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交渉役、デジレ
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そういえば聞いたことがなかった。意外な事にこの艦には交渉役が乗っていない。……乗っていなくても別に問題がないというだけだったが。
“フールフーガの鬼神” “フールフーガの魔王”物騒な名をほしいままにしている者が率いる艦に逆らう者が居るはずがなかったからだ。
今、目の前に広がる港の名前は〈ディスタンクシオン〉。西の国の大型交易港なのだが、ここが私にとって初仕事の場所となる。引き連れて来た貿易船の数はキャラック3隻…初仕事の数ではない。
それにしてもディスタンクシオンとは皮肉な名だ。なんせ目の前の港は大型貿易港とは別にもう1つの顔がある。人市場が至る所は開かれ、それにより決して上品とはいえないような者も多い。
この艦が横付けされようとしている桟橋にも酔っ払った人間が転がっている……もう年老いてる人だから大丈夫だろうが若い人なら市場で本人も知らない内に売られてるなんて事にもなりかねない。
まぁ初仕事の場としては気負い無くできそうなので良いが手応えはなさそうだ。
手に持つ今日取り引きしたい物のリストをもう一度確かめる。織物の数が多いがこの港の金持ちは今、織物を欲しがっているので容易く裁けるだろう。
これはとある街の特産品の1つで全て一点物となっている。……この特産品はある領主がΩの特性を生かしΩならではの仕事が出来ないかと試行錯誤した結果生み出した物。草原で羊を飼い、毛を刈って洗い、糸をよって染料で染め、色々な織物を作る。これを全てΩのみを雇い仕事とした為この領地では自分の意に沿わず身を売るΩがいなくなった。
大変な革命的な事であったが、これを考え出し実行し特産品にした領主もまたΩだ。
そしてこの特産品を見るデジレの目が少し険しくなった。……Ωと侮り事実から目をそらした私達をあざ笑うかのようにあの領主は次々と改革を行っている。その手腕は例えαと言われても納得のできるものでありαならではと誇れるくらいだ。
目の前の港、自分の状況、新しい特産品……ため息が出そうだが船楼から出てきた自分の夫を見ると
まぁ、こんな人生もありだと思えてしまった。
「どうだ?」と短いながらも初仕事を気遣う夫を……セオを見上げて苦笑する。
「私を誰だと思っている?この港は商売がしやすいと知っているぞ。何せ買う気がある者だけが集まる港だ。まぁそれでもキャラック3隻分とは思わなかったがな。」
護衛艦として乗って来た艦の隣の桟橋につけられたキャラックを見て改めてその積載量を思い浮かべる。絨毯やタペストリーに加工された物は重量があるため数でいえば少な目だが1つ1つの値段も張る。
あの領主の元に今回のこの交易でいくらの儲けが転がり込むのか……いや、儲けはΩの寄宿学校へとまわされる。
本来なら大臣であった自分達が保護に動かなければならなかったのにそれを怠り放置した。それを愁いた能力のある者が手を差し伸べただけなのだが、その能力のある者がΩだった事に心の整理がつかない。
“フールフーガの鬼神” “フールフーガの魔王”物騒な名をほしいままにしている者が率いる艦に逆らう者が居るはずがなかったからだ。
今、目の前に広がる港の名前は〈ディスタンクシオン〉。西の国の大型交易港なのだが、ここが私にとって初仕事の場所となる。引き連れて来た貿易船の数はキャラック3隻…初仕事の数ではない。
それにしてもディスタンクシオンとは皮肉な名だ。なんせ目の前の港は大型貿易港とは別にもう1つの顔がある。人市場が至る所は開かれ、それにより決して上品とはいえないような者も多い。
この艦が横付けされようとしている桟橋にも酔っ払った人間が転がっている……もう年老いてる人だから大丈夫だろうが若い人なら市場で本人も知らない内に売られてるなんて事にもなりかねない。
まぁ初仕事の場としては気負い無くできそうなので良いが手応えはなさそうだ。
手に持つ今日取り引きしたい物のリストをもう一度確かめる。織物の数が多いがこの港の金持ちは今、織物を欲しがっているので容易く裁けるだろう。
これはとある街の特産品の1つで全て一点物となっている。……この特産品はある領主がΩの特性を生かしΩならではの仕事が出来ないかと試行錯誤した結果生み出した物。草原で羊を飼い、毛を刈って洗い、糸をよって染料で染め、色々な織物を作る。これを全てΩのみを雇い仕事とした為この領地では自分の意に沿わず身を売るΩがいなくなった。
大変な革命的な事であったが、これを考え出し実行し特産品にした領主もまたΩだ。
そしてこの特産品を見るデジレの目が少し険しくなった。……Ωと侮り事実から目をそらした私達をあざ笑うかのようにあの領主は次々と改革を行っている。その手腕は例えαと言われても納得のできるものでありαならではと誇れるくらいだ。
目の前の港、自分の状況、新しい特産品……ため息が出そうだが船楼から出てきた自分の夫を見ると
まぁ、こんな人生もありだと思えてしまった。
「どうだ?」と短いながらも初仕事を気遣う夫を……セオを見上げて苦笑する。
「私を誰だと思っている?この港は商売がしやすいと知っているぞ。何せ買う気がある者だけが集まる港だ。まぁそれでもキャラック3隻分とは思わなかったがな。」
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あの領主の元に今回のこの交易でいくらの儲けが転がり込むのか……いや、儲けはΩの寄宿学校へとまわされる。
本来なら大臣であった自分達が保護に動かなければならなかったのにそれを怠り放置した。それを愁いた能力のある者が手を差し伸べただけなのだが、その能力のある者がΩだった事に心の整理がつかない。
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