Ωの僕がお偉いさん

ノリと雰囲気

　父様とアーノルドの後ろに隠れたままそっと覗くとデジレ様は渋い顔のまま。提督は面白そうにしている。……提督って本当にデジレ様にラブラブなんだね、こんなおっかない顔してる人を見つめて幸せそうだなんて。と余計な事に考えをとられていたらもう一回デジレ様から「ノエル様。」と言われた。

「僕はアスレチックの規模を大きくして賞金をかければ良いって教えただけだよ！ちょっと“種類増やして煽り文句を入れれば”って！
　国境線よりだいぶ内側なんだから問題視する方がおかしいよ！難癖つけてる！」

　父様の後ろに隠れたままでなんだけど、僕のせいじゃ無いよと一応答えた。この父様とアーノルドの壁が無かったら絶対無理だよ。怖いというか……ヒィイイイってなるの。

「あーー、父上？ノエルを追い詰めないで下さい。皆様お忘れでしょうけどノエルはΩですよ。父上が仰りたい“周りの事を見て総合的に判断”というのは他の者の仕事です。しかも、今回のは紛れもなくあちらの言い掛かりですよ。ノエルの言った通り施設の位置は領内の端ではありません。」

「アーノルド、砦の位置などあちらは問題にしていない。吟遊詩人の歌を重視しているとあったではないか。“大地は愛し子の為に道を作る”……であったか？それから“風は海を渡り空を飛ぶ風を起こす”あちらは距離などはどうとでもなると思っているのだろう。しかもこれらは大枠でいえばその通りだと思うが？セオの言った様にあの気球があれば距離など然程の物ではなかろう？
　……それから、私が聞きたいのは何故その様なものを作ったのかという事だ。」

　……ですから、ノリと雰囲気ですってば。

「デジレ……娯楽だ。」

　とうとう父様が助け船を出してくれた。うんうん、わかるよ？デジレ様は昔からこういう娯楽物に関してあまり理解を示してくれないからハッキリ言いたくないよね。“またそんなくだらない物を”みたいな目で見られるの知ってるもん。

　そしてやっぱり「ハァ…」ってため息が聞こえた。このあとはやっぱりお小言？と思ったが何時までたっても聞こえてこない。あれ？って思って覗いたら提督となにやら話をしていた。

　何が問題だったの？もう軍事施設のものとはかけ離れた物になってる本当にただの娯楽施設なのに。褒賞金だって制覇しないと貰えないのだから挑戦者の中でほんの一部の人しか貰えてない。うーん……周りの街が栄えたのが問題？いやいやそれだって関係ないでしょ。

「一度休憩にいたしませんか？兄上は到着して直ぐに此方に来られましたし、時間も時間です。」

　この空気をたち切るようにローランドから声があがった。時間と言われザサを見れば「お食事の用意は整っております」と返された。

「では、詳しい事は明日に。」

　……疲れた１日だったよ。