Ωの僕がお偉いさん

脱出方法

　天井からは丈夫そうなフックが突き出している。多分シャンデリアのように灯りを吊り下げる為のフックだろう。それが3つか……手元に長い長いロープがある。

　とりあえず外を見よう。
…………ここ、高いな。3階分くらいの高さがある。窓は僕ならギリギリ通れる大きさで問題無いから今までの僕なら躊躇無く行くよ？でも今は妊娠中…もし落ちたら？命はあっても赤ちゃんがムリだよね。

　バリケードの向こう側の気配は……なんだろうまさかの酔っ払い？「前祝だ！」「飲め飲め！」と大声で喚いてる。本当に残念なαだよ。まぁ、僕にとっては都合がいいから良いけどね～。

　窓は普通に開いたしロープもある。窓から助けを呼べばって？人気が全く無いんだよ。
　内ポケットの呼び笛を出して、鳥を呼ぶ。何の鳥か？速達用の隼だよ。
　あ、来た来た……来すぎ！！いったいどれだけ来るの！もはや恐怖の数が集まりつつある。15羽くらいだけど大きさと迫力で怖いよ！

　あ、でもコレって爺が絶対見つけてくれる。隼はこの笛で決まったフレーズでしか呼べないから、目印になるね。でも街に出た誘拐犯にもバレるね～。
　一難去ってまた一難……なんてのんびりしてないで脱出しないと！

　長いロープを天井のフックとバリケードのテーブルの足、また天井のフックとかけていく。それの端っこを八の字にして…ぼくの肩に通して、簡易の命綱の出来上がり～。お腹に負担をかけたくないから肩がいいよね？

　反対側の端っこをもって窓を潜る。

「おい！開けろ！開けねぇか！」

ドアをガンガンと蹴る音だろうか…入って来ようとしてるよ！放っておいてくれるんじゃなかったの？！
入られたらピンチだ。急いで窓を潜って、外に出る下は荒れ地…瓦礫もある。慎重にロープを緩めては外壁の凹凸を伝って降りる。

　2階まで降りれたとき、騒がしさが大きくなった鍵を開けられてバリケードが突破されようとしているのはすぐにわかった。
　降りるスピードをあげる…指がケガだらけだけど気にしてられない！

　なんとか降りきってロープをとく。改めて見渡すと此処が何処なのかがわかった。浚われた場所からさほど離れていない元下級貴族の館だ。でもここは書類上もう建物は無いはずだ。僕が決済の判子を押したから間違いない。この建物を取り壊すにはちょっとお金かかりすぎと指摘したらこの敷地内2つの建物を取り壊すという事と、請負者の証言を確認してＯＫにした。

　何かあるなと思ったけど今は逃げるのが優先！！
隼は相変わらず僕を中心に旋回して飛んだり高い位置に止まってる。もし誘拐犯が追いついてきたら隼君達をけしかけてやる！

　ダッシュしたいとこだけどしちゃいけないし、絶対焦って転けるから早足で移動開始！
　焦らず、冷静に、なるべく隠れやすいところ移動しよう。

　ん？待てよ？この僕の動きって予想される動きだよね……“助けが来るまで動くな”という爺の教えもあるし、ここは僕らしく予想外の行動をしてみよう！