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第四章

第63話 狐娘聖騎士

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 ヨーラムさん達が帰ったあと、俺は相変わらず配下のレベル上げをしていた。

 今までのレベル上げ結果を踏まえて、まだレベル上げをしていない配下から神官の職業を一旦回収し、神官の職業を与えるのは騎士だけにした。神官は防御系と魔法系のステータスが上がるが、物理攻撃と身体能力は上がらないし、光魔法も死にスキルなので、アンデッドに神官は必要ないと判断した。以前はやられないことも重要だったが、配下復活がある今は防御より攻撃の方が重要だ。防御寄りの神官より攻撃が上がる職業に経験値を振り分けた方が良い。騎士は聖騎士になるために必要だから神官のレベルも上げるが、それ以外はいらないだろう。
 その結果神官に任命しているのは20名になった。俺達三人とノワリンと騎士16名だ。そして33枠分神官が余った。これは今後騎士が増えるか、死ににくくしたい仲間ができたら使おう。まあ死ににくくするだけなら戦士を与えるだけで十分な気もするが。

 そして数日後、ヨーラムさん達がやってきた。聖騎士になるかどうか結論が出たようだ。
 さっそく皆で話を聞こう。

 リビングに俺達三人とヨーラムさん親子三人が集まった。
 そしてヨーコちゃんが俺達に向かって言った。決意の表情だ。
「私は聖騎士になってヨゾラさん、ユリアさん、ユージさんと一緒に魔王と戦いたいです。私を聖騎士にしてください。お願いします!」
 ヨーコちゃんが頭を下げた。
「ヨーコちゃん。よく言ってくれたわ。歓迎するわ。一緒に戦いましょう!今日からあなたも魔王と戦う仲間よ!」 ヨゾラさんが高らかに答えた。
 そして二人は見つめ合いながら硬い握手を交わした。
 ・・・何か俺はすっかり脇役だな。聖騎士任命を行う聖女は俺の配下なんだが。まあヨーラムさん親子3人の前で魔王を倒す宣言をしたのはヨゾラさんだしな。ユリアさんの時は俺達三人しかいなかったし。ヨーコちゃんの中では魔王と戦うのはヨゾラさんとその仲間達という認識なんだろう。・・・まあだいたい合ってるからいいか。

 女子がワイワイやっている間に俺はヨーラムさんとヨーマ君の話を聞こう。
「ヨーマ君はやっぱり商人を目指すんだね。商人になるためにがんばっていたから、そうだと思っていたよ。」 俺はヨーマ君に話しかけた。
「誘っていただいたのに申し訳ないっす。」
「いや謝ることじゃないよ。本気で聖騎士になりたい人がやるべきだし、商人になることも大事なことだしね。」
「正直、聖騎士は魅力的っすけど、ヨーコと違って俺は戦いの才能は無いと思うっすから、才能のある人に譲るべきだと思ったっす。ずっと前から商人になるって決めてたのもあるっすから、俺は商人として協力していこうと思うっす。」
 ヨーマ君もかなりちゃんと考えてくれたようだ。枠が余ったという理由で候補にしてしまったのでちょっと申し訳ないな。まあそこは黙っておこう。
「商人の協力者は凄くありがたいから助かるよ。それにしてもヨーラムさんはヨーコちゃんが聖騎士になって魔王と戦うことをよく許可しましたね。」
「実はヨーコは前から冒険者になりたいと言っていまして・・・私は商人になるか商業ギルドに就職するよう言っていたんですが、嫌なようでして。」
「冒険者ですか?!」 マジかよ冒険者は荒くれ者の不良ばかりだぞ。
「はい。どうやら国を出て旅してきた際に雇っていた冒険者の影響らしいのです。その冒険者は良い人だったんですが、ユージさんもご存じかと思いますが、冒険者は死亡率が高いし、評判の悪い人も多いです。戦いの才能があってもヨーコが冒険者になって無事でいられる確率は低いと思うんです。ユージさんの所で過ごせば魔物の恐ろしさを実感して諦めるのではないかと思っていたのですが、まったく諦める様子がなかったので・・・」
 そういえばヨーコちゃんはカイザーやノワリンのことをまったく怖がらなかったな。
「なるほど、それでですか。」
「はい。同じ様に命の危険があるなら、ただの冒険者より魔王と戦う聖騎士の方が、絶対に良い職業なので、認めることにしました。このまま反対し続けてもいずれ勝手に出て行って冒険者になってしまうと思いましたし、それにユージさん達と一緒なら簡単に死ぬことはないと思いましたので。」
 冒険者はすぐ死ぬからな。犯罪者まがいの奴らも多い。青髪とかな。俺もユニークスキルが無ければ何度も死んでいた。ヨーコちゃんはかわいいから冒険者に襲われるだろうしな。何なら魔王と戦う聖騎士より死ぬ確率は高いかもしれない。それなら人から敬遠される冒険者より尊敬される聖騎士の方が良いよな。
「わかりました。絶対大丈夫とは言えませんが、俺もヨーコちゃんが無事でいられるようがんばります。」
「ありがとうございます。しかし私も認めましたし本人の決断ですから、万一のことがあっても文句を言うつもりはございません。そこはヨーコともしっかり話し合いました。いざという時は魔王を倒すことを優先してください。それが聖騎士をいただく義務だと思いますから。」
「・・・はい。」
 なかなか重い決意があるんだな。やはりこの世界の人にとっては魔王と戦う聖騎士は特別なんだろう。

 良い流れなので、このまま皆の前で聖騎士任命の儀式を行うことにした。
 庭で聖女を出してヨーコちゃんに軽く説明をして儀式が始まった。

 ヨーコちゃんが聖女の前に跪く。
 聖女がヨーコちゃんの額に手を当てる。
 聖女が何かを呟くと光の粒が舞い散り、地面に魔法陣が描かれる。
 ヨーコちゃんの体もやさしく光り、聖女からヨーコちゃんに聖騎士と加護が授けられた。

 森の中で行われる荘厳な儀式は神々しく幻想的で美しい。

 ヨーコちゃんが立ち上がりこちらを見て頷いた。聖騎士と加護が得られたのだろう。俺達もヨーコちゃんに頷き返した。

 ヨーラムさんは感動しているようだ。目が潤んでいる。娘が魔王と戦う聖騎士になったんだもんな。ある意味娘の結婚式以上に心に響くのだろう。良い感じの儀式だし。まあ儀式はただの演出なんだけどな。でもこういう決意の儀式の有無で、いざという時の心の強さが変わってくる気もするからな。諦めない心ってやつだ。諦めたら試合終了だからな。効果があるだろう。・・・多分。

 こうして俺達と共に戦う仲間として狐娘聖騎士が誕生した。なんか萌えキャラみたいだが気のせいだろう。


 俺は皆に祝福されるヨーコちゃんを見ながら、改めて魔王と戦う決意をした。

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