Ωの僕がお偉いさん

白いモフモフ

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子連れの獣って怖いよね?

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 赤子はαでした!そんな予感はしてたんだけど本当にαだったから驚いたよ。そして赤子のお名前はというと、【シモン】に決まりました!
 新パパのアーノルドはシモンと名前をつけた後、領の仕事のために一足先に戻った。思いかけず王都に長い間居る事になってしまったので仕方無い。

 そう……仕方無いのはわかってるんだけど、アーノルドと爺も戻ってしまったため今の僕はすっごく神経質になっている。巣も無い、守ってくれる番も居ない。両親はいるけど距離的に近い訳じゃないし、城の中には僕に馴染みのない侍女さんや侍従さんも多くいるので気が休まらないのだ。
 本当に自分が自分じゃないくらい苛立っている。


 ……コンコン。ノックの音数秒後「失礼します。シモン様の後入浴に参りました。」
 と、全く知らない侍女さんがやってきた。僕は「悪いけど、シモンの世話は僕がするから良いよ」と伝えたんだけど、「いえ、私の仕事ですので」とそばに寄ってきた。その言葉を聞いた途端にブワッて嫌な気持ちが持ち上がって「“仕事だから”する人に自分の大事な赤ちゃんを任せる母親がいると思う?それに僕はアナタを知らない。知らない人に預ける母親もいないよ!戻って!!」って言っちゃった。

 もう、それから本当にダメ。ずっとこの自分が育った部屋でシモン抱えて威嚇してる。馴れた侍女さんが来てくれた時はほっとして部屋の掃除とかお茶とか淹れて貰うし、シモンをのぞき込んできても“ほら見て見て可愛いでしょ?”って平気なんだけどね。


「ノエル様、お話がございます。宜しいでしょうか?」

 苦手な人の声が聞こえた。皇太子宮の侍女頭のアポリンヌだとすぐにわかる。この人、僕が大嫌いで第一王子だった時から会う度に睨まれていたから印象が悪すぎる。

「そのままで用事だけ告げて。」

絶対に部屋に入って欲しくない人だからそう言ったのに「中に入る許可を」と重ねてきた。

「入室及び面会は致しません。用事だけ告げて。」

「私は皇太子宮の侍女頭です。入室を拒まれるいわれは御座いません。入室許可を。」

 ……よく言えたものだと思うよ。許可は出来ない。シモンを守る為もあるけど、僕自身を守る為にもこの人はダメ。

「皇太子宮の侍女頭が王族にごり押しするの?いつから侍女頭はそれが許されるようになったの?」

 どうしよう。不安が苛立ちと混ざってすっごく嫌な事を言っちゃう。王族という生まれが恵まれていただけの傲慢な言葉だよね。わかってるのにダメだ…信用出来ない、油断できない、そう思うとトゲトゲしちゃうよ。

「……申し訳御座いません。ですが此方に遣わせた侍女がお叱りを受けたというのでどういう事なのかお伺いに参りました。」

 申し訳御座いませんって言う声じゃないよ。しかも見てないのに僕にはわかる。ドアの向こうで顎を上げて腰に手を当てて仁王立ちしてるんだよ。

 ……負けない!シモンを守る為にいくらだって吠えてやるんだからね!
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