Ωの僕がお偉いさん

水遊び

　デジレ様のご威光なのだろうか、取り引きはスムーズに進んだ。そこ結果、僕が欲しい数が集まるまで時間がかかるという。それならとデジレ様が提案してくださったのは、デジレ様の配下数人と僕のところの侍女さん2人が残り積み荷の管理をしてもらい南の島の帰りに引き取ってはどうかということだった。色々と考えた末、侍女さんを２人とデジレ様の配下を残して行くことに決めた。

　「暑いから水遊び行かない？」

　とマオに誘われた。この島は大きさの割には真水が豊富で水遊びできる池があるのだという。それも海の際にあるのでここから然程離れていないらしい。チラリと爺を見ると呆れてはいたがダメとは言わないので『行く！』と答えた。



　……水に入るために着替えたが…これは……。
薄地の洋服みたいなもの……これが水着らしい。紺色の半袖と膝までのズボンが一体化して“つなぎ”のような水着は水に濡れても体の線がわからないようにペチコートまで履いている有り様だ。

　一方、マオは普通のさっきまでの服。『オレ達は服着てても普通に泳げるもん』だってさ。いやいや、こんな水着じゃどっちにしても泳げっこないよ！

「ほらノエルもおいでよ！」

　池の中で呼ぶマオにつられて中に入ると……気持ちいい！ほんのり冷たくて最高！
あ、因みにトータは今コウが呼びにいってる。僕としてはついでに子供達もと思ったんだけど、何かあったときの付き添いの人数が足りないということでお留守番だ。
　膝くらいの深さの場でマオについてもらって泳ぎ方を教わる。……記憶的には知っていてもノエルになってからは泳いだことないもんね。

　マオの泳ぎ方はいわゆる横泳ぎ（日本古式泳法）だった。
　確かに理にかなってるよね。海賊をルーツとする彼らが息継ぎとかスピードとかの難点を少なくした泳ぎ方をするのは。しかも意外と初心者の僕でも泳げるもん。

「いやいや、ノエル本当に泳いだこと無いの？けっこう覚え早いよ？怖がらないし。」

　そうだろうね。基本、簡単には沈まないって知ってるんだもん。力を抜いて肺に空気が入ってれば……でもこの服は泳ぎにくい！せめてペチコートさえなけりゃ！もういっそのことペチコートとっちゃおうかな？

「マオ～、ノエル～」

　バカな事を思っていたらトータがコウに背負われて現れた。

「どうしたのトータ？」

　既に一泳ぎしたかのように2人ともびしょ濡れだ。

「落ちた。」

　コウがため息と共に一言。

「落ちた？どこから？どこへ？」

　マオも「えぇ～」と驚いてる。

「ボートから海へ。」

　コウが言うには僕と同じように船から箱で吊られて降りたトータは怖さで腰を抜かしており、ボートに移った時に体を支えてくれる人がいなかったためポチャンと落ちたそうだ。慌ててコウが飛び込んでレスキューしたからよかったものの、お付きの誰もトータについて来なかったのかな？

　あ、爺の笑顔が怖い。これトータ担当のお付きは後で説教コース決定だ。まぁ実際危なかったからさすがに宥めてはあげられないな～。