Ωの僕がお偉いさん

お見舞いは口実ですか?

　いろいろと気球の事は問題が多そうだから(いろんな意味でね）終わらせてしまおう。

「デジレ様ご安心下さい。わが国の方針は今までと変わりなく平和路線です。敵対国がでたとしてもこちらから攻め居る事は無いです。気球も軍配備されたところで見張り程度でしょう。ご存じのように速度は遅く風が弱点ですので、主な使い道は当初の予定通り行楽のアトラクションです。でも、ご指摘のように体格の良い方向けに強度を上げましょう。」

　サラサラっと気球の一時使用停止と改良点を書いて書類を作り上げた。横で紛れもなく僕が仕事している所を見たデジレ様が目を白黒させていたけどもう慣れていただくしかない。
　これが僕だからね～。
さてデジレ様、ご用件はお見舞いと忠告どちらなのでしょうかね？

「……う‥っむ。ぎっくり腰に効く貼り薬を持ってきたのだ。後で爺に頼むといい。…………」

　…………？あ！

「デジレ様この後お時間はございますか？」

　ソワソワして言いにくそうなデジレ様はシモンに会いたかったんだね。この前大泣きされて取り上げられたからあまり抱っこ出来なかったものね。
　僕は良ければシモンに会ってから帰って下さいねと侍女さんを呼んだ。ちょっと嬉しそうな後ろ姿はどうやら間違っていなかったらしい。良かった良かった。

　……どこからか激しい泣き声が聞こえてくるけど…すっごく嫌がってる泣き方だけど…シモン、その人は間違いなくお前のお爺ちゃんだよ～。そういえば父様に抱かれる時も微妙な顔になるんだよね。爺は大丈夫だし、母様にも侍女さん 'sにも平気で抱っこされるんだけどね。あ、アーノルドは泣かないけど文句言いながら抱かれる。え？ローランド？大丈夫だね。
　しばらくの後、ピタリと泣き声が止んだ。あーホッとした。

「ノエル様、デジレ様がお帰りになりました。」

　そう報告が来たのは日が落ちるちょっと前だった。シモンったらずいぶんデジレ様に遊んでもらったようだね。良かったね～シモン。


・・・・・・・・・
《ある侍女の日記》

今日突然にデジレ様がおいでになった。ノエル様のお見舞いという割には渡されたお土産は赤ちゃんの物が多い。以前下さった赤ちゃんのお土産が実はノエル様のお店のものという失敗からか王都からではなくフールフーガから持ってきたらしい。……思い出しても笑える。

今日は珍しく私達への物まであった。ノエル様は気前よく大抵のお菓子類は私達に下賜して下さるから無くても良いのだけど、あれば嬉しい。中身はクッキーだったから皆で分けたから明日には無いだろう。
お帰りになる前にシモン様に会わせてと言われたから案内したけど案の定デジレ様はシモン様に大泣きされた。ノエル様は分かってないけどデジレ様はαの中でもけっこう上位のαだから嫌なんだと思う。ローランド様のようにずっと遊んでもらえるなら別らしいけど……。でも女性はαでも平気なんだよねシモン様。結局、お庭の芝生で必殺技の高速ハイハイのお手伝いをしたことで懐かれたけど腰大丈夫かな？