさわしい物になったな。高速戦闘ができる強くてかっこかわいい狐娘聖騎士の完成だ。

 疲労軽減や脚力小アップなどの効果のある魔法の靴という名の弱い別物は売っていたが、勇者達や聖女達が装備していた魔法の靴や魔法装備は、有名職人に材料持ち込みでオーダーメイドするのが基本らしく、材料も希少なため、権力者くらいしか入手できないそうだ。完成品の中古とかもまず無いらしい。まあ防具は武器以上にサイズが重要だから仕方がないのだろう。サイズ自動調整の魔法装備も一応存在するが、作られることはほとんど無いそうだ。材料も貴重だし、その分他の付与ができなくなるからだ。自分用の貴重な装備を作る時に、弱くしてまで他人が装備できるようにしたい人はいないからな。俺達が持っている装備でも自動調整がついているのは勇者の聖鎧だけだ。
 それと俺達が使っている魔法の靴は非常に珍しい物なので作れる職人が見つからなかったそうだ。装備していた配下に聞くと、全部アスカさんが作った物だった。他の強い魔法装備もアスカさん製品が多い。俺達の強さはアスカさんに支えられていたようだ。俺を恨んでいなければ仲間にしたかったな。

 とにかくこれで俺達の戦力は整った。強さは勇者とヨゾラさんがツートップという感じだ。勇者の方が強化時のステータスは明らかに高いが、ヨゾラさんは無敵だからな。勇者と戦ってもやられない。基本MPが切れた方が負けという感じだ。ヨゾラさんは勇者より戦闘技術が高いが勇者の動きには追い付けないようだ。勇者は、武術経験はなかったが運動神経が良く、思考加速のスキルがあるので、超高速で動いてもしっかり周囲が見えるし事故らずにちゃんと動ける。その辺も加味するとやはり勇者は格段に強いようだ。
 強さランキング3位から5位は、カイザー、ユリアさん、ヨーコちゃんの3名だ。誰が強いかは状況次第だな。純粋な戦闘力はカイザーが強いが、光魔法に弱いからな。それに人間の方が色々できるので有利な場面は多い。そして俺は6位だ。まあ十分だろう。即死が効く相手にはある意味俺が一番強いしな。

 ヨーコちゃんの装備作成のついでに皆で首都へ行って観光をした。レイライン王国やルディオラ太陽神国の拠点もあるし、日本人のことを知られている可能性もあるので、俺とヨゾラさんは町では基本変装している。幸い今のところ見つからずに観光できている。
 首都には色々な国の拠点があり、色々な国の料理や商品があるので、主に食べ歩きやショッピングを楽しんだ。

 ヨーラムさんのアンデッド事業もさらに拡大していて、首都にも大きな拠点があった。首都でも水中工事を受注しているようだ。すでに貸し出し中のアンデッドは200人を超えていて、半分以上が無職だが、無職以外にも、海賊、船員、商人、大工などを貸し出している。海賊や船員は泳ぎが得意なので水中工事ではかなり役に立つそうだ。
 俺の取り分のアンデッドは、盗賊や海賊で、たまに戦闘職を持っている者がいたが、特に強い配下は手に入っていない。まあレベル上げをすれば強くなるので問題ない。
 首都では、ヨーラムさんはレイライン王国やルディオラ太陽神国から睨まれているらしいが、有力者を味方につけて抑えてもらっているので、今のところ問題ないそうだ。

 主な出来事はこれくらいだな。あとは遊んでいただけだ。夏にはまたプールで遊んだ。今年は勇者の仲間だった白猫獣人ちゃんとメイド剣士二人も水着になっていた。どうやらヨゾラさんは猫獣人がお気に入りらしい。メイドはいつも女性陣の世話をさせているからだろう。女性は他にも聖女や大魔導士や植物魔法使い神官の女エルフがいるが、そちらはお気に召さないらしい。まあ女性はエルフより猫の方が好きそうだしな。聖女と大魔導士も美人だが女性に人気がありそうなタイプでもない。俺としては全員の水着を見たかったが、口を出すと睨まれそうなのでやめておいた。

 植物魔法使い神官の女エルフちゃんにはキノコ栽培をさせている。植物魔法といえば農業だが、森の中では日が当たらず普通の畑は作れないので、キノコ栽培をさせた。この世界ではキノコ栽培の技術は無いらしく、キノコはほぼ天然ものしかないので、あまり売っていない。そのため、たまにしか食べられない。唯一植物魔法使いなら栽培できると聞いて、食べられるキノコを色々栽培させた。キノコは植物ではなく菌類のような気もするが、栽培できるならどっちでも良い。異世界だしな。おかげでキノコがたくさん食べられて皆喜んだ。


 そんな平和な暮らしを満喫していたある日、ヨーラムさんとヨーマ君が訪ねてきた。
 重要な情報を掴んだらしい。

 そしてヨーラムさんは真剣な顔で俺達に言った。


「ギルバーンが世界の敵に認定されました。」


 嵐が来ることを告げる言葉だった。



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