Ωの僕がお偉いさん

白いモフモフ

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壁に耳あり

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 今日からポニ子は街の家でお留守番だ。ポニ太は寂しがり屋なので連れて帰ってきたが、ポニ子は気が強くて普通馬は1頭でいるのを不安に感じる筈なのに平気なのだ。

 厩近くの小間使い用通路から秘密の通路を歩いていると謁見室の裏側で足が止まった。

「王様、もう王子の誕生日まで僅かです。今年の誕生日で12才になるというのは農民でも知っていることです。王室からなんの発表もされないというのは不信に思う者もいるでしょう。」

「…だから、王子をすぐに追い出せと言うのか!其方は12才の誕生日まで待つと言ったではないか!まだ第一王子は11才だ。追い出させはさせない!」

「しかし…国民は…」

「自分の子1人守れぬのに…国民の事まで…」

 父様と誰かわからないけど臣下の内の1人だろう。秘密通路で自分の部屋へ戻り王子の姿になる。鏡でいつものように確認して覚悟を決めた。
 でも、なんか癪だからなんかしてやろう。

 部屋を見渡して欲しい物は…無い。庭には2羽ニワトリが…って違う。あーニワトリ?違うな。
とりあえず、一般人の服に王子の扮装。用意しておいた塗りの衣装箱に王子の服と指輪を入れて…お別れの手紙を書く。

 この手紙、普通に見るだけなら普通のお別れの手紙だけど仕掛けがあるんだ。柑橘系の果汁で文字を書いて乾かし、火で炙ると文字が出てくる。
昔の遊びだけどこの世界では知られていない。けど小さい頃から僕は母にこの方法でよくお手紙を書いていた。これなら母はすぐにわかってくれる。

 でもこれ、この世界の紙があまり質が良くなくて普通の紙でもよれたりゴワゴワしてるから誤魔化せるだけだよね。

 今日は早くから行動していたから今日の内に出て行こうと思えるけど、日が暮れていたりしたら次の日まで待たないといけない。それは流石の僕でも色々考えてしまって凹むよ。


 秘密通路を通って謁見室の近くに出る。いきなり現れると僕が秘密通路を知ってるとバレてそれこそ幽閉を免れないから。一度ソッと覗いて謁見室の前にしか兵士が居ないのを確かめた。この辺りの兵士は近衛兵で第一王子がΩで城から出て行く事を知っている。説明が省けて楽だろう。

 塗りの衣装箱を持って兵士の前へ立つ。一瞬兵士は槍を向けかけたけどハッとして元の姿勢に戻る。
1人が驚愕の顔をしてくれてるので僕は嫌われていた訳ではないとわかり気分が軽くなった。

 扉の前の兵士が開けてくれたので謁見室の前室へ入る。また兵士がいたのでそこまで進み、王への面会を伝える。そこにいた兵士も僕の姿で事態がわかり急いで知らせに入ってくれた。

「王子、目下の者から話しかける御無礼をお許しください。」

扉の前のもう1人の兵士が跪いていた。

「どうしたのですか?立ってください。僕はもうこの城を出てただの街の子供になります。立派な近衛の方がそんな事なさらないでください。」

「王子、貴方様がΩだとしても能力が低い訳が御座いません。城に通っている水道や壁を伝う暖房は貴方様の功績ではないですか…それを」

「ありがとう。知っている人が居てくれるのなら僕は大丈夫です。父様や母様から離れるのは心細いですがこれ以上、不和の種があるのは避けるべきでしょう?城から出た後は一切無関係と大臣に言われたので援助も無いようですがなんとかなるでしょう。父様は今まで精一杯僕を守ってくださいました。もう困らせたくは無いのです。」

 お気づきでしょうか?チクチクと大臣への嫌がらせです。これくらい良いよね?


 








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