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ローランドの焦り
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私は大きな過ちを犯した。
正直、兄上の腹心だし好かれているだろうというこれまでの経験から甘えた考えで後の事も自分の立場も考えず……手を出した。
本当に甘えていたのだ。
ある日の朝、兄上は爺と姿を消した。朝食に現れなかったが、義兄もいるし産後間もない事から現れなくても何も感じなかった。しかし、昼頃に義兄が兄の事を探していたので子供の部屋ではと訪ねたがそこにも姿がなかった。そして侍女達がシモンとリアンの所にも来ていないと言ったところで「では何処に?」となった。
それでも爺の姿も同時に見えない事から“爺と一緒なら問題無いのでは”と思ったが、生後7日のリアンの側を離れる事自体があり得ないのだと母上が焦っていた。
ちょうど私達が緊急の知らせを飛ばそうとしたとき、城から緊急の手紙が届いた。
『スサエナ領主が第一級犯罪の罪を訴え、王に罰を願い出た。至急、王妃と皇太子は城に戻るように』
……私は目を疑った。
母上の行動は早かった。馬の準備を申し付けると乗馬服にマントをはおり、私やお付きの者の騎馬を待たずに走り出した。私も相当馬の扱いは上手いと思っていたが全く母上に追い付く事は出来ず、そればかりか母上の侍女の方が速かった。
私が到着したとき、母上はもう王妃の装いに着替えており私も急いで失礼の無い服に代えた。
「父上、……王様。何があったのですか?」
公的ではなく、私的な部屋に呼ばれたもののその表情に厳しいものを感じて呼び方を改めた。
父上は黙って母上に1通の書状を渡した。
「……ノエルが爺と共に今朝現れたのだ。罪を裁いてほしいと言って……。」
書状に目を通した母上がそれを私に渡してきた。
『私は皇太子の教育の場を預かっておきながら皇太子が不祥事を起こす事を防げませんでした。皇太子が起こした事は教育を預かる私の咎めであり私の責任です。過去の前例に従い、皇太子の名に傷をつけた者として第一級犯罪者に指定し処罰をいただきたくお待ち致します。』
……私のせい、ですか?
言えただろうか……私のせいに他ならない。私の犯した罪によって兄上が罰せられる。涙が止まらない。父の、母の顔が見れない。
しばらく、呆然としていた私に父が口を開いた。
「ローランド、今回に限り罰する事はしない。急ぎ使者を使わせて被害者とされるトータに確認したところ、被害者とは思っていないという事なので穏便に済ます。……しかし、覚えておきなさい。上の地位を持つものはその行動が災いになる事もある。だからといって今後、行動を恐れるのではなく常に先を見て動きなさい。」
私はその言葉を聞いてやっと息を吸うことができた。……はい。解りました。私の愚かな行いで、兄上が命を失う危険性がある。皇太子という地位の重みが今になってわかってきました。
「お話し中失礼致します!」
ドアの外からの呼び掛けに顔を向けた瞬間、私はとんでもない言葉を聞いた。
「“裁きの間”のスサエナ様がご危篤との事です!」
正直、兄上の腹心だし好かれているだろうというこれまでの経験から甘えた考えで後の事も自分の立場も考えず……手を出した。
本当に甘えていたのだ。
ある日の朝、兄上は爺と姿を消した。朝食に現れなかったが、義兄もいるし産後間もない事から現れなくても何も感じなかった。しかし、昼頃に義兄が兄の事を探していたので子供の部屋ではと訪ねたがそこにも姿がなかった。そして侍女達がシモンとリアンの所にも来ていないと言ったところで「では何処に?」となった。
それでも爺の姿も同時に見えない事から“爺と一緒なら問題無いのでは”と思ったが、生後7日のリアンの側を離れる事自体があり得ないのだと母上が焦っていた。
ちょうど私達が緊急の知らせを飛ばそうとしたとき、城から緊急の手紙が届いた。
『スサエナ領主が第一級犯罪の罪を訴え、王に罰を願い出た。至急、王妃と皇太子は城に戻るように』
……私は目を疑った。
母上の行動は早かった。馬の準備を申し付けると乗馬服にマントをはおり、私やお付きの者の騎馬を待たずに走り出した。私も相当馬の扱いは上手いと思っていたが全く母上に追い付く事は出来ず、そればかりか母上の侍女の方が速かった。
私が到着したとき、母上はもう王妃の装いに着替えており私も急いで失礼の無い服に代えた。
「父上、……王様。何があったのですか?」
公的ではなく、私的な部屋に呼ばれたもののその表情に厳しいものを感じて呼び方を改めた。
父上は黙って母上に1通の書状を渡した。
「……ノエルが爺と共に今朝現れたのだ。罪を裁いてほしいと言って……。」
書状に目を通した母上がそれを私に渡してきた。
『私は皇太子の教育の場を預かっておきながら皇太子が不祥事を起こす事を防げませんでした。皇太子が起こした事は教育を預かる私の咎めであり私の責任です。過去の前例に従い、皇太子の名に傷をつけた者として第一級犯罪者に指定し処罰をいただきたくお待ち致します。』
……私のせい、ですか?
言えただろうか……私のせいに他ならない。私の犯した罪によって兄上が罰せられる。涙が止まらない。父の、母の顔が見れない。
しばらく、呆然としていた私に父が口を開いた。
「ローランド、今回に限り罰する事はしない。急ぎ使者を使わせて被害者とされるトータに確認したところ、被害者とは思っていないという事なので穏便に済ます。……しかし、覚えておきなさい。上の地位を持つものはその行動が災いになる事もある。だからといって今後、行動を恐れるのではなく常に先を見て動きなさい。」
私はその言葉を聞いてやっと息を吸うことができた。……はい。解りました。私の愚かな行いで、兄上が命を失う危険性がある。皇太子という地位の重みが今になってわかってきました。
「お話し中失礼致します!」
ドアの外からの呼び掛けに顔を向けた瞬間、私はとんでもない言葉を聞いた。
「“裁きの間”のスサエナ様がご危篤との事です!」
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