Ωの僕がお偉いさん

白いモフモフ

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閑話:ある生徒の話

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 あと数週間で卒業を迎える僕の話をしよう。


 僕はある程度大きな町の伯爵家の次男として生まれた。伯爵とはいえ領地は持っておらず宮廷仕えの家で本家筋ではないので生活に余裕は無かったようだ。
 それでも貴族というのは見得を張るもので、妾を囲い(それが僕の母なのだけど)季節ごとにパーティーを開き、招待状が来れば必ず出席する。もちろん毎回同じ服装とはいかずそれなりにお金のかかったドレスを注文。
 これでは生活に余裕なんて出来ようがない。

 お陰で家の財産を管理していた正妻の奥様はカリカリしていた。奥様は同じ伯爵でも領地持ちの家で裕福だったらしい。パーティーでは毎度違うドレスを着て自分の家でも度々お茶会やらパーティーを開いていたとか。でも嫁いだ先ではお金に余裕なんてなくてしかも嫁いでみれば既に妾がいた。かろうじて子供は居なかったものの、“正妻が第一子を産むまで子供をつくらない”という前伯爵の条件で妾を囲っていたのだ。

 当然、正妻からの僕へのあたりはキツかった。生みの母は人身御供として僕を差しだし苛められていても知らん顔だった。ある程度大きくなるとバース性検査を受けさせられΩ性だとわかると扱いは更に酷くなった。
 いつもボロボロのお下がりの服で家庭教師もつけてもらえず庭の角に畑と小屋をもらい家計を助けるために野菜を作りそこで寝泊まりする事を強制された。正妻の子供の長男は正妻が使用人扱いするため最初から弟だという認識すらなかったという。

 そんな僕だけど、9才になると父が現れて僕を寄宿学校に入れた。僕を連れ出すときに正妻は『やっと厄介払いできる二度とこの家に関わるな』と言い、父も母も『戻ることは許さない』と言った。僕自信は新しい場所に不安はあったけど、学校に入学できることあの家から離れた事が嬉しくて仕方なかった。

 入学してからは驚きの連続だった。暗く狭い部屋だと思っていたのに日の光が差し込む部屋は広く、年上の子との2人部屋だった。しかも2人部屋なのは最初の1年だけでここの生活に慣れるためだった。それから食事は朝夕は寄宿舎の食堂で、昼は学校で栄養たっぷりの美味しい定食、デザート付き。お風呂は広い大浴場でお湯をたっぷり使えた。もちろんふかふかベッドにお布団もある。
 そしてある程度慣れた頃、一番驚く事を知った。

 「え、知らなかった?この学校造った人は王子だよ。しかも僕らと同じΩ。」

 正直、信じられなかった。でもノエル先生に会うまでは『王子だからお金に困らないしお世話もしてもらって大事に育てられたから』なんて思ってたんだよね。それが初めて会って、色々知ってみたら全く予想とは離れた人で吃驚した。
 そのうち、とんでもなく常識から外れてる人だとも理解したけど。
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