Ωの僕がお偉いさん

白いモフモフ

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飛び回る爺

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 爺は走った。いつもの爺では有り得ない事だからすれ違う者が皆心配し始める。

「今のは爺やさん?」
「そうみたいね…何があったのかしら?」
「爺やさんが走るなんて…おかしいわ。侍従長に報告しないと!」

 各仕事の長に報告がされる。その報告がどれも「爺やさんが走るなんて何か大変な事が起こってるに違いない!」というものだった。
 ベテランの者達は過去一度だけ爺が走った事を思い出した。「ノエル様が襲われた時だ…」1人がポロッと洩らした言葉に戦慄が走った。

 爺が走り去ったという洗濯場へ皆が行くと、ノエルの部屋から集められた籠を漁っている。

「爺やさん、どうなさったのですか!?何かありましたか?」

 執事のみならず1人が声をかけると、爺から指示が飛んだ。

「こちらのノエル様が使われた巣材で汚れのない物を戻します!なるべく私達の匂いが移らないように全員手袋をしなさい。手早く!」

 意味は分からないながらも爺の様子にその場にいた全員が作業にかかる。執事は皆手袋を持っているのでそれを使う。侍女や侍従は手分けして手袋を取りに行ったり運ぶための籠を用意したりと慌ただしく動いた。

 汚れてない物を集めるとまた慌ただしくノエルの部屋に向かって走り出す。
 皆の心の中の声は(……確かあの人、この館の中で最年長の筈。)だった。

 持って帰って来た洗濯物を受けとり、自分だけが部屋に入り他はいつもの仕事に戻るように指示を出す。ついでアーノルドの部屋に走り旅用の鞄を中身ごとノエルの部屋に移動させた。

「ノエル様、少し落ち着かれましたか?」

 執務室のドアをノックして開けると、いつも通りガンガン仕事をしているノエルがいた。
 ただ、場所がおかしい……アーノルドに抱えていろとは言ったが、膝の上で仕事をさせろとは言ってないはずだ。

「あ、爺さっきはごめんね?びっくりしたらあんなになっちゃったみたい。もう落ち着いたから大丈夫だよ。」

 まぁノエルが誰かの膝の上にいるのは昔から見慣れた光景ではある。アーノルドもちょっと仕事しにくそうだが嫌がっていないので爺も見なかった事にした。

 ノエルに巣材を回収してきたことを伝え、侍女達の教育が行き届いていなかった事を詫びた。

「うん、もういいよ。爺が回収してきてくれたの?ありがとう!」

 「ちょっと行ってくる」と言うとすぐに執務室を出て行ってしまった。おそらく新たに巣を作るのだと思い2人で見送る。……と、すぐに戻ってきた。
 手にシャツを持っている…アーノルドの着ているシャツを脱がして持ってきたシャツを着せて…出て行った。

「……なんだ?今のは??」

 爺は確信を持って話はじめた。

「アーノルド様、おそらくこれからノエル様らしからぬ行動があるかも知れませんが暫くは我慢なさって下さい。」

「……ノエルらしからぬとは言ってもノエルが訳のわからない行動するのはいつもの事だ。トロッコや汽車の設計の時だってノエルは“設計が得意なαを紹介して”としか言わなかったぞ。」

 爺は正確に覚えている。“設計が得意なαをして”ではない。最初は“ねぇ、αが欲しい”だったはずだ。
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