Ωの僕がお偉いさん

白いモフモフ

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灯台

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 拓かれた港から東に小さな湾があり、遠浅に見えるそこはとても旗艦クラスの艦を製造、修理できる場所だとは思えない。だがほんの一部分だけ沖にある海溝から繋がる深い部分がある。
 フールフーガでも選りすぐりの操船技術を持つ者がいる船だけがこの港のドッグを利用できた。
 そこはカドラが先代の棟梁から受け継いだドッグだ。
 このドッグを見下ろす位置に古い大灯台があり、そこをサミュエルとの合瀬場所として指定していた。


 「で、なんでここを指定したのか聞いてるかなノエル?」

 理由は聞いてないので首を横に振ったけど、僕が思っていた灯台とは全然違うものなので何か特別な場所なのではとは思っている。

 サミュエル様を連れて来るとカドラさんが出迎えてくれた。後少し時間がたてば僕らはお暇する予定だ。
 灯台は海に灯りを届ける役割だからその為の装置があれば良いのだろうと思っていたのだけど、ここはなんというか……家?家にキャンプファイヤーする場所がついてる?って感じなんだ。

 「ええ、変わっているでしょう?ここは高台の上にありますから平地の灯台のように高い搭を建てる必要が無いんですよ。わざわざ重い燃料を上げたり整備の為に危険な作業をする必要が無いんです。」

 僕らのコソコソ話を変わった灯台という話題だと勘違いしたのか、お茶を持ってきてくれたカドラさんが説明してくれた。そのカドラさんの後ろからお茶菓子を持ったサミュエル様が来て「私もお茶を淹れてる間に聞いたんです。本当に灯台なんですって。」とニコニコしている。

 サミュエル様はここに着くまで僕にカドラさんがここでどうして待っているのかとずーーーっと気にして聞いてきた。本当の事を言うわけにもいかず、カドラさんが出発するときに言っていた「いつかサミュエル様を連れて行きたいと思っていたんです。とても大事な場所に一緒にいてほしくて。」という言葉を思い出して答えていた。

 「カドラさんは大事な場所で一緒に過ごしてほしいみたいですよ。」

 そう言うとサミュエル様は背景に花を出現させるように、とびっきりの笑顔&モジモジ ハワハワ ソワソワ と分かりやすい期待の仕方をした。よく『表情がコロコロ変わって見ていて飽きない』って言うけどこういう事を指すんだとわかった。
 ……僕もアーノルドや父様に言われる時はこういう感じなんだ~ってつい客観的に思っちゃった。

 「ここはあのドッグを受け継いだときにここの管理も受け継いだのです。普段は灯台守りが居て灯を入れて一晩中見張るのですが、時折こうやって歴代の棟梁が見張るんです。」

 「“時折”なのですか?灯台守りだけではいけない理由でも?」

 「そうですね……私が先代から継いだ時は『船を造る者はその船の行く先も見極めろ』と言われました。まぁ灯台に灯を入れている事が“見極め”では無いことはわかりますし、行く先等も船大工が決める事ではないのですが所謂……棟梁としての責任と覚悟。の様なものを忘れるなという戒めだと思っているんです。」
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