Ωの僕がお偉いさん

白いモフモフ

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悩む爺

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 僕は涙が止まらないし、部屋を片付けていた人達は皆オロオロするしでなんか収集がつかない。
まずは僕が泣き止むべきなんだけど、何故か無理みたい。

「ノエル様、如何なさいました!」

 誰かに呼びに来られたのだろう、慌てた様子の爺が僕の座ってるソファーの前でしゃがみ、視線をはじめとする合わせる。

「どうなさったのですか?無事、発情期は終わられたのですよ?お体が辛いのですか?」

 小さい子に聞くように優しい声で訳を聞き出そうとする。
 「あの…」と侍女さんの1人が僕がお風呂にいる間に巣を取り払ってしまったと話し始めた。
 ……爺の雰囲気が怖い。何だろう…寒々しいって感じなの。

「ノエル様、巣が必要ですか?それとも悲しかったのですか?」

「…ズビッ……かなしい……」

 ヒグッヒグッとしゃくりあげながら答えた。汚くてゴメン。
 爺がハンカチを取り出して涙を拭いてくれる。なんか本当に小さい子みたいだ…。

「アーノルド様、ノエル様を抱えていてください。おそらくそれで落ち着かれるでしょう。
……発情期というのは非常にデリケートなものです。Ωであるノエル様にとっては精神的にもお疲れですからいきなり環境を代えるのは良くないのでしょう。
 ここまで片付けてしまいましたが、どうなさいますか?」

 巣は陰も形も無いし、ベッドはすっかり綺麗になってるし、窓は開いて空気の入れ替えすんでるし……今更止めてもらってもアーノルドの匂い一つ残って無いから続けていいよ。
 ブスッと膨れたままアーノルドに抱えられて執務室に引っ込んだ。


 ノエルの様子に爺は首を傾げる。
確かにΩにとって巣はとても大事な物だ。無闇に他人が巣に立ち入ってはいけないし、ましてや片づけるなど有り得ない。
 しかし、ノエルの巣は清潔なシーツとタオル、一部アーノルドの部屋の物もあったが、Ωの巣に使われるので有名な番の下着類や洋服が無いのだ。
 だが、アーノルドの愛用のパジャマが巣材の物と一緒になくなっている。侍女達の噂話ではノエルが身につけていると言っていた。

(……ノエル様は巣に何を求めていらした?本来は自分の求める番の匂いで安心するために巣を作る。…だがノエル様は今まで普通のΩの行動だった事はない。
……普通ではない巣の意味は??)

 そして思い出した。アーノルドの父、デジレの事を。珍しいくらい狼狽して怯えて泣いてた。

(……あの事が原因ですか。なら巣の意味は単なる“目隠し”という所…それなら巣材の意味もわかる。愛用のパジャマは、一応アーノルド様の物を使うことで巣らしく体裁を整えようとして向かった部屋で匂いにつられて持ち出した…というところでしょうか?)

 考えがまとまってくるが現在の状況を見ると今一つ違うようだ。先程のノエルは軽いショック状態で泣き続けている様子だった。

(発情期が終わられた後の方が…本来の巣の在り方に近い存在となった?)


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