Ωの僕がお偉いさん

白いモフモフ

文字の大きさ
上 下
135 / 685

意外な助け手

しおりを挟む
 瓦礫、灌木、また瓦礫……とそれらに隠れながら用心して人気のありそうな方へ進んでいく。この辺りは開発区にしていて危険だから工事の人以外の出入りを禁止していたんだ。

 …おっ、開発区の境にしていた小川が出てきた。でももし橋の途中で見つかっちゃうと困るな。走れないし、もちろん川を徒歩で渡るのもダメ。

 そんなこんなで悩んでいると、釜を持ったおばちゃんが橋を渡って来る所だった。逃げるべきか本気で考えたが隠れたままで様子を見ることにした。
 おばちゃんは何かを探しているらしい…何か言ってる……「大丈夫ですよ!」何が大丈夫?「もう安心して!」鎌を構えたおばちゃんの何に安心出来るのか聞きたいよ。

「……様、どこに居ますか?」小声ながら叫んでる声は何かを心配している様子だ。

「ノエル様ー!」

!!今、ハッキリ「ノエル様」って言った!

「何処ですかー!」

 一瞬躊躇ったけどそっと出てみる。まだ距離はある。最悪誘拐犯の仲間でもおばちゃんなら振り切れると考えての行動だった。

「誰?」

僕の短い問いかけにおばちゃんはバッと振り向くとソッと寄って来て、爺と決めていた助け手を示す言葉「ポニ太の子はポニータ」と言った。

 !!本物の助け手だ!!

「ああああ!良かった!ノエル様!本当にノエル様だわ!ああ良かった!」

 知らないおばちゃんだけど、本当に心配していてくれたらしくすごい喜び様だ。ギュウーっと抱きしめられてその力強さに安心してきた。

「さぁさ!お早く!この先に家のお爺ちゃんも探しに来てるんですよ?もう大丈夫です!街中でノエル様を探してるんですよ。」

 手を引かれて橋のところまで来ると、橋の向こうからお爺ちゃんが1人走ってきた。ギョッとする僕とは反対におばちゃんは「あれが家のお爺ちゃんですよ。」と平然と教えてくれた。
 ……ありがたいけど、長い包丁持っての走って出迎えは遠慮したいよ?

「ああ、ノエル様だー。良かった良かった!」

 さすがにお爺さんは抱きついて来なかったけどやっぱりホッとした顔になって喜んでくれた。

「さぁ!儂が来たかにはもう安心していいぞい!
あっちにイッチも来とる。イッチは足が早いから直ぐに館のお人が来てくれますぞい!」

 何の職人さんなんだろう、ゴツゴツした大きな手のお爺さんは僕の頭を撫でながら「よぅ頑張りなさった。」と褒めてくれた。そして僕とおばちゃんの少し前を警戒しながら歩き始めた。
 その後ろ姿はもし犯人が現れたら俺が止めてやるっと言ってる様ですごく格好良かった。

 通りに出る前に僕とおばちゃんを後ろに隠し、確認したお爺さんは途端に緊張を解いた。

「おおおーい!イッチー。ここじゃここじゃー!
区長も!」

 腕をブンブンと振ってイッチさんとやらを呼ぶ。他にも人が居たようだ。

「居なすったかー!」
「良かった良かった!」
「よぅ頑張った!」

 次々と人が集まってきて僕を揉みくちゃに撫でる。涙を浮かべている人も居て皆に心配させてしまったと反省した。

「今、爺やさん呼びに人をやりましたからもう大丈夫ですよ。」

 区長と呼ばれてる人の家にお邪魔してホットミルクをもらっている。熱々のミルクが体に沁みる~。
 どうやら本当に街中で探していてくれていたらしく僕を見に色々な人が来て帰って行った。
 ホットミルクを飲み終わる頃、物凄い音と供にアーノルドと爺が飛び込んできた。






しおりを挟む
感想 194

あなたにおすすめの小説

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜

紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。 ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。 そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ユウ
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています

ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた 魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。 そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。 だがその騎士にも秘密があった―――。 その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

処理中です...