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交易所の反応
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今朝早くからある一行の噂が伝わってきていた。
『オブティシアン……海軍提督の入港。』『今回の交易から加わった1人がなにやら重要人物らしい。』『海軍提督の右腕が常にガードするα。』
『αの貴族が何かを探している。』
デジレの思惑通りのものから見当違いのものまで様々だったが注目させる事には成功している。
交易所の中に入って来たデジレを見た者達は聞いた噂と実際の人物を見て比べて『重要人物』というキーワードに揃って納得していた。
“雰囲気がある”とでもいうのだろうか、デジレの周りはこの辺りの者達とは違う威圧感があった。
交易所の中を見渡し、この交易所は初めて来たという事が丸わかりなのに誰も軽口を叩いてからかおうとはしない。
普段この辺りにいる者達は新参者をみると「お使いでちゅか~エラいでちゅね~。」とか「この交易所を使うなんてまだ早いんじゃねぇのぉー!」とか散々に言うので喧嘩が耐えない。
そんな事を見越していたデジレは護衛にこの2人を連れて目立っていたのだが、実際は連れ歩いたデジレに注目が集まっていた。
……デジレ様は自分がすれ違うだけで人を魅了する人間だと気付いていない?
マオは今日のデジレの行動でそう判断した。
そんなマオを置いてデジレは奥へ進み、今日の取引所内容を確認する。
3日前の取引所内容まで記されたボードを見ながらこの港の価値を見極めて行く。いくら大きな貿易港であっても有用でない所はこれから先切り捨てるつもりなので見る目も厳しくなる。
「マオ、商談するので人を呼んでくれ。」
少しは価値を見いだしたらしい。
この交易所には2つ商品を売る方法がある。1つは交易所を通して物を売り買いする。メリットは大量に物がさばけることと、何より自分が売りたい物を買いたいひとを見つける手間暇が省ける事だ。この場合デメリットは、予想相場の値段にしかならず儲けが少ない。
もう1つは、自分の商品を買いたい者を見つけ交易所を証人として個人単位で売り買いをする。この場合のメリットは需要が在るため高値で売買できる。だが少数取引だったり、そもそも信用がないと取引に応じないためよほどの商人でないと行わない。
デジレも今回は交易所を通して売るようだ。
「お待たせ致しました。私、この交易所のオペレーターのウーノと申します。」
やってきた男はベテランと直ぐにわかる手早さでデジレ達の身分確認を行った。商談スペースは奥まっているが周りの商人も興味深々で聞き耳を立てているのがわかるのでちょっと伺いやすい場所に案内される。
「……注目の的か。」
デジレのため息交じりの一言で周りは凍りついたかのようにシンッとなった。
「致し方ないか……。」
この一言でオペレーターのウーノの顔色も元に戻り周りも先程の雰囲気に戻った。
そしてデジレは少し考え直した。
……威厳は出したかったが、些かやりすぎたか?
アイツの威光は結構なものだ。
『オブティシアン……海軍提督の入港。』『今回の交易から加わった1人がなにやら重要人物らしい。』『海軍提督の右腕が常にガードするα。』
『αの貴族が何かを探している。』
デジレの思惑通りのものから見当違いのものまで様々だったが注目させる事には成功している。
交易所の中に入って来たデジレを見た者達は聞いた噂と実際の人物を見て比べて『重要人物』というキーワードに揃って納得していた。
“雰囲気がある”とでもいうのだろうか、デジレの周りはこの辺りの者達とは違う威圧感があった。
交易所の中を見渡し、この交易所は初めて来たという事が丸わかりなのに誰も軽口を叩いてからかおうとはしない。
普段この辺りにいる者達は新参者をみると「お使いでちゅか~エラいでちゅね~。」とか「この交易所を使うなんてまだ早いんじゃねぇのぉー!」とか散々に言うので喧嘩が耐えない。
そんな事を見越していたデジレは護衛にこの2人を連れて目立っていたのだが、実際は連れ歩いたデジレに注目が集まっていた。
……デジレ様は自分がすれ違うだけで人を魅了する人間だと気付いていない?
マオは今日のデジレの行動でそう判断した。
そんなマオを置いてデジレは奥へ進み、今日の取引所内容を確認する。
3日前の取引所内容まで記されたボードを見ながらこの港の価値を見極めて行く。いくら大きな貿易港であっても有用でない所はこれから先切り捨てるつもりなので見る目も厳しくなる。
「マオ、商談するので人を呼んでくれ。」
少しは価値を見いだしたらしい。
この交易所には2つ商品を売る方法がある。1つは交易所を通して物を売り買いする。メリットは大量に物がさばけることと、何より自分が売りたい物を買いたいひとを見つける手間暇が省ける事だ。この場合デメリットは、予想相場の値段にしかならず儲けが少ない。
もう1つは、自分の商品を買いたい者を見つけ交易所を証人として個人単位で売り買いをする。この場合のメリットは需要が在るため高値で売買できる。だが少数取引だったり、そもそも信用がないと取引に応じないためよほどの商人でないと行わない。
デジレも今回は交易所を通して売るようだ。
「お待たせ致しました。私、この交易所のオペレーターのウーノと申します。」
やってきた男はベテランと直ぐにわかる手早さでデジレ達の身分確認を行った。商談スペースは奥まっているが周りの商人も興味深々で聞き耳を立てているのがわかるのでちょっと伺いやすい場所に案内される。
「……注目の的か。」
デジレのため息交じりの一言で周りは凍りついたかのようにシンッとなった。
「致し方ないか……。」
この一言でオペレーターのウーノの顔色も元に戻り周りも先程の雰囲気に戻った。
そしてデジレは少し考え直した。
……威厳は出したかったが、些かやりすぎたか?
アイツの威光は結構なものだ。
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