総ての海を征するもの……の正妻?

白いモフモフ

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交易所

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 強引に気持ちを切り換えて艦を降りる。今回から任務で艦の外に出る時には2人の護衛がつけられた。侮って護衛がつけられた訳ではないと知っている。自分はこの港では貴族的すぎるのだから仕方無い。

 護衛は“海軍提督の右腕”として知られる大男、“隻眼のコウ”とまだ2つ名は無いが海賊歴13年(本人談)の13才のβマオだ。
 コウは2つ名が隻眼となってるが本当に隻眼な訳ではない。常に右目の上に髪が下がってるので片方の目が無いのではと思われてつけられた名だった。
 マオの方は生まれたてでこの艦の止まる桟橋付近に捨てられていたらしい。船は猫を中で飼ってることが多くそのつもりで鳴き声を辿ったら赤ん坊を見つけてしまったらしい。鳴き声が猫に聞こえてので名前が猫を意味するマオになったとか……安易だ。

 しかし、この2人が意外といい仕事をする。特段に何かしているわけではないが自分と共に歩くというのでちょっと着替えてもらっただけだ。
 コウは海軍提督の右腕らしくセオの雰囲気に似せた服装とこの艦の者と証明する指輪。
 マオには貴族の従僕に相応しくシワや汚れのない真っ白なシャツにタイ、ベストと揃いの紺色のズボンとやはり指輪を身につけてもらった。

 ……この2人、というか全ての者に言える事だがこの艦の人間という事を証明する指輪を普段は邪魔だからという理由でつけていない。大事にしてない訳では無いのだが何処にあるかも忘れてる状態で探させるのに苦労した。
 因みに自分は肌身離さず身につけている。

 苦労して自分の供だと一目で解る恰好をさせると自分のする事に口出ししないと約束させ連れてきた。
 交易所に入る前に露天を一回りしてこの港の状態を見る。女物のベールや香水、可愛らしい絵の小物や箱を売る店も多い。これらは商売女の気を引く為の品なのでこの港は女を抱き、遊ぶ余裕とそれなりの平穏が続いてるとわかる。

 人々の身なりは様々だ。貴族的な者やお付きや護衛とわかるもの、明らかに使用人や廃止された筈の奴隷とわかるものもいる。貴族的な者にはなんとか商品を売り込もうとする売り子が纏つきカモろうとしている。
 それらを一瞥する自分はこの中でも異種な存在感を演出して注目を集めておく。
 この行動が後日どうでるかはわからないが、海軍提督の艦に新たな人間加わったと認識させられるだろう。そしてそれは“右腕”を引き連れて歩くくらいは重要視される人間であると知らしめておく。

 ……一通り歩き、視線を寄越される様になると、後ろのマオに「交易所へ」と言い、目の前の交易所のドアを開けさせる。艦から降りる際懇々と言い聞かせた従僕の仕事だ。付け焼き刃だが暫くはなんとかなるだろう。
 尤も、デジレはこのマオが気に入ったので本気で自分の従僕として育てる気でいる。デジレの希望に否を出す人はいない。コウは気づいていながらもマオの精神衛生的に黙っていた。
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