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第8話 鈴木の追放を阻止しろ3
しおりを挟む俺と鈴木は皆の待つ談話室に入った。藤宮と稲田は談話室の外で待たせることにした。変に仲間を引き連れていくと対決する空気になってしまいそうだからな。
俺と鈴木が談話室に入ると皆がこちらを睨んだ。
「待たせて悪い。俺もちょっと熱が入ってしまってな。」
「チッ!やっときやがったか。」「光輝!遅いわよ!」「もう!」
皆待ちくたびれていたようだ。
「まあ。落ち着けよ。でどうすんだ?」 剛士が助け船を出してくれた。剛士は庇わないと言っていたが、鈴木は庇わなくても、俺のことは庇ってくれると思っていた。
「ああ。今から鈴木に謝らせるけど、その前に俺の話を聞いてくれ。とりあえず鈴木はそこに座れ。」
鈴木を俺の横に座らせて話始めた。
「何だよ。」「・・・」
皆不満げだが、一応話は聞いてくれるようだ。ここは単刀直入に行こう。
「あゆみを襲ったゾンビは、鈴木と仲が良かった田中さんだったみたいだ。鈴木は田中さんがゾンビになったショックで動けなかったそうだ。」
「え・・・」「マジか・・・」「そうか・・・」
よし悪くない反応だ。
「鈴木。」 鈴木に謝るよう合図を送った。
鈴木は立ち上がって頭を下げて謝った。
「木下さんを助けられなくて、ごめんなさい。・・・うう・・」
見ると鈴木はマジ泣きしている。これは田中さんのことが本気で好きだったのかも・・・
凄く罪悪感を感じる。俺は鈴木に嫌われたかもしれないが、仕方がない。多少俺が嫌われてもクラスをまとめた方が良い。
「鈴木・・・」「鈴木君・・・」
皆鈴木に同情的だ。瑞希はまだ鈴木を気遣う余裕はないだろうが大丈夫だろう。
「ハイド。これで良いよな?」 一応ハイドに聞いておく。ハイドが認めれば大丈夫だ。
「ああ・・・。」 ハイドは話を聞いて軽くショックを受けているようだ。こういう話には敏感なヤツだからな。
「今日はこの話はここまでにしよう。皆もいいよな。」
「うん・・」「そうだな。」
「そうね。でも光輝君。事前に話を聞いていたなら鈴木君に謝らせたのはやりすぎじゃないかしら。鈴木君が可哀そうよ。」 愛理が言った。
まあ好きな女子が死んでショックを受けているヤツを皆の前で無理やり謝らせたわけだからな。普通に考えたら酷い。
「う・・・そうかもな。・・・俺もあゆみを亡くして冷静じゃなかったか・・・鈴木。すまん。悪かった。」 俺は鈴木に頭を下げて謝った。
「いや、いいよ。光輝君が話を聞いてくれて助かったし・・・。」 鈴木が言った。
「そうだよ光輝~。すずっちが可哀そうだよ~」 ミレイが便乗して言った。
いやミレイは責めてた側だろうが。
「いやお前が言うなよ。」 剛士がつっこんだ。
「え~何で~」
少し場が和んで鈴木は帰すことになり、藤宮や稲田と合流して引き上げていった。
良し!ほぼ計画通りだ。うまくいった。
愛理が鈴木を庇って俺を責める発言をしたが、これもほぼ予想どおりだ。まあ絶対言うと思っていたわけではなく、言ってくれたら良いなと思っていただけだが。
鈴木の気持ちを考えたら確かに愛理の言う通りだが、俺の目的は鈴木の追放を阻止し、かつ鈴木の立場を向上させて鈴木とも協力して生きていくことだ。引いてはオタク達とも協力して生きていくことだ。
今回謝らせたことで、鈴木に同情が集まったし、俺に強制されたとはいえ、しっかり謝ったことで印象も良くなったはずだ。瑞希やハイドも鈴木が謝り俺も謝ったことで鈴木に謝りやすくなっただろう。そして、愛理が鈴木を庇い俺が謝ったことで鈴木の立場はかなり良くなった。もう皆今回の件で鈴木を責めることはできないだろう。
まあ多少俺の株が下がってしまったが、俺が追放されることは無いし、俺はいくらでも挽回できる。大丈夫だ。・・・多分。
その後瑞希を皆で少し慰めたりして、俺達も解散になった。
俺はさっきハイドにきつめに言ってしまったので、帰り際に声をかけてフォローしておくことにした。
「ハイド。瑞希たちのこと今後も気にかけておいてくれないか? 俺よりハイドの方が良いみたいだしな。」
「ん? ああ。もちろんだ。まかせておけよ。」
「ありがとう。いつも頼って悪いな。」
「バカ。気にすんなよ。」 ハイドは笑顔を見せてくれた。
良し。とりあえずハイドは大丈夫そうだな。
どこかで読んだ軽い頼み事をすると自然にお礼が言えるというテクだ。結構使えるな。
「ほら行ってきなさいよ。」
「いけいけ~」
「もう!分かってるわよ!」
愛理、ミレイ、亜美の3人が、俺の方を向いて何か話している
「ちょっと光輝!」 亜美が近寄ってきて俺に話しかけてきた。
「なんだ? どうかしたか?」 何だろう。
「あんた今日はちょっとおかしいわよ? 最初から鈴木を庇うつもりだったんじゃないの?」
「うっ。」 気づいていたのか。
まあ剛士も気づいたしな。ハイドはヒートアップしていたから気づかなかったみたいだが、仲が良い相手には気づかれるか。俺の演技力なんて素人レベルだしな。
「やっぱり。それなら私達にも相談しなさいよね。で、何で庇おうと思ったの?」
オタクは隠すが、この際だいたいの目的は伝えておくか。こいつらならある程度協力してくれる気がするしな。
「実はな、できればクラスメイト達は皆一緒に行動して離脱者は出したくないんだ。」
「どうして?」
「これは半分俺のカンなんだが、戦えない職業のヤツらにも重要な意味がある気がする。俺達異世界人は多分特別だ。別行動すると後悔する気がするんだ。それに命の危険はまだまだある気がするしな。協力者は多い方が良い。」
「ふーん。まあ光輝のカンなら当たりそうね。私も何となく分かる気がするし。でもどうして私達にも言わなかったの?」
「いやハイドがヒートアップしていたし、亜美とミレイもオタクとか嫌いだろ?」
「もう!確かにオタクは別に好きじゃないけど、追い出したいほどじゃないし、必要なら協力するわよ!今までだって一緒に行動してたでしょ!」 亜美は可愛くプリプリ怒っている。
確かに安本の家に一緒にいた時もオタクと揉めたりはしていなかったな。まあ仲良くもしていなかったが。
「悪かったよ。今後は相談する。さっそくだけどハイドとミレイに言っても大丈夫だと思うか? 鈴木と揉めたばかりだからもうちょっと様子を見ようかと思っていたんだけど。」
「え? うーんミレイは大丈夫よ。ハイドは念のため明日様子を見て考えた方が良いかもね。」 おおミレイも大丈夫そうなのか。
「そうか。じゃあミレイと愛理には亜美からうまく言っておいてくれないか?」
「わかったわ。今後も何かあったら私には言ってよね。」
「おう。亜美が動いてくれればめちゃ助かるよ。」 女子の協力者は必要だと思っていた。
「もう。しょうがないから私が助けてあげる。」 亜美は顔を少し赤くしながら可愛く言った。
何かこいつデレてないか? 俺をフったのに。もしかして吊り橋効果で俺に惚れたんじゃないか? 結構命の危機があったしな。
そう思ったら亜美がもっと可愛く見えてきた。吊り橋効果は俺にも効いているのかもしれない。ここは押すべきでは?
「亜美。ありがとう。うれしいよ。」 俺は亜美を見つめながら引き寄せた。
「えっ。あっ。光輝。」 亜美は赤くなって戸惑いながらも抵抗しない。
俺は少しずつ亜美に顔を近づける。
亜美は迷いを見せながらも抵抗しない。
亜美が少し横に目を逸らした瞬間ハッとした顔になった。
ドン! 亜美は俺をつきとばした。
「ちょ、ちょっと。何すんのよ。ちょ、調子に乗らないでよね。そんなつもりじゃないんだからね!」 亜美は赤い顔でツンデレみたいなことを言っている。
横を見ると離れた位置でミレイと愛理がこちらを見ていた。そういや忘れていた。
ニヤニヤしながらこちらを見るミレイ。
顔を赤くしながらチラチラこちらを見る愛理。
さらに離れた位置ではメイドさんも見ていた。
恥ずかしくなったので、俺は何も言わずに立ち去った。
俺は悶々としながら部屋に戻った。
今の俺には案内のメイドさんも誘ってきているように見えてしまった。
ラノベではハニートラップを仕掛けてくる展開もあるから気を付けよう。
窓から外を見ると、大小二つの月が輝いていて、ここが異世界であることを実感させた。
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