Ωの僕がお偉いさん

白いモフモフ

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あくまでもコッソリ

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「おい知ってるか?あの噂…」
「ああ、王が来てる訳だろ。」
「え?俺知らないぞ」
「おいおいまだ知らなかったのか?この領に王が来てるのはシモン様の祝いをするのもあるが、とんでもない重罪人がフールフーガに引き渡されるから……らしいぞ。」

 酒場や市場の端でひそひそと囁かれている噂。そこにもう1つ新しい情報が放り込まれる。

「おい…今下っ端の兵士が話してるの聞いてきたんだが、重罪人はあのサムスプリングの元領主達だってよ。なんでも汽車を襲撃したらしい。前の事件でもノエル様の恩情で命を長らえたのに、何人かと脱獄してこの街に潜んでたらしい!」
「なんだって!?潜んでた!?おい…仲間がいるのか?街は安全か?」
「ああ、パレードの時なんかあったって聞いたが、その時フールフーガの奴が協力して捕まえたていたらしい。」

 噂を広めるのは上手くいっている。領民の反応も思った通りだ。このぶんならば明日の引き渡しも誰かが偶然目撃するだろう。
 しかし、考えていたよりもこの領でもノエルの評判が良い事を知った。考えてみればそれも当然。
 もうこれ以上の発展は無いと思われたこの街はノエルが作った汽車により王都への便が良くなり更に発展した。それに最近は観光などでも王都の貴族が来るようになり街に潤いが巡っている。これらはノエルのアイデアからの恩恵が大きい。

 だから領民はそれを潰す可能性のある者がこの街に潜んでいた事を非常に問題視した。
此方に来ていた王の影が総動員され他に不審な者がいないか洗っているがもういないようだと報告はされている。

「そういえばフールフーガの奴等は今まで接岸はしても船員がゾロゾロと降りる事なんてなかったもんな。食いもん屋が出るから降りて来たと思ってたよ。」
「ああ、俺もそう思ってた。あれは不審者を見て回ってたんだな。」

 噂好きの領民はちょっとした勘違いをしているが特に問題は無いので放っておく。

「…もしかして、デジレ様のお姿が見えない理由はそこか?」
「え?デジレ様が?」
「ああ、提督の船に乗ってるのは旗を見りゃわかるのにお姿が一向に見えない。噂も聞かんし…。」

 変な所に飛び火した。これはノエルへの報告に載せられた。
 
「おい、フールフーガの船の所に目隠しがされたらしいぞ。領主館の裏にも同じ物があるってさ。」
「西側か?それなら間違い無く罪人用だろう?ところで、デジレ様の噂は聞かないか?」

 引き渡しの噂への食いつきが悪い。デジレが領主になった頃この街は傾いており、それを立て直したデジレはこの領ではかなり好意的な者が多いから、関心が罪人よりもデジレの安否にいってしまってるのだろう。
 噂をばらまく役目の男がそっと合図を送ってくる。対処するらしい。

「あぁ…デジレ様な…。ノエル様が抱えてるシモン様をずぅっと見てるぞ。配達の時に見ちまった。」

 …バカ者が!!本当の事言うな!あのαのデジレ様が物陰からじっと見てるなんて信じる筈無いだろう!

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