Ωの僕がお偉いさん

トータの苦労

　4日前から発情期に入ったノエル様の代わりにシモン様の面倒をボクがみてる。シモン様はとても利発なお子様でノエル様が今大変だというのがわかるのかとてもお利口にしていてくださっている。でもやっぱり赤ちゃん。今日のお昼寝から目が覚めるとちょっと愚図りだした。自分の子、カエデよりも2周りくらい大きくなったシモン様を抱っこ紐で抱っこしてカエデを背中に背負うと部屋を出て試しにと向かってみた。

　部屋の中からはか細い声とパチュパチュと音が漏れ聞こえてきている。時折悲鳴のような声もしてるからお取り込み中のようだ。出来れば母親のノエル様に合わせてあげて機嫌を取りたかったけど仕方無い。今は椅子にかけられていたノエル様のシャツを握って振り回したりして喜んでいる。これを貸してもらって戻ろう。

　案の定、夜泣きになった……。ボクの部屋は防音では無いから夜中は響く。幸い？今、爺やさんの部屋は留守なのでそこを借りよう。何かあった時の為にと渡されていた鍵を持ち出して部屋に入れさせてもらった。

　あーあ…一度機嫌が直ったから今日は大丈夫かと思ったけど…ムリだったなぁ。
　カエデは眠っているので爺やさんのベッドを借りて寝かせている。ヨシヨシ……泣きやんで。

　ボクは両腕にシモン様を抱えて揺すって歩きまわる。やっぱりノエル様じゃないとダメなのかなぁ？でも今の時期はムリ……あと2日もすれば大丈夫なんだけどなぁ……。そう思いながらなんとか宥めようと必死になった。

・・・・・・・

　なんとなく目が覚めた…なんだろう？赤ちゃん…ん？これ、シモンの泣き声だ。横では疲れた顔のアーノルドが寝ている。なんとか自分は大丈夫そうなのでアーノルドを起こさないようにその腕の中から抜け出す。ズルンっと力無いアーノルドが体の中から抜け落ちる感覚にゾクゾクとした快感を覚えるもシモンが気になりなんとか我慢した。

　簡単に下肢を拭うと宛布をしてズボンを履いた。……何の為の宛布かはお分かりの通りですから詳しくは突っ込まないように。……このコメントに対する突っ込みもね。え？…コメントに対する突っ込みがわからない？そりゃぁ、『突っ込むのはアーノルドだけじゃない』とかそれ的なヤツですよ。

　僕の部屋に直通の階段を降りてその更に下の爺の部屋からだと知って、爺の部屋へ向かう。いつの間にか時間は夜も遅くになっていたので誰ともすれ違わずにすんだ。
　静かにドアを開と、シモンが愚図ってトータに抱かれていた。困り顔のトータの目の下には真っ黒いクマさんが……。

｢どうしたのトータ！すごいクマ！……。」

　聞いた瞬間に理解した。そしてその原因のシモンに　“悪い子！メッ！”　ってやろうとしたら涙いっぱい鼻水だらけで小さな手を必死に僕にしがみつこうと伸ばしているのに気がついて……。申し訳無さでいっぱいになった。僕が手を伸ばしてトータから受け取ると　“もう離れないぞ！”　と全身でしがみついてきたのに泣けた。