Ωの僕がお偉いさん

登場待ち

　僕は混乱しています。
え～と?……もう覚えきれない!

　お披露目会開始の前から下級貴族が続々と来た。入場は基本、階級が下の子爵、男爵クラスからでその中でも家柄や役職が在るか無いかでも変わるらしい。
　因みに、今回は貴族籍無くても出席する人もいるからその人達もここらへんで入城する。……マオ達のことだ。ほぼ隠し護衛なんだけど隠しきれないオーラがある。

　最初の人達の入城からだいぶ時間が経って、他の王族達と一緒に僕も入場したのだけど、僕は現王の子供だからエスコートのアーノルドとシモン、アンリと共に朗々と名前を告げられる派手な入場になった。

　ええそりゃもうあの長～い名前を読み上げた人、よく言えた!アンリですら『母上、ハイゼルなんて名もあったんですね』とコソッと言ってたくらいだ。

　「ノエル様、久方ぶりじゃな。」

と車イスで現れたのは云わずと知れたイエイガー老……いえいえ、何をそらっとぼける気ですか?朝から会ってましたよね?打ち合わせしてたじゃないですか。
　デジレ様にリリーのエスコートを心穏やかにしていただける様にと僕等は助っ人としてイエイガー老を呼んだ。一線を退いた老人と本人はいうが、まだまだ牛耳っているのは知ってるからだ。

　イエイガー老程の経験を重ねた人はやっぱり凄くて僕の頭を悩ませた諸々の問題を解いていってくれた。主に、フールフーガと父様の自由奔放の挙げ句のドッキリ訪問とかを。なんでも直ぐに白紙の始末書なるものが届き各部署宛に合計13枚書いた後、詫び状を連名で書いて張り出したそうだ。……僕が『めーわくしてます!』って言っても『スマンスマン』しか言わなかったのに!


　「母上?母上、お疲れですか?」

　そっと肩を叩かれて我に返る。そう挨拶を受けてる最中でした～。

　「ん、大丈夫。ごめんねちょっと多くの人に会ったから……」

　はい、こんな時は体力のないΩを前面に押し出すと…ササ～とソファー迄の道が開く。王族には専用の座る場所が用意されてるからね。挨拶はアーノルドに代わりに受けてもらい避難するとそこには既にサミュがいた。2人で笑いあい紗のカーテンを引いてもらう。
　紗のカーテンなんて本当はかなり透けてるし脇も空いてるから誰が誰と居るなんて解るのだけど暗黙の了解で誰も邪魔できない事になってるから逃げ場としてはいい場所だ。

　「凄い人だよね～?」
　
　呑気に言ってるけどサミュ?キミ皇太子妃でしょ?ローランドのエスコート受けて僕の後に会場入りする予定でしょ?
　ちゃんと落ち着くと居るはずのないサミュが既に寛いでいた事に目を剥く。
　今頃ローランドが探してるんじゃ?と心配してしまう。

　「んーー、大丈夫。デジレ様にエスコートされるリリーを迎える役にしてもらった。デジレ様はあの発表する舞台に上がれないじゃない?だからリリーが１人で王、王妃、皇太子の入場を待つことになっちゃうでしょ?でも僕なら養母だからおかしくないし、皇太子妃だから舞台にも上がれるもの。」