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第4話 勇者のステータス
しおりを挟む俺は鈴木を責めている瑞希に近づいて声をかけた。
「瑞希!大丈夫か?」
「光輝君!こいつがあゆみを見捨てたのよ!」 瑞希は俺に向かって泣きながら訴えた。ハイドも鈴木を睨んでいる。
「ああ。だいたい聞こえていたけど大事な話だな詳しく聞きたい。だけどここだとゆっくり話ができないな。話をするのは落ち着く場所に移動してからにしよう。」
俺はとりあえず、刺激しないよう同意しつつ問題を先送りにすることにした。
ちょっと今すぐ解決は厳しい。じっくり考えたい。
「でも!」 瑞希はまだ納得していないようだ。
「安心してくれ絶対俺達がちゃんと話を聞く。そうだよなハイド。」 同じくヒートアップしていたハイドに話を振る。ハイドなら怒っていても周りが見えているはずだ。
「・・・確かにここじゃあ大事な話はできないな。クソ! 瑞希、俺達が落とし前をちゃんとつけてやるから行こう。」
「うう。分かった・・・」 瑞希がうなずいた。
よし。さすが空気が読める男のハイドだな。うまくのってくれた。
後は鈴木にも声をかけておこう。
「鈴木も俺達の話が終わるまで大人しくしてろよ!」 瑞希とハイドの手前強めに言った。
「うう・・」 鈴木はうまく返事できないようだ。
そして鈴木に近づき肩に手を置いて小声で言った。
「鈴木の話も聞くから安心してくれ、あの状況じゃ動けない人の方が多いだろ。何とかする。」
「わ、わかった。」 鈴木は答えた。少し安心したようだ。
「行こうか。」 俺達は案内に従い歩き出した。
「鈴木に何言ったんだ?」 剛士が聞いてきた。俺が鈴木に声をかけたのを見ていたようだ。
「ああ。逃げないように釘を刺しただけだよ。」 適当にごまかす。
「へぇ。俺は庇わねえからな。」 剛士は何かを察したようだ。
「分かった。」
剛士は何かと積極的に動いてくれるが、自分が納得していないことには協力しないタイプだ。今回は剛士に頼るのは無理だな。仕方ない。
鈴木はオタク仲間と合流して何か話している。頼むからラノベみたいに脱走しないでくれよ。俺は実在するらしい名も知らぬ女神に祈った。
案内に従い歩きながらふと思いついた。そういえばステータスとか無いのだろうか?
異世界といえばステータスだ。オタクの常識だ。
とりあえず試しにステータスと念じてみた。
ーーーーー
名前 神代 光輝
種族 異世界人
職業 勇者
レベル 1
HP 1000/1000
MP 1000/1000
身体能力 200
魔力 200
スキル
異世界適応
聖剣召喚
状態
女神の加護
ゾンビウイルス感染
ーーーーー
・・・マジか。勇者になっている。確かに今のメンバーなら俺が勇者ポジションだ。普通なら喜ぶところだが、オタクの俺は素直に喜べない。最近の小説では勇者はやられ役のことが多いからだ。そうでなくてもこき使われたり損な役になることが多い。
実は全員勇者だったりするといいんだが、何となく違う気がするな・・・ 勇者だったら竹下とかもあっさりやられたりしなかっただろう。
それ以外にも色々あるが、とりあえずゾンビウイルスに感染している。
いや、近づくだけで感染するのは分かっていたことだ。
でも女神の加護とかあるなら、ゾンビウイルスくらい防いでくれても良いじゃないか。
女神の力がゾンビに負けちゃダメだろ・・・
周囲を見るとオタク連中も宙を見ながらコソコソやっている。ステータスを見ているのだろう。やはりゾンビウイルスに感染しているせいか微妙な表情のヤツが多い。
俺達は礼拝堂のような場所に案内された。ここは大聖堂の中だそうだ。勇者召喚は大聖堂の奥で行われたらしい。
待っていると、数人の神官が大きな水晶玉のような物がついた装置を出してきた。定番の鑑定の魔道具だろうか?
「では、ここに一人ずつ順番に手を置いてください。」 司祭っぽい爺さんが言った。
流れ的に最初は俺からのようだ。
ステータスが見られてしまって大丈夫だろうか。特にゾンビウイルスが不安だ。しかしここで拒否しても強制的に見られるだろうし、悪い方向に進む予感しかしない。
仕方ない。逆に魔法で治してもらえるかもしれないしな。
変なことが起きませんように。
祈りながら水晶玉に手を置いた。
水晶玉が少し光った。
司祭は何か見えているようだが、俺には何も見えないようだ。
「おお!勇者だ!この方の職業は勇者です!」 目の前の司祭っぽい爺さんが叫んだ。
「なんと!」「やりましたな!召喚は成功ですぞ!」「女神よ!感謝します!」
異世界人たちが湧いている。
「おお!」「さすが光輝だ。」「勇者って凄いの?」「まあ光輝君は勇者っぽいよな。」
クラスメイト達もザワついている。
とりあえず職業は分かるようだ。ゾンビウイルスについては何も言わないな。そこまでは分からない装置なんだろうか? それならゾンビウイルスには気づかれないかもな。・・・いやあの場所には大勢いたから、ステータスが見られるならすぐ気づくだろう。隔離されたりしないかちょっと不安だ。姫も多分感染しているし、勇者は重要な存在みたいだから問答無用で殺されたりはしないだろう。治療できたりすれば良いんだけどな。
「光輝!良かったじゃねえか!よく分からねえけど勇者は凄えんだろ?」 剛士が声をかけてきた。
「いや分からないよ。あの反応からすると何か特別なんだろうけど。」 とりあえず分からないフリをしておく。というか本当に分からないしな。一応予想はできるがあっているかは怪しい。
「次は俺が行くぜ。」 剛士が前に進みでた。
この際だ。全員の職業をしっかり把握しておこう。
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