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こんな筈ではなかった

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 順風満帆それが私の道だった。
若くして国一番の領主となり、その才能を評価され国の大臣に抜擢された。勿論、大臣の座を受けるということは領主を降りる事になるが幸い息子が大変優秀な為安心して後任を任せられた。

 優秀なαとして隣領の娘を妻に迎えたのは15才。妻の年は13才…少し若いが既に領主となっていた私は早くに結婚する義務があった。
 政略結婚のわりには夫婦中は悪くなく、17才の時には息子を持つこともできた。妻はそれからすぐ亡くなったが息子は素直に成長してくれた。

 大臣として精力的に働いているとき大きな決断が必要となった。この国の王には代々優秀なαがつき国を栄えさせた。今の王も大変優秀なαで文武両道、人道的でもあり王妃様とも良い関係で申し分ない。
 しかし……第一王子として生を受けたのはΩだった。当然のように当時の有力貴族は廃嫡を求めて迫り強引に成人前に城から追い出すよう決めた。

 この第一王子はΩの筈なのに時にはαより優秀で周りを驚かせたことも1度や2度ではない。流石に幼い子供に『ある程度育ったら出ていけ』とは誰も言わなかったが、それを知っていて平然としていた。
 後に知った事だが、この事を知った王子は1人でも生きていける準備を始めたらしい。この時の王子の年齢はなんと3才……その時点で自らの将来を予測し危険を避けるために姿を偽った。

 この偽りの姿を信じて疑わなかった私達は、成長し追い出した元第一王子を遠くにやってしまおうと手下を送ったが、偽りの姿から本来の姿に戻った元第一王子を見つける事ができなかった。

 それぞれの有力貴族が自分の都合のために手下を送った。中には亡き者にしてしまおうと暗殺者を送った者もいたが私はもっと国のために役立てようとした。いくらいらない存在とはいえ幼い頃から見知った王の子供……Ωというだけで悪い事は何一つしていないのだから殺すのは忍びなかった。

 だから私は王妃の実家である隣国の王族に嫁入りの話を持ち込んだのだ。幸い隣国の王族には知り合いがおり、表面は怖いが中身はなかなか義理堅く筋を通す立派な男だったので悪い話だとは決して思わなかった。
 それどころかΩの者にしてはこれ以上ない良い話だと信じて疑わなかった。

 なぜ私達は気付かなかったのだろう。城の中のみにある水道、異様に早い情報、見慣れない料理……総て元第一王子のアイデアだと。
 在るのを知っていたし利用してもいたが優秀なαの王や王妃、他の大臣がいる為誰かがどこかの国から持ち込んだのだ思っていた。これらは元第一王子が成長するごとに増えてると気付かなかったのだ。

 中には元第一王子が異様な存在と思っていた者もいたようだが漠然とした感覚であったらしくその者達は元第一王子に暗殺者を送っていた。

 後に私が知った元第一王子の行動は有り得ないもので、もしその内容を知っていればバース性の検査を間違いと判断したはずだ。
 誰が追い出したΩの元第一王子が王都のど真ん中で貴族の耳にも入る新しい小物店のオーナーだと予測したか……できるはずもない。
 
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