総ての海を征するもの……の正妻?

白いモフモフ

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信じられない話

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 私達有力貴族は、追い出した元第一王子の辿るだろう道筋を勝手に決めていた。
〈城から出れば保護する者も無いため、出したときに持たせた幾ばくかの金を使い果たし生きる為に他のΩと同様、その身を売ることで金を得てその内病を得て亡くなるだろう。〉
 私達は知らず王家すら侮っていたのだ。なんという愚かな事をと後悔しても総てが遅い。

 かくして私達は……王家を侮った者達は報いを受けることになる。

 改めて言おう、私は命は狙っていない。
むしろ私のとった行動は普通ならばこれ以上ない温情だったのだ。廃嫡された元王子が彷徨いていれば早晩殺されるか謀反の旗頭として利用されるだけだ。しかし母方の王族の元へ嫁入りすれば一生涯安泰の生活ができる。そう思っての行動だった。


 ……いや、王も私の行動の意味は分かっておられたのだろう。だから他の者と違って今も大きな後ろ盾がある。私自身の命があり息子にも咎めは及ばない祖国から離れたがこうして不自由ない性活がおくれている……間違えた、生活だ。

 …………さて、そろそろ現実に戻らなければならないだろう。しかし戻りたくないのだ。
……ああ、そういえば一番現実を拒否した日のことを思い出した。私が求婚された日の事だ。


 ……は?王よ……なんと……いわれ…た?
おかしい……嫁にやると?……誰を?……私?え?

 勝手について話が進んでいく。求婚?
なんだ?婚姻成立?ん?ん?

 あっという間の出来事はそれでは終わらず、契りの既成事実まで持って行かれた。
 翌朝の私の心うちを誰が理解してくれるだろうか…誰も理解などできようがない。妻との間に子まで成した貴族の男αが嫁に行くなど前代未聞……。
 翌朝の王への挨拶など精神的にも身体的にも無理で私を嫁にした男が1人で行った。

 その日のうちに隣国に向けて出立する予定だったが体調が崩れもう1日延ばされた。あの男は真実私を昔から狙っていたらしく、体調が思わしくないのを知ると自分の艦から小型船を用意し川を遡って私のために楽な行程を考えてきた。

 これが年頃の娘ならば「私の為に」と感激したであろう……が、現実はこの私だ。しかも船などと目立つではないか!何の為に船が用意されたかなどと誰が聞いてもすぐ予想できるだろう!
 私があの船に乗り海に向かうということは、『馬車にも乗れないくらいあの男にアレコレされ動けないです』と言って回ってる様なものだ!
 断固として断る!
 


 ……何という事だ。私は神に見捨てられたのか!
私の目の前に幾つもの箱が置かれ、世話役が並ぶ。

「この者達は実に良い働きぶりであった。気に入ったのでデジレ殿の専属として仕えさせる。王にも許可をもらい本人達の了解もとった。
 デジレ殿も慣れた者の方が気楽であろう。」

 目の前に並ぶのはあの夜、この部屋に使え見届け役となった者を筆頭に6人の男と老婆が1人だった。
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