Ωの僕がお偉いさん

お祝い…ですよね？

　ここに1通のお手紙があります。綺麗な青色の封筒にはフールフーガの王族が使う封蝋がされて紋章入りの正式な物です。……では問題です。
　なぜ僕はこのお手紙を前に固まっているのでしょうか？

　答えは……裏書きの名前です。【デジレ・ロア・ハーザンホール】
　ハーザンホールとはフールフーガの提督の家名。嫁入りしたデジレ様は苗字がハーザンホールになられた。でも、まさかロアのお名前までとは思わなかった。
　フールフーガの王侯貴族では名前と苗字の間に“ロア”が付くという事は“生涯の妻”または“来世も共に居ると誓う”等、本当に愛してますよという人間にだけ与えられている名前。

　こちらから嫁に行った状況から正妻として望まれて行ったのは知ってたけど、フールフーガは“愛の国”とも言われるくらい愛の多い国としても知られていたのでデジレ様は提督にどれだけ思われているのか……。
　別に羨ましい訳じゃないよ？！名前にでまで“こんなに愛されている”と周りに知らしめているのを見てちょっとアーノルドの事を考えただけ！
　僕にはほら、シモンという愛の結晶があるから！

　ガサゴソと手紙を開封すると意外と繊細な字で“ご子息の誕生を喜ばしく思う”と書かれていた。
一応、僕の方がアーノルドより身分が高くどちらの後継者として育てられるかわからないため自分の孫というより王族の子供が産まれたのを祝うというニュアンスの手紙だった。…一枚目はね。
　本題は二枚目から。僕が快速艇に持たせた手紙には此方には母様がフールフーガにムチャを言っているようだという事、次第によっては精算のためグリフウッドに帰航されたら直ぐに帰国されるかもしれないこと……母様のムチャ振りで此方もデジレ様の帰航を首を長くして待っている状態だという事を伝えた。

　これに対してデジレ様はこちらから持って行った交易品がどういう物、またはお金に変わったのかを書き出したリストと共に手数料としてどのくらいを希望するかを書き出した物を送ってくれた。
　なんだか思っていたよりも良い条件で交易できたらしいのだが、暫くはその港に行きたくないとも書いてあり、酷く難しい場所に行ってくれたらしい。

　快速艇の人の報告でもデジレ様はとても疲れているようで、船に乗るようになって大分経つ今頃になって船酔いをおこしていたという。
　あのやり手と言われたデジレ様ですら苦労した場所……怖ろしいな。今回はお祝いの事もあるし、手数料はお望み通りに支払おうと思います。
　しかし……二枚目から八枚目までがリストとは。
一応,お祝いのお手紙という事で良いのですよね？

　あ、デジレ様の手紙から良いこと思いついた！布地はいっぱいあるし、縫い手は大勢いるし……できるよね？……うん、多分出来る！
　爺～！爺～！良いこと思いついた～。