Ωの僕がお偉いさん

花園邸の侍女談～爺のお遊び～

　ここ、サミュエル様が住まうこの館は使用人の間では『花園邸』と呼ばれています。植物は多いですが花で溢れてる訳ではないのですが様々な色が映えるのです。建物は白を基調としていて別に特別な物はないのですがここのご主人であるサミュエル様は色で遊ぶのがお好きなようで部屋ごとに色々な色で染められているのです。
　例えばこの部屋は濃いグリーンのカーテンを主として淡いグリーンの絨毯、鮮やかなグリーンの花瓶、爽やかなグリーンのソファー……等ですね。そして隣のお部屋はピンクを主体としてますし、そのまたお隣はオレンジです。

　ああ、いえ、今日の本題はそこではありませんでした。つい別の考えに……。私の目の前で繰り広げられているカドラさんと爺やさんの会話が微妙にツボに嵌まり無表情を保つために別に意識を向けたかったのです。

　「爺やさんさっきのノエル様のお話なのですが」

　「はい。蒸気船開発のお話ですね？」

　「そ、そうです！そうです。蒸気船開発！」

　どういう事なのか？とアワアワしながら爺やさんを問い詰めるカドラさんは屈強な体格の持ち主なのに心は人一倍優しい方なのでギャップ萌えします。

　「ええ、ノエル様が仰られたとおりですよ。箔づけの１つですね。」

　「それはわかりました！私の言いたいのはこの国の最重要機密ではということです！」

　「ええ、そうですね。まだ構想の段階ですのでカドラさんを中心に人を集めますので」

　「そこ！そこです！」

　爺やさんはわざと？なんでしょうね。解ってるのに淡々と話を進めカドラさんが『自分はこの国の国民じゃないのにそんな重要な機密に関わるなんてとんでもない！』という意味の言葉を気付かないふりをしてからかっているらしいのです。
　カドラさんも冷静になればなぜノエル様がカドラさんを中心にしたかなんてわかりそうなのに。

　「そういえばそうだね？カドラは最高の船大工だけど……なんで？」
　
　……あぁ、純粋にわかってない人が聞いちゃいましたか。

　「サミュエル様は皇太子妃となる事が決まっておりますのでその番であるカドラさんだってこの国の人になるという事ですよ。」

　……あ、爺やさんうまく逃げた。そうかそうか、爺やさんでもこの純粋培養王弟サミュエル様に国交の裏社会の思惑を教えるのは忍びないのですね。……いや、いちいち説明するのが面倒なだけか？意外と爺やさんノエル様以外に対してはそういうところあるんですよね～。

　あ、サミュエル様が簡単に納得してカドラさんに頑張って！とエールを送った処でお話しはおしまいですか？そうですか。じゃぁお見送りしましょう。



　「……で、侍女Vさん。貴女はわかりましたね？」

　はい来ました。お見送りの途中で爺やさんの“チェック”がきました。
爺やさんは私達侍女や侍従が本当の意味を理解していて、解らなかった主人にそれとなく自分で気づかせる様に会話の中で誘導する事を望む。
　はぁ…本当にイイセイカクしてる。