Ωの僕がお偉いさん

急募・アイデア

　困ったのは1日目の事だ。前日の催し物はクルーズで移動後なので皆の疲れが有るだろうから遅くまで続く事は無いだろう。貴族の集まる催し物にしては珍しく、日付が代わる前にはお開きにする予定だ。しかしそうなると翌日、遅めの朝食を各自とった後は暇になってしまう。しかしその日の夜にはノエル達抜きで音楽会が開かれるから昼食後は女性はその用意に追われる為、催し物を開く訳にはいかないのだ。昼間の約二刻、それをどうするのか……6人は悩んだ。

「簡単な事で御座いますよ。温室を解放なさり、お庭にお茶の準備をして、男性にはシガールームやプレイルームでゲームをお楽しみいただけば良いのです。前日からの移動と催し物、夜の音楽会の為に体を休ませたい方も多いでしょう。お持て成しは催し物を詰め込めば良いというものではありませんからね。」

　さらりと答えを出したのは代々領主館で働き、長い間コックとして勤めている女性だった。確かに考えてみれば“年齢がいったβの女性”でこのスケジュールを考えるときついだろう。だからといって王族の関係する催し物の出席を拒む貴族はそうは居ない。そう考えると休息の時間は必要だろう。と女性コックの意見は採用された。
　では次の日、メインに当たる日は簡単だ。昼前に到着したノエルとシモンと共にパレード。領主館にてお披露目後、領民へもお披露目。休憩を挟み夜は舞踏会だ。この日の流れは昔から変わらない流れで良いだろうと意見が合う。

「僭越ながら……坊ちゃま方、Ωの奥様の体力をお考えくださいまし。朝方、到着なさり人混みの中の移動と緊張はお辛いでしょう。パレードの後にも休憩を挟むべきでは……。」

　給仕の年寄りが恐る恐る言い出した。
……確かに、ああ…シモンの為にも必要かと考え、休憩時間はこまめにシモンが泣き出した時の事も含めて考える必要がありそうだ。なぜなら、ノエルの事だから“シモンが泣いちゃったからミルクあげないとね”なんて言って馬車で授乳を開始し始めかねない。さすがに衆人観衆の中ではしないだろうが、人払いすれば問題ないくらいは言い出しそうだ。

　思いがけない所からも良い意見があがってくる。これは常日頃からと使用人だからと差別せず、良い人間関係を築いて来た結果だといえよう。

　ノエルと出会う前はどこか高飛車な所があったアーノルドはいつから自分は変わることが出来たのだろうかと思った。
　思えばノエルは不思議な人間だ。Ωなのにαのようで、なのに時々本当にΩらしい……それがノエルなのだと認識していたが自分を変えたように世の中さえも変えている。しかも良い方向に大きく変えているのだ。本当に…何かあると問題が大きくなる等困った事も多いがノエルと出会えて良かったと思う。

　それでも今回は大きい問題ばかりだが、揶揄ではなく自分で撒いた種だ。なんとかしてみせよう。