Ωの僕がお偉いさん

白いモフモフ

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イエイガー老は愉しんでいる…ハズ

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 「私達は始めに温泉の調査を致しました。結果は芳しくなく幾つかの湯元を閉めることで他の場所を守ろうとしました。」

 うん、確かにその記録は残っていた。途中、調査費用の一部として国に申請して受け取ったお金が何処に行ったか不明だけど。まぁこれは立替えておいたから戻しただけという事もあるのであまり突っ込まない。

 「次に行ったのは他に興味を引く物を作るということです。これはそれなりに効果がありました。」

 何ヶ所かにひっそりとした貸別荘を用意した、とか娯楽のためにオークションを開催してどれくらいの資金を作り出したと言ったけど、その詳しい内容については触れていない。

 「その貸別荘のうちの1つが今回の場所ですね?」

 夫人の言葉を鵜呑みにして同情しだす人が出る前に僕はこれまでの夫人の努力?を無駄にする一言を放った。
『違いますわ!』と即答する夫人に十数年前の貸別荘の記録にある場所と今回の場所が一致していると示すと夫人はなぜか泣き出した。

 「なんて酷い仰りようですわね!まるで私達が最初から罪を犯すつもりだったとでも言いたいかのようですわ!」

 酷いあんまりだと芝居を続ける夫人に僕は次々と証言とその証拠を出していく。不幸中の幸いか隣国へ売られた人の中で今は幸せになった人を見つけられたのだ。その人の番から売られて来た時の書類をもらうことが出来た。

 「ハイこちらをご覧下さい~。10年前に売られたΩの女性の記録です。あちらの国はまだ人身売買が合法なので女性の様子から訳ありと感じたものの深く考えずに取り引きしたと証言があります。そしてこの2つ目、夫人は覚えていなかったようですが去年売った子供をこの夫婦が買い取り保護してます。ハイ、その証拠がこれ。」

 ヒョイヒョイと証拠の紙束をイエイガー老に渡す。それにサッと目を通すと隣の補佐の人へ書類が渡る。
 眉を顰め夫人をチラリと見てまた隣の人へ書類が渡る。それが4人目まで行ったのを見て僕は夫人に「初めからそのつもりだったんでしょ?」と言った。

 暫くするとあの紙束はどこまで回ってるんだ?と言いたくなるような場所から『こんな子供まで…』と非難の声がきこえるようになった。

 「た!たしかに!……たしかに、売りましたわ!ええ!……で、ですが!!よくご覧になって!!それらは、Ωですわ!!」

 ハイ!!待ってましたその言葉!!さぁもう一声行っちゃおう!!

 「売った者達はΩですわ!!頭も悪く体も貧弱で仕事もまともに熟せない邪魔なΩですわよ!!」

 会場に夫人の声が響き渡った。一瞬にしてシ~ンと静まり周りの貴族は体を強張らせている。この静けさの意味を夫人は理解してないのだろうか?未だ鼻息荒くフーフー言ってる。

 言っちゃった言っちゃった~。Ωって解っていた。なんなら敢えてΩを選んでいたっぽい台詞、言っちゃったねぇ。

 「夫人?今の制度知ってますか?」

 思わずといったイエイガー老の言葉が会場に響いた。けして大きい声ではないのに響いたのはそれだけ会場内が静かだったという事だけど、イエイガー老の言葉のあとは一斉にザワザワしはじめた。
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