Ωの僕がお偉いさん

白いモフモフ

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語っちゃうよ

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 「聞くも涙語るも涙の話を聞いてください。」
そう僕がシクシクと泣きながら言う相手はまだ赤ちゃんの域を出ない幼いリリーだ。
 だってもう誰も僕の愚痴に付き合ってくれないんだもの。

 ソファーに深く腰かけた僕の膝の上で『何?』という顔つきで僕をじっと見る娘に向かって愚痴る。

「リリーのお兄ちゃんはね、母様を置いて父様の所へ行ってしまうんだって。こんなに愛してるのに、母様を置いて行ってしまうんだって。父様の方が良いんだって。」シクシク……。

 一昨日の夕食時に真剣な顔をしたシモンが“大事な話があるので兄弟抜きで話がしたい”そう言って来たときから嫌な予感がした。食後に僕の執務室に向かい、話を聞くと『自分は跡取りとしての勉強を始めなければいけない。ここでも勉強だけなら出来るが自分が受け継ぐ領地はここではない。きちんと自分が受け継ぐ領地や領民と向き合いながら勉強を始めなければと思う。だから自分をグリフウッドにやってほしい。ずっと彼方にいる訳ではない、数ヵ月に一度は戻ってきて母様や兄弟と過ごす時間は作るつもりだ』そう言ってきた。
 シモンが『母様、解って下さいますね?』と言い終わっても僕の思考は????が続いていた。

 それからずっと僕は殆ど泣き通し。一日目は皆、慰めてくれてもシモンの言う事が間違ってる訳ではないから、二日目も泣いていたら聞き分けなさいと呆れられてしまった。でもね、頭では解っても感情がついていかない。そして三日目の今日は誰も知らんぷりするからこうしてまだ赤ちゃんのリリーに愚痴ってるという訳だ。え?爺?……爺は最近は後進の為にあまり前に出てこない。まぁ…出産の時やどうしようもないときは来てくれるから我慢してる。

 うん。僕は最近あまりリラックスできて無いと思う。今もリリーに愚痴ってるけど本当はどうするべきか知ってる。でも心が波打っていて正しい行動が取れない。正しい行動……立派な決意をしたシモンを認め、シモンを送り出すべく用意を整える事。
 そんなのできる訳ないじゃない!駄目だ……また泣けてきた。こうなるとどんどん不満が出てくる。爺がいない。トータがいない(トータはローランドの希望で王都にいます。)。アーノルドも居ない。それなのにシモンまで居なくなろうとしている。皆が僕を置いて行っちゃう……シクシク。

 黙って“撫で撫で”をしてくれるちっちゃい手を見る。リリーは“母様が泣いてる”という事しかわかってない。でも泣いてる人に“撫で撫で”が慰めになるのは知っているのだろう。「ありがとう」といっても泣いてる間は撫でていてくれた。おとなしくお喋りをあまりしない子だけど、心がとても優しい子だ。

「本当に……仕方無いお人ですね。」

 聞きなれた、どんなときでも“もう大丈夫”と思える声がしてそちらの方を見る。

「……爺……。」

 爺が来たら文句を色々言ってやろうと思ってたのに、姿を見た瞬間ホッとして収まりかけていた涙がボロボロと出た。すかさず侍女さんがリリーを抱き上げて預かってくれたので爺にしがみついて泣き倒した。……泣き止んだ後が怖い。絶対目がパンパンな筈だ。
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