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第一章

第3話 死体収納と配下作成とレベルアップ

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 あたりを警戒し町へ向かいながら先ほどのオオカミについて考えていた。

 明らかに襲い掛かってきていた状況でオオカミは突然消えたよな。
 オオカミが消えたときにやったことといえばスキルの配下作成と死体収納を連呼していたくらいしかない。
 特に助けてくれた人なども周囲にはいなかった。
 配下もいないので配下作成は成功していないだろう。
 もしかして・・・・

 そう思いながら死体収納に何が入っているか知りたいと念じてみる。

ーーーーー
収納リスト
 灰色のオオカミの死体
ーーーーー

 ・・・あった!
 理由は不明だが、オオカミは死体収納で収納されたらしい。
 死体と表示されているからには死んでいるのだろう。

 ・・・なぜ死んだのだろうか?

 ・・・飛び掛かってくる瞬間に心臓麻痺で死んだとか?・・・

 そんなことがありえるか? ゼロではないかもしれないが低すぎる可能性だ。
 とすると、あくまで希望的観測だが死体収納には即死効果もあるとか?・・・

 まだそっちの方が可能性がありそうだな。一応ユニークスキルだし。弱い相手にしか効かないのかもしれないが、魔王を倒させようとする相手に与えるスキルと考えればそのくらいの力があっても不思議ではないか?・・・検証する必要があるな。

 案外弱そうな職業になった人にも強力なユニークスキルが与えられているのかもしれないな。強力なユニークスキルを持った山賊が魔王を倒したりするのかもしれん。・・・ないか?

 しかし、よく考えるとそれでも酷い状況だ。碌に説明もせずにこんな危険な場所に送り込んだ担当者には怒りが湧いてくる。最初俺はこの草原で寝ていた。強力なユニークスキルがあっても寝ていたり使い方を知らなかったりすれば死んでしまうのではないだろうか。
 勇者が寝ている間にオオカミに食われて死んでいる可能性も普通にありそうだ。

 担当者の野郎は、上から命じられて形だけ命令遂行して真剣に取り組む気がないのではないだろうか。真剣に成功させようと考えていたらこんないい加減なことはしないだろう。
 魔王討伐に失敗しても「命令どおりに実行しましたが失敗しました」と報告すれば問題ないとか考えていそうだ。
 機会があれば絶対に神やら上司やらにチクってやる。・・・・まあ機会は無いかもしれないが。

 ・・・そろそろ不毛な愚痴を考えるのは止めて、今後のために有意義なことを考えよう。
 そうだ!せっかくなので、安全のためにも配下作成を試してみよう!

 周囲に何もいないことを確認して、目の前に死体収納からオオカミの死体を出したいと念じてみる。

 パッと瞬時にオオカミの死体が現れた。特に魔法陣が出たり、なぞの渦から出てきたりはしないらしい。
 出し入れできる距離や位置などもあとで検証する必要があるな。

 横たわるオオカミの死体はどこにも傷はなく触るとまだ暖かい。死にたてホヤホヤ?な感じだ。もしかしたら時間停止機能とかもあるかもしれない。まあまだあまり時間がたってないからかもしれないが。

 ではいくぞ!
「配下作成!」

 暗く光る魔法陣が死体の下に現れ黒い光が死体を包む。



「おお!」雰囲気のある演出に息をのんで見守る。

 しばらくすると魔法陣と光が消え、オオカミがゆっくりと起き上がった!
 こちらをじっと見ていて、ちょっと怖いが、何となく自分の配下であることがわかる。

 恐る恐る話しかけてみる。
「俺の言っていることが分かるか?」

 首をかしげている。言葉ははっきり分からないのかも。しかし命令できないときついぞ。
 試しに色々命令してみよう。

「伏せ!」「ウォン!」おお伏せた!
「お手!」「ウォン!」お手もできる!
「ついてこい!」「ウォン!」ついてくる!

 どうやら躾けた犬くらいの理解力はあるらしい。生前の知能を引き継ぐのだろうか? これも要検証だな。
 なでてみたが、毛は硬くてゴワゴワだ。モフモフという感じではない。シャンプーで洗えばモフモフになるかな? でもシャンプーなんてあるか?
 まあモフモフ配下はいずれもっと良いやつを見つけたらにしよう。

 しばらく見ていると日光を避けようとしていて、顔が少し火傷のようになっているのに気付いた。さっきまでは無かったが、もしかして直射日光に弱いのか? アンデッドだからな・・・ありうる。
 今は日が差したり曇ったりしているからまだマシだが、晴れた日はきついかもしれないな。
 幸いそこまで大ダメージではなさそうだから今日のところは我慢してもらうか。命がかかっているから町のそばまでは護衛してもらおう。

「護衛を頼むぞ!」
「ウォン!」
 うむ、いい感じだ。

 そういえば最大MPが下がるんだったな。
 周囲警戒は配下にまかせて、ステータスを確認するか。

ーーーーー
名前 ユージ
種族 人間Lv2
年齢 18
職業 死霊術士Lv2
HP 22/36
MP 10/42
身体能力 11
物理攻撃力 11
物理防御力 11
魔法攻撃力 14
魔法防御力 14
ユニークスキル
 死体収納
スキル
 配下作成
配下
 上級アンデッド 1
ーーーーー

 レベルが上がっている!!
 オオカミは収納しただけだが、死んでいるので倒した扱いで経験値が入ったのだろう。

 しかしステータスも上がったから、最大MPがいくつ減ったのかわからないな。
 だがMPが20以上も上がっているところを見るとアンデッド軍団の夢が広がるな!

 あとオオカミは上級アンデッドなのか。普通のオオカミっぽいから特に上級感は無いが下級はもっとザコなのだろうか・・・ゾンビとかスケルトンだろうか。
 ゾンビは臭そうだから嫌だな。そういう点では、配下にしたオオカミのアンデッドは、獣臭いが腐臭はしない。そのあたりが上級要素なのかもな・・・微妙だ。

 あと、ゲームのようにレベルアップで回復したりはしないようだ。まあ現実的に考えると回復する方が不自然だしな。 仕方ない。
 しかしHPが減っていても特に弱っている感じはしないな。どういう仕様なのだろうか?
 まあレベルアップしたら最大HPが上がって傷だらけになったりするのも変だしな。どこかで調べられると良いんだが。
 常識だったりするようなことを人に聞くと怪しまれそうだからな。図書館とかあると良いな。

 そんなことを考えながら歩いていると、特に魔物などに出会うこともなく町が近づいてきた。

 入口はどこにあるのか見回すと少し先に道が見えた。おそらくそちらに入口もあるだろう。

 日光に弱いオオカミは、アンデッドだとバレるかもしれないから収納しておくことにした。
 手ぶらなのも怪しいしペットとか獣魔とか言えばごまかせるかもしれないから迷ったが、テイマーみたいな能力が一般的かも分からないしな。

 きっと手ぶらでも移動できる能力を持っているんだと思ってくれるだろう。そんな能力や職業もあるだろうから何とかなるだろう。・・・・なるといいな。

 とりあえず職業がバレないことを優先して多少怪しまれるのは仕方ないと思っておこう。

 ともかく安全地帯であろう町について良かった。ホッと胸をなでおろす。

 空を見上げるとゆっくりと雲が流れている。異世界の空も地球と変わらないようだ。
 涼しくてすごしやすい良い天気だな・・・俺は小さくため息をついた。
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