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再入港
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夕日で照らされた海は美しいが、高い高い崖の上にある町に少しずつ光が現れそれが溢れていくように広がっていった様子はとても神秘的だった。
「この様子はとても美しいでしょう?」
いつの間にか横に来ていたデジレ様が同じように景色を眺めながら聞いてきた。デジレ様は提督の嫁として連れてこられた最初の日に見せてもらったのだそうだ。淡いオレンジ色と薄紫色の交じった空にだんだんと暗闇が出てきて真っ暗になると町中の灯りで町の形が空中に浮き上がってるように見える。
崖の上に町があると知っているからいいけど、知らずにきた人はびっくりしそうだよね。
この景色にうっとりしていたけど、どうやらデジレ様は僕に話があるようだ。そんな雰囲気を醸し出しているし爺が少し離れている。
「デジレ様、僕にお話が?」
なんとなく迷っているようなので水を向けてみよう。
「ええ。……そうですね。貴方には色々と驚かされる所が多い。遡れば、幼い頃に見せていた姿から追い出された後の生活。その後の領主になった事に至るまで……何者なのかと勘繰りました。いえ、物語にあるような魔物がとって代わってるのではとも。
ですが……この旅でわかりました。貴方は……普通に変人なんですね。」
フフフ…と笑うデジレ様は見たこともない柔らかい笑顔でびっくりした。だっていつもしかめっ面か怒ってる顔、もしくは子供の頃の記憶では無表情だったから。
「まぁ冗談は置いておいて。」
……冗談?!デジレ様、冗談なんて言うの?!
いや、デジレ様がそう言うんだからそうなんだろうけど、……うんまぁいいや。
「ありがとうございます。」
うん?……何がですか?
「貴方は私を恨む権利がある。貴方から両親、住む場所、…あまつさえ生きる事さえ奪おうとした内の1人だ。なのにそんな私の息子を番として認め、長子をグリフウッドの次期領主と認め……私に孫を抱かせて下さった。」
いやいや、アーノルドとは『運命の番』ってやつだし、っていうかデジレ様はあの頃だって僕が生きやすいようにフールフーガに嫁に行けるように考えていたらしいでしょ?……まぁ、そのお相手が提督だったらしいけど。そうなってたら今頃僕はイキ絶えて……間違えた、息絶えてますよ。
「ノエル様、この上……こんなお願いは本当に図々しくあつかましいのですが……。」
重たい空気にデジレ様を見るといつもよりも真剣に僕を見ていた。その様子に『ああ、言われるんだな』と分かった。
「ノエル様、アンリを養子として迎えさせて下さい。」
デジレ様は話を続けた。この旅でアンリをきちんと見ていた。アンリはまだ幼く甘い考えもあるが成長している。とても努力をしているし責任感も出てきた。そしてなによりアンリがよく話をしに来てくれて色々と話をしてもっと応援し、育て、一緒にいられればと思っている。それに提督もアンリを気に入っているらしく本人が望んでくれたのならば正式に迎い入れたいと言っているらしい。
……僕ももう我が儘とか別に考えないと。考えたくないけど。
「この様子はとても美しいでしょう?」
いつの間にか横に来ていたデジレ様が同じように景色を眺めながら聞いてきた。デジレ様は提督の嫁として連れてこられた最初の日に見せてもらったのだそうだ。淡いオレンジ色と薄紫色の交じった空にだんだんと暗闇が出てきて真っ暗になると町中の灯りで町の形が空中に浮き上がってるように見える。
崖の上に町があると知っているからいいけど、知らずにきた人はびっくりしそうだよね。
この景色にうっとりしていたけど、どうやらデジレ様は僕に話があるようだ。そんな雰囲気を醸し出しているし爺が少し離れている。
「デジレ様、僕にお話が?」
なんとなく迷っているようなので水を向けてみよう。
「ええ。……そうですね。貴方には色々と驚かされる所が多い。遡れば、幼い頃に見せていた姿から追い出された後の生活。その後の領主になった事に至るまで……何者なのかと勘繰りました。いえ、物語にあるような魔物がとって代わってるのではとも。
ですが……この旅でわかりました。貴方は……普通に変人なんですね。」
フフフ…と笑うデジレ様は見たこともない柔らかい笑顔でびっくりした。だっていつもしかめっ面か怒ってる顔、もしくは子供の頃の記憶では無表情だったから。
「まぁ冗談は置いておいて。」
……冗談?!デジレ様、冗談なんて言うの?!
いや、デジレ様がそう言うんだからそうなんだろうけど、……うんまぁいいや。
「ありがとうございます。」
うん?……何がですか?
「貴方は私を恨む権利がある。貴方から両親、住む場所、…あまつさえ生きる事さえ奪おうとした内の1人だ。なのにそんな私の息子を番として認め、長子をグリフウッドの次期領主と認め……私に孫を抱かせて下さった。」
いやいや、アーノルドとは『運命の番』ってやつだし、っていうかデジレ様はあの頃だって僕が生きやすいようにフールフーガに嫁に行けるように考えていたらしいでしょ?……まぁ、そのお相手が提督だったらしいけど。そうなってたら今頃僕はイキ絶えて……間違えた、息絶えてますよ。
「ノエル様、この上……こんなお願いは本当に図々しくあつかましいのですが……。」
重たい空気にデジレ様を見るといつもよりも真剣に僕を見ていた。その様子に『ああ、言われるんだな』と分かった。
「ノエル様、アンリを養子として迎えさせて下さい。」
デジレ様は話を続けた。この旅でアンリをきちんと見ていた。アンリはまだ幼く甘い考えもあるが成長している。とても努力をしているし責任感も出てきた。そしてなによりアンリがよく話をしに来てくれて色々と話をしてもっと応援し、育て、一緒にいられればと思っている。それに提督もアンリを気に入っているらしく本人が望んでくれたのならば正式に迎い入れたいと言っているらしい。
……僕ももう我が儘とか別に考えないと。考えたくないけど。
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