Ωの僕がお偉いさん

用意は万端？

　アーノルド到着まで後1日。
一日千秋の思いとはこういう事なんだろうか？
爺はもう知っている。侍女さん達も多分気づいているけど変わらない。でも一昨日から爺や他の何人かは領主館から消えている。

　……そう、とうとう僕にも発情期が来るようです。
1週間前から体がほんのり熱いような気がしていたんだけど、気がつくとアーノルドを探していてアーノルドの私物を手元に置いていた。
　「ああ、とうとう来るんな」とわかったので自分の部屋に沢山のタオル、シーツ、非常食用の果物を用意するように爺に頼んだ。

　爺はハッとして僕の手首から脈をとったり、「失礼します」と断ってから首筋の匂いを嗅いで少し悩んでたけど「総てお任せを」と引き受けてくれた。
　爺の任せろという言葉には魔法のように安心感があるのは今までの信頼からだろうね……余計な事はしないよね？

…………不安になってきた。だって僕は知ってる。アーノルドのお父さん、元大臣は初夜を監視された！
僕の時はそんな事しないと言ってくれたけど、国と国が関わる結婚じゃ無いけど！一番大きな交易都市の領主と王族の領主だし……。

　いやいや、あの父様と母様は僕の嫌がる事はしないから大丈夫！…いや、心配のあまり何でも知りたがるから可能性大だ。
　そう！そうだよ！僕が嫌がって拒否したり痛がったりしたら即引き剥がす為に監視を寄越しそうだ！

……でも、アーノルドとあんな事やこんな事をしてるのはもう父様も察してる？前に初めてアーノルドに教えられた次の日に「色が付いた」って言われちゃってるから…わかってるんだとしたら今更？
　ん?でも、その…あれは……最後まではしてないし。いや、2人以外は最後まではしてないなんてわからないから……ああ！もう！訳わかんない！

　絶対に見られないようにすれば問題ないんだ！
そうだよ！よしっ、そうと決まれば善は急げ！

　話によると監視は色々と下働きしながら気配を殺しているらしい。ポイントは下働きしながらっていう点だと思う。つまりは覗けない状況を作れば良いんだよ。
　幸い?僕はΩだ…Ωは発情期と妊娠中に巣を作る事もあると知られている。巣はどんな事があろうと、生存にすら拘わってくると知られているから絶対に壊されない。フフフフフ。

　巣の場所は…僕のベッドルームで少し大きめにベッドを囲ってしまおう。材料は爺に揃えてもらってるタオルにシーツ。アーノルドの部屋の物も使った方がそれらしく見えるよね？
　
　急いで上のアーノルドの部屋へ向かい入ると、思っていた以上にアーノルドの匂いがする。
　ついニヘラッと顔が緩むのを感じて引き締める。アレもコレもと物色してるとアーノルドのパジャマとか出てきた。着てないでしょうコレ。でも濃紺のシルクパジャマ格好いいな～……貰っちゃおう！
　今日はコレ着て寝よう～。

　持ち帰ったアーノルドの部屋の物も使い巣を作り始めた。天蓋の柱に釘を刺してシーツに紐を縫い付けてひっかけていく。これを何重にもして外からは窺い知れないように…。シーツとシーツの隙間が出来ない様に縫い合わせて出入り口の1カ所のみ開けておいて、そこも閉じれば隙間が出来ないようにあわせ部分を両手広げた分くらいとった。