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第ニ章
第37話 夏満喫
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狐獣人兄妹のヨーマ君とヨーコちゃんは無事に引っ越しを終え、客用に建てた離れの建物に住み始めた。
母屋の方には部屋の空がないからだ。ギルバーンと侯爵をどかせば住めるが、さすがに建前上家の主になっているため、そういうわけにもいかない。まあ、ヨーラムさん達にはバレている気もするが、気づいていないフリをしてくれている以上、体裁は必要だ。
二人も俺達と一緒じゃ遠慮して寛げないだろうし、ちょうどいいだろう。
ヨーマ君は、思っていたより大人しめの好青年で、勉強をかねて良い関係を築きたいのか、よく俺や執事長に話を聞きにくる。大人しめなのは、まだ様子見だからかもしれない。
しかし、ヨゾラさんとユリアさんにはそれほど積極的に話しかけてはいない。不自然じゃない程度には普通に話すが、積極的に親しくなろうという感じではない。
おそらく二人に手を出すと俺の機嫌を損ねると思っているのだろう。俺が逆の立場でも、ヤバい力を持った死霊術士の連れの女性に、ちょっかいかけたりNTRしたりはしないだろう。機嫌を損ねるというのもあながち間違いでもないので、否定もできないしな。もちろんヨーマ君とどちらかがくっついたとしても、何かしたりはしない。落ち込んだり悔しがったり機嫌が悪くなったりする程度だ。
ヨーマ君も怖がってはいないので、手を出したらゾンビにされるとは思ってないだろうが、商人を志す男が重要な取引先の機嫌を損ねるようなことはしないということだろう。
なので俺も何も言わない。手を出しても良いと伝えたところで、出さないだろうからな。
それに女に飢えていたりもしないだろう。俺らに対しては好青年を演じているし、重要な相手にはきちんとわきまえた対応をするが、どうでもいい相手は平気でもてあそんだりしているはずだ。それが狐目の男というものだ。 ・・・多分偏見だ。
ヨーコちゃんは逆に積極的に女性二人と仲良くしている。俺に対しても仲良くしようとしているが、俺以上に女性二人に対して積極的だ。
見た感じ何も考えていないように見えるが、おそらく俺には気に入られすぎるのも良いか分からないが、女性二人には全力でいってよいという判断だろう。
俺の女になれとか言われるのも、俺の恋人かもしれない二人に嫉妬されるのも危険とか考えているのではないだろうか。
商人になりたいらしいしな、そのくらいのバランス感覚や判断力はあるだろう。何も考えていないように見えるけどな。 ・・・商人になりたいというのは、安全なここに滞在するための方便の可能性もあるか? ・・・分からんな。
それは良いとして最近凄く暑い。夏だからだ。
そしてアンデッド労働者は海で水中作業をしていると聞いて俺は思った。
海で泳げるのではないだろうか? と。
今までは魔物がいるから無理だと思っていたが、弱い無職アンデッドが作業しても問題ないなら遊びで海水浴しても問題ないはずだ。
さっそく会議だ。地元民の狐兄妹も呼ぼう。
俺は執事長に、仲間二人と狐兄妹を呼ぶよう指示した。
すぐに皆が食堂に集まった。まあ部屋にいただけだからな。
「みなさん集まってくれてありがとうございます。」
「何よ。また変な事考えた顔してるわね。」 失礼な。変なこと考えた顔って何だよ。
ユリアさんはいつもの事みたいな反応だ。狐兄妹は不思議そうにしている。
「いえいえ、変な事ではありません。ところで最近暑いですよね。森の中は日が差さないので多少マシですが、町はかなり暑そうですね。」
「もう。それがどうしたのよ。」 あまり焦らすのも良くないな。
「まあ、率直に言うと海で泳げないかなと思いまして。」
「えぇ? 海水浴ってこと? 魔物がいるんじゃないの?」
「いえそうなんですが、弱いアンデッドが海で作業しているそうなので、大丈夫かなと。皆さん何か知りませんか?」
「ふーん。そうなの?」 ヨゾラさんは知らなそうだ。
「私は山育ちなので・・・」 ユリアさんも知らないようだ。
「ヨーマ君とヨーコちゃんは、地元の人だよね。何か知らない?」
「いえ。俺らも他から来たので地元というわけではないっす。」
「そういえば家族で他から来たんだったね。じゃあ知らないか。」 そういえば地元民じゃなかったわ。
「えーと暑いから泳いで涼みたいってことで良いんっすかね?」
「そうそう、町とかで泳げる場所がないかと思って。」
「町には泳ぎの訓練する場所があるっす。男どもがよく訓練したり遊んだりしてるっすね。」
「おお!あるんだ海水浴場!」「へぇ~」 よっしゃ!
「魔物は出ないんだよね?」 一応確認だ。
「はい。町の横の魔物がでない場所にあるっす。でも女性が行く場所じゃないっすね。」
「え?そうなの?」 男しかいないの? 水着美女は?
「ガラの悪いのも多い船乗りの訓練場っすからね。若い女性が行くのは危険っすね。」
「そうなのね。そんな場所には行きたくないわよ。」 ですよね。
「う~んそうか~。ヨーコちゃんは女性でも泳げる場所知らない?」
「うーん。女の子が泳げるような場所があるとは聞いたことないです。すみません。」
「いやいや。謝ることじゃないよ。教えてくれてありがとう。」
「何よ。じゃあ無理なんじゃない? 解散でいい?」 ちょ、待てよ。キムタクになっちまうよ。
「いえ!分かりましたよ!思いつきました!」
「何よもう。面倒なことは嫌よ。」 何だよやる気ないな。もっと熱くなれよ!
「配下がやるので大丈夫です!泳げる所が無いなら作りましょう!」
「何よ。プールでも作るの?」
「そのとおり!プールのある家って憧れていたんですよね。丁度良い機会です。」
「そんな簡単に作れるの? 結構大がかりな工事じゃない? 夏が終わっちゃうんじゃないの?」
「大丈夫です。グランドウルフが土魔法で穴を掘れますし、ウォーターモンキーが水を出せますので、時間はかかりません。そのままだと泥水になりそうなので多少工事はいるかもしれませんが、配下が24時間働けばすぐでしょう。」
「ふーん。何とかなりそうね。」
「プールって何ですか?」 ユリアさんはプールを知らないようだ。
「泳ぐための人工の綺麗な池よ。」
「へ~」「そんなのがすぐ作れるんっすか!?」「凄そうです!」
「それより皆さんは水着を準備してください。特に女性陣!」
「水着なんて売ってるの?ヨーコちゃん見たことある?」
「えーと水着っていうのは泳ぐための服のことですか?」
「そうよ。」
「見たことないです。」「女性用は無いっすね。」 やはりないか。
「そうですか。ではそれも作れば問題ありません。ヨゾラさん皆さんの水着のデザインをお願いします!」 ヨゾラさんのデザインなら日本の水着になるだろう。全身タイツとかは嫌だ。
「いいけど。誰が作るの? 執事長に作らせるのはちょっと嫌なんだけど。」 何?わがままだな。爺さんなんだから別に良いだろ。でも大丈夫だ。
「大丈夫です。冒険者のエルフの女性が執事長より裁縫がうまいそうです。」 エルフ女性の嗜みだそうだ。
ちなみにエルフ男性の嗜みは弓作りだ。エルフといえば弓だ。でも神官エルフはエルフなのに弓が下手だったから神官になったそうだ。それでも弓は作れるらしい。
「なら大丈夫ね。あとは丁度いい生地があるかだけど。」
「詳しくないですが、普通の布じゃダメなのは分かります。シルクみたいなのならいけますかね?」
「そうね。綿布とシルクを重ねればいけるんじゃないかしら。」
「シルクならうちの店で扱ってるっすよ。東からの輸入品なので高いっすけど。お安くしときますよ。」 おお商人っぽい。ヨーラムさんの店はもとは輸入品の店だったな。
「じゃあ、色とか女性陣で相談して必要量用意を頼む。料金は執事長にもらってくれ。」
「了解っす。まいど!」「お買い上げありがとうございます!」
商人兄妹も嬉しそうだ。商売の実績があるとやっぱり違うのだろうか? まあいいか。
「ではミッション開始!」
「はぁ、わかったわ。」「は~い」「ういっす。」「らじゃー!」
その後、適当な位置にグランドウルフに穴を掘らせた。
そして大工と相談してコンクリートを買ってきて舗装した。
普通は乾くのに時間がかかるが、ウォーターモンキーが水魔法のドライを使えたので、すぐ乾いた。ひび割れができたが大工がパテうめっぽいことをして綺麗になった。
ウォーターモンキーに水を入れさせて完成だ。
木の根っこを避けて作ったので四角ではなく、お金持ちの家にありそうな、勾玉みたいな形のプールができた。逆に良い感じだ。
水着作りも終わったようだ。なんだかんだ楽しそうに作っていた。今回は初めてということで、凝ったつくりにすると時間がかかるし失敗しそうなので、全員同じ形で色や柄が違うだけのシンプルな縛るタイプのビキニだ。腰の両サイドと背中と首の後ろを縛るやつだ。
ビキニタイプが一番作るのが簡単だそうだ。言われてみればそんな気がするな。布面積が少なくてありがたいことだ。
黒猫獣人ちゃんと人妻エルフさんの分も作ったらしい。人数が多い方が恥ずかしくないからだそうだ。ユリアさんやヨーコちゃんはかなり恥ずかしがったみたいだ。まあ慣れないと水着は恥ずかしいよな。誰も着ていない世界ならなおさらだ。でも恥ずかしがっている女性ってグッとくるよね。
男の水着はその辺で売っていた厚手の短パンだ。どうでもいいな。
さっそくみんなで泳ぐぞ!
「さあ皆さん準備できましたね!行きましょう!」
「オッケー」「はぃ・・」「うっす!」「おー!」
多少コンクリうちっぱ感はあるが、いい感じのプールだ。
木と布でビーチチェアーっぽいものも作ってもらった。パラソルは日が差してないので不要だ。
軽いバーベキューとジュースも用意させた。バッチリだ。
さっそく女性陣を紹介しよう。
「思ったよりも大分良いプールができたじゃない。森の中ってのも意外に雰囲気があっていいわね。」
ヨゾラさんは薄いガラの入った白のビキニだ。スタイルが良いので非常にセクシーだ。最高である。君の水着に乾杯! ・・・闇魔法使いなのに黒じゃないんだな。
「気持ちいいですけど、やっぱりちょっと恥ずかしいですね・・・」
ユリアさんの水着は紫だ。髪と瞳の色にあわせたのだろう。俺好みの控えめなスタイルも素晴らしい。褐色の肌も良い。そしてほほを染めて恥ずかしがっているのもポイント高い。
「これがプール!泳ぐのって気持ちいいー!」
狐っ娘のヨーコちゃんは、黄色っぽい色のビキニを着ている。明るく元気なヨーコちゃんにぴったりだ。最初は恥ずかしがっていたが、今はプールに夢中だ。水着と狐尻尾の組み合わせが予想以上に素晴らしい。
黒猫獣人ちゃんは黒の水着だ。イメージどおりだ。かっこいい。
人妻エルフさんは緑の水着だ。スレンダーな美女の水着はやはりいいね。
分をわきまえた狐男のヨーマ君は控えめだ。プールに入ってみたり、女性陣の水着やビーチチェアを見たりしている。エロというよりは別のことを考えているような目だ。多分プールや水着が商売にならないか考えているのだろう。やはり商人を志しているだけある。ヨーコちゃんは何も考えていない可能性が高いな。
プールを商売にすることは可能だと思うが、初期投資や水の交換や掃除など運営費もかかるし、水着などが色々浸透して受け入れられるまで赤字だろう。流行ったらライバルにマネされるから初期費用が回収できるかは商人としての腕や運次第なところがあると思う。結構ハードモードだろう。
まあアンデッド事業は俺がいなくなったら終わるから、代々続けられる商売じゃない。別の事業も考える必要があるのだろう。がんばれ。
さて俺はひと泳ぎして軽く飲み食いしながら皆の水着を見よう。こんな風にがんばって機会を作らないと異世界では水着の女性なんてなかなか見ることはできないからな。
ちなみに俺は配下の女性にエロいことは一切していない。エロいことをしてしまったらすぐヨゾラさん達にバレて嫌われるだろう。隠しきれる気がしない。
今日は許されているが、普段女性配下を見ているだけでヨゾラさんに睨まれるからな。護衛でそばにいる黒猫獣人ちゃんに何となく目がいくだけで睨まれる。絶対に変なことをするなという圧力を感じる。何もさせてくれないのに酷いよ!
まあアンデッドは鑑賞するにはいいが、エロいことをするにはそれほど向いていない。触ってもアンデッドは何も感じないからだ。まったく感じないわけではなく、どこを触られても服の上から腕を触られたくらいの感触しかないらしい。腹を剣で刺されても腹の中に同じくらいの感触がするだけらしい。当然エロいことをしても無反応だろう。演技はできるかもしれないが、演技がうまい人でないと微妙だろう。それでも魅力はあるといえばあるが、生きている女性にはだいぶ劣る。体温もないしな。
とにかく仲間と別れたくないので、アンデッドにエロいことはしないのだ。仲間に捨てられたらするかもしれないが。
今日は睨まれないみたいなので、ゆっくり楽しもう。
「ちょっと!いやらしい目で見てないで一緒に泳ぐわよ!」
「な、ななななにを言っているんですか!いやらしいなんて失敬な!」
「いいから来なさい!ユーマ君も来なさい!」
「はいっす!」
「うふふ」「わーい」
その後みんなでめちゃくちゃ泳いだ。
この夏の思い出はいつまでも心に残り続けるだろう。
俺は平和な生活を満喫していた。
しかし同時に平和は長くは続かないことを予感していた。
母屋の方には部屋の空がないからだ。ギルバーンと侯爵をどかせば住めるが、さすがに建前上家の主になっているため、そういうわけにもいかない。まあ、ヨーラムさん達にはバレている気もするが、気づいていないフリをしてくれている以上、体裁は必要だ。
二人も俺達と一緒じゃ遠慮して寛げないだろうし、ちょうどいいだろう。
ヨーマ君は、思っていたより大人しめの好青年で、勉強をかねて良い関係を築きたいのか、よく俺や執事長に話を聞きにくる。大人しめなのは、まだ様子見だからかもしれない。
しかし、ヨゾラさんとユリアさんにはそれほど積極的に話しかけてはいない。不自然じゃない程度には普通に話すが、積極的に親しくなろうという感じではない。
おそらく二人に手を出すと俺の機嫌を損ねると思っているのだろう。俺が逆の立場でも、ヤバい力を持った死霊術士の連れの女性に、ちょっかいかけたりNTRしたりはしないだろう。機嫌を損ねるというのもあながち間違いでもないので、否定もできないしな。もちろんヨーマ君とどちらかがくっついたとしても、何かしたりはしない。落ち込んだり悔しがったり機嫌が悪くなったりする程度だ。
ヨーマ君も怖がってはいないので、手を出したらゾンビにされるとは思ってないだろうが、商人を志す男が重要な取引先の機嫌を損ねるようなことはしないということだろう。
なので俺も何も言わない。手を出しても良いと伝えたところで、出さないだろうからな。
それに女に飢えていたりもしないだろう。俺らに対しては好青年を演じているし、重要な相手にはきちんとわきまえた対応をするが、どうでもいい相手は平気でもてあそんだりしているはずだ。それが狐目の男というものだ。 ・・・多分偏見だ。
ヨーコちゃんは逆に積極的に女性二人と仲良くしている。俺に対しても仲良くしようとしているが、俺以上に女性二人に対して積極的だ。
見た感じ何も考えていないように見えるが、おそらく俺には気に入られすぎるのも良いか分からないが、女性二人には全力でいってよいという判断だろう。
俺の女になれとか言われるのも、俺の恋人かもしれない二人に嫉妬されるのも危険とか考えているのではないだろうか。
商人になりたいらしいしな、そのくらいのバランス感覚や判断力はあるだろう。何も考えていないように見えるけどな。 ・・・商人になりたいというのは、安全なここに滞在するための方便の可能性もあるか? ・・・分からんな。
それは良いとして最近凄く暑い。夏だからだ。
そしてアンデッド労働者は海で水中作業をしていると聞いて俺は思った。
海で泳げるのではないだろうか? と。
今までは魔物がいるから無理だと思っていたが、弱い無職アンデッドが作業しても問題ないなら遊びで海水浴しても問題ないはずだ。
さっそく会議だ。地元民の狐兄妹も呼ぼう。
俺は執事長に、仲間二人と狐兄妹を呼ぶよう指示した。
すぐに皆が食堂に集まった。まあ部屋にいただけだからな。
「みなさん集まってくれてありがとうございます。」
「何よ。また変な事考えた顔してるわね。」 失礼な。変なこと考えた顔って何だよ。
ユリアさんはいつもの事みたいな反応だ。狐兄妹は不思議そうにしている。
「いえいえ、変な事ではありません。ところで最近暑いですよね。森の中は日が差さないので多少マシですが、町はかなり暑そうですね。」
「もう。それがどうしたのよ。」 あまり焦らすのも良くないな。
「まあ、率直に言うと海で泳げないかなと思いまして。」
「えぇ? 海水浴ってこと? 魔物がいるんじゃないの?」
「いえそうなんですが、弱いアンデッドが海で作業しているそうなので、大丈夫かなと。皆さん何か知りませんか?」
「ふーん。そうなの?」 ヨゾラさんは知らなそうだ。
「私は山育ちなので・・・」 ユリアさんも知らないようだ。
「ヨーマ君とヨーコちゃんは、地元の人だよね。何か知らない?」
「いえ。俺らも他から来たので地元というわけではないっす。」
「そういえば家族で他から来たんだったね。じゃあ知らないか。」 そういえば地元民じゃなかったわ。
「えーと暑いから泳いで涼みたいってことで良いんっすかね?」
「そうそう、町とかで泳げる場所がないかと思って。」
「町には泳ぎの訓練する場所があるっす。男どもがよく訓練したり遊んだりしてるっすね。」
「おお!あるんだ海水浴場!」「へぇ~」 よっしゃ!
「魔物は出ないんだよね?」 一応確認だ。
「はい。町の横の魔物がでない場所にあるっす。でも女性が行く場所じゃないっすね。」
「え?そうなの?」 男しかいないの? 水着美女は?
「ガラの悪いのも多い船乗りの訓練場っすからね。若い女性が行くのは危険っすね。」
「そうなのね。そんな場所には行きたくないわよ。」 ですよね。
「う~んそうか~。ヨーコちゃんは女性でも泳げる場所知らない?」
「うーん。女の子が泳げるような場所があるとは聞いたことないです。すみません。」
「いやいや。謝ることじゃないよ。教えてくれてありがとう。」
「何よ。じゃあ無理なんじゃない? 解散でいい?」 ちょ、待てよ。キムタクになっちまうよ。
「いえ!分かりましたよ!思いつきました!」
「何よもう。面倒なことは嫌よ。」 何だよやる気ないな。もっと熱くなれよ!
「配下がやるので大丈夫です!泳げる所が無いなら作りましょう!」
「何よ。プールでも作るの?」
「そのとおり!プールのある家って憧れていたんですよね。丁度良い機会です。」
「そんな簡単に作れるの? 結構大がかりな工事じゃない? 夏が終わっちゃうんじゃないの?」
「大丈夫です。グランドウルフが土魔法で穴を掘れますし、ウォーターモンキーが水を出せますので、時間はかかりません。そのままだと泥水になりそうなので多少工事はいるかもしれませんが、配下が24時間働けばすぐでしょう。」
「ふーん。何とかなりそうね。」
「プールって何ですか?」 ユリアさんはプールを知らないようだ。
「泳ぐための人工の綺麗な池よ。」
「へ~」「そんなのがすぐ作れるんっすか!?」「凄そうです!」
「それより皆さんは水着を準備してください。特に女性陣!」
「水着なんて売ってるの?ヨーコちゃん見たことある?」
「えーと水着っていうのは泳ぐための服のことですか?」
「そうよ。」
「見たことないです。」「女性用は無いっすね。」 やはりないか。
「そうですか。ではそれも作れば問題ありません。ヨゾラさん皆さんの水着のデザインをお願いします!」 ヨゾラさんのデザインなら日本の水着になるだろう。全身タイツとかは嫌だ。
「いいけど。誰が作るの? 執事長に作らせるのはちょっと嫌なんだけど。」 何?わがままだな。爺さんなんだから別に良いだろ。でも大丈夫だ。
「大丈夫です。冒険者のエルフの女性が執事長より裁縫がうまいそうです。」 エルフ女性の嗜みだそうだ。
ちなみにエルフ男性の嗜みは弓作りだ。エルフといえば弓だ。でも神官エルフはエルフなのに弓が下手だったから神官になったそうだ。それでも弓は作れるらしい。
「なら大丈夫ね。あとは丁度いい生地があるかだけど。」
「詳しくないですが、普通の布じゃダメなのは分かります。シルクみたいなのならいけますかね?」
「そうね。綿布とシルクを重ねればいけるんじゃないかしら。」
「シルクならうちの店で扱ってるっすよ。東からの輸入品なので高いっすけど。お安くしときますよ。」 おお商人っぽい。ヨーラムさんの店はもとは輸入品の店だったな。
「じゃあ、色とか女性陣で相談して必要量用意を頼む。料金は執事長にもらってくれ。」
「了解っす。まいど!」「お買い上げありがとうございます!」
商人兄妹も嬉しそうだ。商売の実績があるとやっぱり違うのだろうか? まあいいか。
「ではミッション開始!」
「はぁ、わかったわ。」「は~い」「ういっす。」「らじゃー!」
その後、適当な位置にグランドウルフに穴を掘らせた。
そして大工と相談してコンクリートを買ってきて舗装した。
普通は乾くのに時間がかかるが、ウォーターモンキーが水魔法のドライを使えたので、すぐ乾いた。ひび割れができたが大工がパテうめっぽいことをして綺麗になった。
ウォーターモンキーに水を入れさせて完成だ。
木の根っこを避けて作ったので四角ではなく、お金持ちの家にありそうな、勾玉みたいな形のプールができた。逆に良い感じだ。
水着作りも終わったようだ。なんだかんだ楽しそうに作っていた。今回は初めてということで、凝ったつくりにすると時間がかかるし失敗しそうなので、全員同じ形で色や柄が違うだけのシンプルな縛るタイプのビキニだ。腰の両サイドと背中と首の後ろを縛るやつだ。
ビキニタイプが一番作るのが簡単だそうだ。言われてみればそんな気がするな。布面積が少なくてありがたいことだ。
黒猫獣人ちゃんと人妻エルフさんの分も作ったらしい。人数が多い方が恥ずかしくないからだそうだ。ユリアさんやヨーコちゃんはかなり恥ずかしがったみたいだ。まあ慣れないと水着は恥ずかしいよな。誰も着ていない世界ならなおさらだ。でも恥ずかしがっている女性ってグッとくるよね。
男の水着はその辺で売っていた厚手の短パンだ。どうでもいいな。
さっそくみんなで泳ぐぞ!
「さあ皆さん準備できましたね!行きましょう!」
「オッケー」「はぃ・・」「うっす!」「おー!」
多少コンクリうちっぱ感はあるが、いい感じのプールだ。
木と布でビーチチェアーっぽいものも作ってもらった。パラソルは日が差してないので不要だ。
軽いバーベキューとジュースも用意させた。バッチリだ。
さっそく女性陣を紹介しよう。
「思ったよりも大分良いプールができたじゃない。森の中ってのも意外に雰囲気があっていいわね。」
ヨゾラさんは薄いガラの入った白のビキニだ。スタイルが良いので非常にセクシーだ。最高である。君の水着に乾杯! ・・・闇魔法使いなのに黒じゃないんだな。
「気持ちいいですけど、やっぱりちょっと恥ずかしいですね・・・」
ユリアさんの水着は紫だ。髪と瞳の色にあわせたのだろう。俺好みの控えめなスタイルも素晴らしい。褐色の肌も良い。そしてほほを染めて恥ずかしがっているのもポイント高い。
「これがプール!泳ぐのって気持ちいいー!」
狐っ娘のヨーコちゃんは、黄色っぽい色のビキニを着ている。明るく元気なヨーコちゃんにぴったりだ。最初は恥ずかしがっていたが、今はプールに夢中だ。水着と狐尻尾の組み合わせが予想以上に素晴らしい。
黒猫獣人ちゃんは黒の水着だ。イメージどおりだ。かっこいい。
人妻エルフさんは緑の水着だ。スレンダーな美女の水着はやはりいいね。
分をわきまえた狐男のヨーマ君は控えめだ。プールに入ってみたり、女性陣の水着やビーチチェアを見たりしている。エロというよりは別のことを考えているような目だ。多分プールや水着が商売にならないか考えているのだろう。やはり商人を志しているだけある。ヨーコちゃんは何も考えていない可能性が高いな。
プールを商売にすることは可能だと思うが、初期投資や水の交換や掃除など運営費もかかるし、水着などが色々浸透して受け入れられるまで赤字だろう。流行ったらライバルにマネされるから初期費用が回収できるかは商人としての腕や運次第なところがあると思う。結構ハードモードだろう。
まあアンデッド事業は俺がいなくなったら終わるから、代々続けられる商売じゃない。別の事業も考える必要があるのだろう。がんばれ。
さて俺はひと泳ぎして軽く飲み食いしながら皆の水着を見よう。こんな風にがんばって機会を作らないと異世界では水着の女性なんてなかなか見ることはできないからな。
ちなみに俺は配下の女性にエロいことは一切していない。エロいことをしてしまったらすぐヨゾラさん達にバレて嫌われるだろう。隠しきれる気がしない。
今日は許されているが、普段女性配下を見ているだけでヨゾラさんに睨まれるからな。護衛でそばにいる黒猫獣人ちゃんに何となく目がいくだけで睨まれる。絶対に変なことをするなという圧力を感じる。何もさせてくれないのに酷いよ!
まあアンデッドは鑑賞するにはいいが、エロいことをするにはそれほど向いていない。触ってもアンデッドは何も感じないからだ。まったく感じないわけではなく、どこを触られても服の上から腕を触られたくらいの感触しかないらしい。腹を剣で刺されても腹の中に同じくらいの感触がするだけらしい。当然エロいことをしても無反応だろう。演技はできるかもしれないが、演技がうまい人でないと微妙だろう。それでも魅力はあるといえばあるが、生きている女性にはだいぶ劣る。体温もないしな。
とにかく仲間と別れたくないので、アンデッドにエロいことはしないのだ。仲間に捨てられたらするかもしれないが。
今日は睨まれないみたいなので、ゆっくり楽しもう。
「ちょっと!いやらしい目で見てないで一緒に泳ぐわよ!」
「な、ななななにを言っているんですか!いやらしいなんて失敬な!」
「いいから来なさい!ユーマ君も来なさい!」
「はいっす!」
「うふふ」「わーい」
その後みんなでめちゃくちゃ泳いだ。
この夏の思い出はいつまでも心に残り続けるだろう。
俺は平和な生活を満喫していた。
しかし同時に平和は長くは続かないことを予感していた。
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