総ての海を征するもの……の正妻?

白いモフモフ

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鬱憤

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 ……むしゃくしゃする。機嫌が悪いと自分でもわかっている。周りに当たりはしないが人が離れていく。それもイライラする。

……これは、アレだ……。あの男ならば良いだろう。
そう思って、艦へ戻りあの男を探したが居ない。こういう時に居ない!なぜ居ない!

 もっとイライラしながら艦を降りた。コウとマオは距離をとりながらも一応付いてきている。

「そんな所にいて護衛の役割が果たせるとでも思っているのか?!」

 思ったより棘のある声になった。“しまった、大人気なかった、マオは子供だ。”と思ったがブツブツ文句を言うくらいなので平気らしい。

「なんであんなにイラついてる?」
「艦長が居なかったからだろう…」
「艦長が居ないくらいであんなにイライラする?」
「取引自体はうまくいったハズだ。」

 ああ、そうだ。ここでの取引は上出来!何もかも思い通りに進んだ。あのギラ付いた目はなんとしてもここに商品を卸させようと躍起だった。どんなに荷が多くても捌ける、そう確信していた。
 だからこそだ!あの生意気な小僧の思う儘じゃないか!!大の大人が手の上で踊らされている!

 腹の底が熱い。熱を発散させたい。こんな時こそあの男に八つ当たりしたいのに居ない!
 なぜ居ない!

 酒場付近に来ると大勢の男の笑い声が聞こえる。その中にあの男の声が混じっていた。
 ……ほぉ…私を放って置いて自分は酒場でお楽しみ中か。……しかも、こういった酒場は1階は酒場で2階は連れ込み宿だ。酒場の酌女で気に入った女を選んで交渉し楽しむ事もできる。場合によっては店付きの小姓の時もある。

「あ、マズイ。」

 後ろでしたマオの声に振り返り、マズイの理由を聞き出した。いわく、この酒場はこの港に来たときはよく行く酒場で気に入りの女が居たという。
 さり気なく自分が先に入ることで私がココに来たと知らせるつもりのコウを手で制する。
 2人を待たせて1人で店に入るとすぐに目当ての人物がいる場所はわかった。

「お楽しみのようだな?」

 酌女だけではなくこの辺をシマとする娼婦も混じっているらしく、胸元を大きく開け娼婦を意味する小さな鈴をつけた女達が群がっている。
 その中の1人がやけに親しそうに髭を触って体を密着させている処へ現れた。

 女達はいきなり現れた男に“邪魔をするな”と視線を向けたが、向けた先に居たのがこれまたαとわかる男だった為態度を一変させてデジレにもシナをつくった。

「あら、提督の処の人ね~。どうしちゃったのぉ?不機嫌そう~、ねぇ、私でお口直ししなぁーい?」

 腕を絡ませてきた黄色のドレスの娼婦を振り払い女達の真ん中で面白げに笑う男を睨んだ。

「随分と楽しそうだな、セオ?」

 一瞬にして全員の動きが止まった。周りにいた料理を運んでいた人の動きすら止まった。そしてその場からソッと離れる者、料理を運ぶのを止めて戻る者がいた。
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