Ωの僕がお偉いさん

白いモフモフ

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サムスプリング……

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 ギュウーーーーッと抱きしめられては顔を見て笑いまたギュウーーーーッと抱きしめられる。無言ではあったけど、母様の気持ちが伝わってきたので大人しく気が済むのを待った。

「王妃、私も抱きしめたい……。」

 母様の次は父様だね……苦しい!ペフペフ叩いて苦しいと告げると少し力を緩めてくれた。
 一通り僕の無事を確認して安心した2人は一度着替えて来ると着がえに行った。

「……兄様、気づかないのですね。」

 魂が抜けたかのような顔をしたローランドがいたが、アーノルドと爺は平然としている。…何?どうしたの?どういうこと?

「ノエル様、王様と王妃様は捕らえられている犯人に向けて殺気を放っていらっしゃいました。一方でノエル様には慈愛の気で包んでいらっしゃいましたのでおわかりにはならなかったのかと。」

 ああ、なるほど~。Ωの僕はあまりそういうやりとりには敏感じゃ無いから爺が説明してくれた。アーノルドと爺は予測してたからガードしてたんだね?でもローランドは予測してなかったから直に受けちゃったと……。

「いいえ、父上母上がそういった気を放つかもとは思っていましたが……」

「自分達のもう1人の子供まで巻き込む気を放つとは思わなかった?」

 続けた僕の言葉に「はい」と言ってうなだれた。

 その殺気を向けられた犯人2人は今更ながら自分達が手を出した人間は本物のここの領主で、世の中で絶対に手を出してはいけない人だったと知った。

 青ざめた顔色でガタガタ震える2人は取り調べが始まると聞いてもいない事までペラペラと喋った。
 しかし、今度は取り調べをしていた兵士が青ざめる発言をしだした。

「……ホントだって、俺達は前のサムスプリング領の領主の親友だよ……ちょっと、親友を虐めたヤツに仕返ししてやろうと思っただけだ。」

「そうだよ。Ωの癖にαであるあいつを侮辱したんだから領民が自分のせいで苦しんだって思わせてやりたかっただけだし……、あ、俺らも貴族だから扱い方に気をつけた方が良いぞ。」

 強がりで言っていたうちはまだマシだったが、何故か段々と怖さを忘れたらしく態度も横柄はものに変わっていく。
 呆れ果てた見張りの内の1人が呟いた。

「虐めるもなにもΩにαが虐められたって……よく言えるよな?まぁ、うちの領主様じゃ並みの人じゃムリだ。普段はポケーとしてるのにやる事はα以上だからな。」

 その呟きを受けるように取り調べにあたっていた兵士が「報告……俺がするのか?」と絶望的な表情でまた呟いた。
 誰だって嫌だろう。自分達に向けられてなくても感じた殺気は逃げ出したくなるものだった。実際、成人したばかりの見習いが半泣きで出て行ったきりだ。この内容を報告すれば領主であり被害者でもある当人は困って無い表情で「ありゃ…困ったね~」と言うだろう。そしてあのαの中のα達から矢継ぎ早の質問やら指示が飛ぶのだ。

 ……マジで行きたくない。  そう思っていても誰も止められないし、ましてや報告を代わってくれる人もいやしない。
 覚悟を決めて報告へ向かった。
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