Ωの僕がお偉いさん

白いモフモフ

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イエイガー老2

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 僕はイエイガー老と2人で散歩にいった。といってもイエイガー老の車椅子を押す人もいたから3人だけどね。

「お前さんは面白い事をいくつも思いつく。こんな年寄りになってもう面白いことは無いと思ったが……知っているかね?私にも昔、愛したΩがいた。可哀想なあの子は私に出会った時はもうどうしようもなかったんだ。あの時、初めて世の中の理不尽について考えた。なぜΩはこうも軽視されるのか……なぜΩは存在するのか……。答えは今になってもわからん。しかし軽視するのは人なのだから意識を変えてやれば良いと思った。しかしいくらαがΩを大事だと叫んでもそれはαの番だからとしかとられなかった。

 しかし……お前さんが生まれた。αのような頭脳を発想を持ったΩ。……儂はお前さんが変装して過ごし始めた頃を知っているよ。まだ禄に走れもしない子が自分の将来を見定め、行く末を覚悟してその時のために備えるなどαでもできん。ましてや誰に相談してどのようにバレずに過ごすかなど考えもせんだろう…。それなのに人を信じる事も出来るね?
 お前さんは私の希望なんだよ。」

 明るい希望ができたものだと孫を見つめるように僕に言った。
 あのバカ者の事は儂等に任せて良いと言ってもらえたのでかなり安心したよ。しかも、もう手は打ってあるらしく今後の決定事項を教えてくれるという。……あ、決定なんですね。と僕が思うのも予想していたのだろう。「今後の決定事項を教えておこうかのぅ…決定じゃよ。そう、決定……変わる事はない事じゃよ。」と言っていた。

 今回の騒ぎはそもそも大きな思い違い……元サムスプリング領主がすでに貴族では無い事を自覚していない事が原因の為、自他共にわかるようにするという。今回の処罰として下されるものはあの男には相当な罰だろうと予測できた。

「今後、あ奴は表を歩く事ができんじゃろう。あ奴への罰は“腐刑”……αどころか男として終わりじゃ。その後は親友共々鉱山の下働きになるだろう。」

 ……死刑よりも残酷な刑が下された。“腐刑”とはαや男性を去勢するという刑だ。そのような体で鉱山の下働きに落とされてはおそらくは動けない体になるだろう。一番最近では僕が城から追い出された時に刺客を放った者等が下された罰だったと記憶する。この時ですら“腐刑”と鉱山の下働きへ送られるという罰は別々の者に下されていたはずだ。
 鉱山の下働きは何をされても問題視されないという人権そのものすら停止されているようだが、必要悪として黙認されている。

 僕が黙り込んでしまった事を察したイエイガー老は「甘さが次の罪を招く」と僕を叱った。
……確かにそうだ。あの前回の事件の時に厳しい罰を望んでおけば…正式な貴族位剥奪や幽閉に近い措置をとっておけば今回の親友と名乗る2人の罪は無かったかも知れない。
 そう思うとイエイガー老の厳しい罰も次の犯罪の芽を摘むという理由は尤もだと思う。
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