Ωの僕がお偉いさん

ノエルのピンチ

　「ノエル様！」

　ノック無しで開けられたドアから爺が入ってきた…珍しい！頭、セットして無いね？洋服も部屋着だ～なんてつい思ってしまった。

「ノエル様！なんて事に！大変だ！！」

　…え?何…何？確かに大変何だけど、見た目で大変ってわかるの？そんなにピンチ？？
……いや、ピンチか。今波が来たって事はさっきまでは治まってたらしいけど、そんな事すら気づく余裕が無くなってるらしい。

　ガラン!ガラン!ガラン!ガラン!
大きな音が城中に響いた。何！？……え…あ、もしかして僕の事のお知らせの音？！ちょっ!ちょっと！恥ずかしいから止めて！？

「ノエル様、今、人を呼びましたので直ぐに医者も参ります！ちょっと失礼しますよ！」

　やっぱり！人を呼ぶ音だった～。
爺は僕の今の態勢が丁度遣りやすかったのか、いつもにない性急さで動いている。そして僕の部屋着の裾をペロンとめくって…下着を脱がせ始めた！

　ぃやぁぁ！恥ずかしい！　　なんて言ってる場合じゃ無いけどヤダー！

「ノエル様、嫌がってる場合じゃ無いんですよ！わかってらっしゃいますか？！破水どころか出血もしてますし……この分だと子宮口は全開で出産がはじまってるんですよ！？」

　いや、多分そうだろうと思ってはいたけど…。でもいきなりお尻ペロンは恥ずかしいでしょ。

　でも爺の動きは素晴らしく機敏で無駄がなく動いていく。もう僕の下着はどこかにやられてしまってるし爺はドアの前に衝立を置いたりして人が出入りしても中が見えないようにしてくれてる。流石は爺だね！
　僕も爺の手を煩わせないように協力しよう。まずはベッド移動だね。これは僕が自分の巣を出産後直ぐに使えるようにと提案して、分娩台をベッドとは別でとお願いしてあるから折りたたみで作ってもらってあるんだ。

　ヨイショと陣痛の合間をぬって折りたたみ分娩台を広げ……場所が狭いな。あ、物置にしてた隣の部屋は空いてるからそっちに設置しよう。
　うん、この広さなら問題なさそうだね～綺麗にしてあるし。あ、来た！波来た～！
　……耐えてぇ耐えてぇ又耐えてぇ。……よし去った!

　去ったからってすぐにチャカチャカ動ける訳じゃ無いんだけど、頑張るよ。よし、動こう！
　あ、あれ？また来た？

　そして、最大のピンチに陥っています！そのピンチはどんなのかって、わかるでしょ!?そーなんだよ。
……ちょっとねちょっとだけ、ハァァァって息を吐いたら、プリッと出た。大丈夫！全部じゃないよ？ちょっとだけ！

　ヤバい…がに股のまま爺を呼ぼうと……怒られるよね？せめて部屋で呼ぶべきだよね？よし、戻ろ……戻れない……爺ヘルプ。

「爺ーーーー！爺ーーーー！」

　怒らないでね。

「何してるんですかノエル様！！」

　ほら怒った。そんな事より助けて～。