死霊術士が暴れたり建国したりするお話 第1巻

白斎

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外伝 錬金術師が悪い死霊術士と戦うお話

外伝1 錬金術師異世界に立つ

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 私の名前は鈴木明日香、25歳、大手薬局チェーンに勤める薬剤師だ。

 大手と言えば羨ましがられるけれど、実際の店舗勤務の仕事はかなり大変だ。
 私も最初は良い企業に就職できたと思ったけれど、営業時間が長いからシフト勤務だし、薬剤師の仕事だけでなくコンビニ店員のような仕事もしなければならない。
 営業時間終了後もしばらくは仕事があるため夜遅くなることも多くて、不規則な生活になりがちで、美容と健康に悪い仕事だ。最近肌荒れが気になってきた。

 その日も遅番の仕事を終え、家に帰る途中の駅の階段でそれは起きた。
 突然階段の上から男性が落ちてきた。
 疲れてぼーっとしていたので、反応できずおもいっきり頭にぶつかった。
 とっさに階段の手すりに手を伸ばそうとするが、手が空を切り意識が遠のいた。


 どうやら私は死んだようだ。


 その後、謎の空間で銀の球体から色々言われたあと、錬金術師だと言われ異世界に送られた。



 異世界で目覚めたあと、突然落ちてきた男性を思い出し怒りを覚えたが、仕方がないとあきらめ、異世界で生きていこうと決意した。
 
 周囲を見ると私は草原の小高い丘の上にいて、少し離れた位置に石壁に囲まれた町が見えた。町の周りには、畑や牧場があり、のんびりと平和そうな雰囲気の場所だ。

「ここが異世界・・・・」

 魔王がどうとか言っていたわりに平和そうな場所だわ。危険がなさそうで良かった。とりあえず町に行ってみよう。

 私は町に向かって歩き出した。

「そういえば錬金術師って言われたっけ・・・」

 一応その手の小説も読んだことがあったので適当に色々試すとステータス画面のようなものが目の前に表示された。

ーーーーー
名前 アスカ
種族 人間Lv1
年齢 18
職業 錬金術師Lv1
HP 21/21
MP 20/20
身体能力 10
物理攻撃力 10
物理防御力 10
魔法攻撃力 11
魔法防御力 10
ユニークスキル
 詳細鑑定
スキル
 錬金
ーーーーーーー

 ・・・なんかでた。ゲームっぽい。
 年齢が18になってる! もしかして若返ったの?! もしそうならちょっと嬉しい。

 しばらくニヤニヤしていたが、それどころではないと気づき他の項目も見てみるが、正直よく分からない。

 とりあえずスキルだけでも使い方が分かればいいんだけど・・・

 詳細を知りたいと念じると追加情報が表示された。

ーーーーー
詳細鑑定 消費MP1
 対象の様々な情報を知ることができる。

錬金 消費MP変動
 材料、製作器具、製作知識を使用して様々な物を作ることができる。
ーーーーー

 これどうすれば使えるの?
 ちょっと錬金は今は無理そうだから、詳細鑑定を試してみよう。

 試しにその辺の草に詳細鑑定と念じてみると、草の情報が表示された。色々書いているがただの雑草のようだ。

 ・・・この能力でどうすればいいのよ。

 持ち物は革袋にお金が入っていたが価値がわからない。

 とりあえず生きていくために仕事を探さないといけないわね。
 鑑定のお仕事とかあるといいけど・・・

 しばらく歩くと町の入口が見えてきた。出入りは自由のようで、兵士らしき人が立っていた。

 たぶん警察みたいな人よね。ちょっと怖いけど私が働けそうなお店の場所を聞いてみよう。

 声をかけると笑顔で対応してくれた。鑑定屋というのは無いらしい。錬金術といえば回復ポーションかなと思い、ポーションを売っているお店をきくと、お店の場所を教えてくれた。

 教えてもらったお店についたので、恐る恐るお店に入ってみると、入ってすぐ横に武装したおじさんが座っていて驚いた。全身革の防具をつけていて、剣を腰に差している。
 驚いて固まっていると、おじさんが「いらっしゃい」と笑顔で言ってきたので、おもわず愛想笑いをしながらペコペコしてしまった。日本人特有のあれだ。恥ずかしい。

 店内をみると、色々なものが置いてあり、ポーションらしき物も置いてあったので、試しに詳細鑑定を使ってみた。すると効果や使用方法だけでなく、材料、製作器具、製作方法も表示された。

 これはもしかして、詳細鑑定で作り方を調べて錬金で作れということかしらね。今のところ材料も製作器具も用意できないけれど。

 ちょっと希望が見えてきたので、色々な物を鑑定しているとMPが無くなってしまい使えなくなった。ステータスを見てみると人間と錬金術師のレベルが上がっていた。

 ちょっと調子に乗って使いすぎてしまったわ。でもレベルが上がったなら無駄じゃないし、最大MPが増えたから明日はもっと使えるようになるから良いかな。
 でもレベル上げに魔物を倒したりする必要がなくて良かった。私はなぎなたをやっているから、普通の女子よりは戦えると思うけど、魔物と戦いたいとは思わないからね。
 とりあえず材料と設備があればポーションを作れそうだから、仕事をさがそう。このお店で雇ってもらえないかしら。

 店内を見ると、太ったやさしそうなおじさんがレジカウンターで何か書いている。他には太ったやさしそうなおばさんが商品棚の整理をしていた。

 ここなら私が働いていた薬局と似たような場所だし、お店の人もやさしそうだし良いかもしれない。
 ちょっとレジカウンターのおじさんに聞いてみよう。錬金術師の職業を持っているって言えば雇ってくれるかも。

「すみません。」
「なんだいお嬢さん。」
 お嬢さんって言われるとちょっと照れるわね。
「私、錬金術師の職業を持っているんですが、ここで働かせてもらえないでしょうか。」 
「え!?」 おじさんが凄く驚いている。
 何か変な事を言ってしまったのだろうか。

 ドキドキしながらおじさんを見ていると。

「錬金術師で間違いないかい?」 真剣な顔できいてきた。
「は、はい。」
「仕事を探しているんだね?」
「そうです。」 不安になってきた。
「・・・わかった。奥で話を聞くよ。」 少し考えたあと、おじさんはニコりとやさしそうな笑顔を浮かべた。

「おーいアンナ!ちょっとこのお嬢さんと奥で話してくるから店番をたのむ!」
「はいよ~」

 ちょっと平和な感じのやりとりに安心し、おじさんに案内され奥の部屋に入った。
 入った部屋は簡素な応接室といった場所だった。商談とかに使うのだろう。

「さっきは怖がらせてすまなかったね。珍しい職業だったから少し驚いてしまったんだ。昔はこの町にも錬金術師がいたんだが今はいないからね。」
「そうなんですね。」 結構大きな町なのに錬金術師はいないのね。ポーションを作っているのは錬金術師じゃないのかな。
「自己紹介がまだだったね。私はこの店の店主のゼペックだ。よろしくね。」
「アスカです。よろしくお願いします。」
「さっそく仕事について確認だけどポーションは作れるのかい?」
「作ったことは無いですが、作り方は知っているので、材料と製作器具があれば多分錬金で作れると思います。」 ちょっと不安だわ。
「そうなんだね。じゃあうちにも製作器具はあるから後で試してもらうとして、うちの店で働きたいってことでいいかな? 薬師工房も紹介できるけど、どちらが良いかい? うちで働く場合は店の仕事もしてもらうことになるけど。」
 ポーションは薬師が作っているのね。
「できればこのお店がいいです。無理にとはいいませんが。」 このお店の雰囲気は気に入ったからね。それに薬師工房で一人だけ錬金術師だと浮きそうでちょっと心配。
「じゃあうちでポーション作成と店の仕事をやってもらおう。それと君はこの町の出身かい? 家はどの辺にあるんだい?」 そうだった私住所不定だわ。
「・・・今日この町についたばかりで、住む場所は決まっていません。」 正直に言おう。
「そうなのかい? じゃあとりあえず今日は家に泊まっていくといい。」 やさしい笑顔で言ってくれた。
「ありがとうございます。お願いします。」 良かった。これで安心ね。
「あまり詮索する気はないが、念のため聞くけど訳ありかい?」
「・・・う、すみません。」 なんて説明したらいいのよ・・・
「いや、珍しい職業を授かった人にはよくあるからね。詳しいことは言わなくていいが、安全のために誰かに追われていたりするかだけ教えてくれないかな。」 な、なるほど。
「追われていたりはしません。」 特に追われてはいない。この世界にきたばかりだしね。
「わかった。信じよう。これからよろしくね。」 ゼペックさんはやさしくほほ笑んだ。

 その後、アンナさんと用心棒のゼルさんを紹介されて、泊まる部屋の準備や、仕事の説明を聞いたりした。
 次の日には、無事ポーションを作ることに成功し、順調に異世界生活をスタートさせることができた。
 念のためユニークスキルは内緒にすることにした。錬金術師よりさらに珍しそうだからね。調べてみて大丈夫そうなら話そうと思う。

 それからしばらくは働きながら、すこしずつ異世界のことを勉強してすごした。
 ここはレイライン王国のメルベル領にある領都メルベルという町で、メルベル侯爵が治めているそうだ。うん覚えやすい。
 この世界は日本と比べれば不便だけど、食事もおいしいし楽しく生きていくことはできそうでかなり安心した。
 それに私はすごく良いお店に就職できたと思う。他のお店ものぞいてみたけど、すごく大変そうだ。

 それとスキルも詳細鑑定で詳しい情報を見ることができた。
 錬金は、作る手順が複雑な物ほど消費MPが増える。それと大きい物や重い物は消費MPがすごく増えることが分かった。小さくて軽い物を作るのが得意なスキルのようだ。
 詳細鑑定は、普通の鑑定と違い見ただけで鑑定できて射程は10メートル、分かる情報が多いこと、経験値が凄く多いこと、種族レベルも上がることなどが特徴だった。
 普通の鑑定は、詠唱して触らないと鑑定できないし、経験値も職業にしか入らないうえに少ないらしい。


 そんな風にゼペックさんのお店で働きながら平和に異世界を楽しんでいた。
 

 少しずつ運命の足音が近づいていた。
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