Ωの僕がお偉いさん

王都からの使者

・・・名もない一侍従の話。

　この国の王は優秀なαで人柄も最高だと国民が誇る。仕えてる侍従や近衛も、時々行方不明になって焦らされるけど行き先の検討はつくし、王の身体能力は半端ないものなので実はあまり焦ってない。

　だけど、1つだけ皆が気をつけている事がある。それはスサエナの領主となっている王の長男を哀しませない事。
　それだけは本当に気をつけている。いや、普通にちょっと悲しい…くらいなら別に何も無いが、ノエル様が落胆すると王は変わられる。

　なぜノエル様が落胆しているのかを調べ、原因を排除なさろうとする。それをうまくコントロールして大事にしないようにしているのが王妃だ。
　このご夫妻はじつに良いバランスを保っておられる。まぁ、一度だけコントロール不能で国の大臣が隣国に嫁にやられるという事態になったが…。

　そして今回、その時と同じくらいの事態が予想される事がおきた。ノエル様が訴えられたのだ。

　スサエナに戻られる途中、サムスプリングの領主から宣戦布告のような訴えをおこすと脅された。この内容も内容だが私達総ての臣が呆れ果てたのは王が素顔をさらして至近距離にいるのに気づいていなかったらしいという事だ。
　あの目立つα…コホン。威厳の塊のような王が目に写らないはずがない。しかも護衛兵と言われたと聞いた。有り得んだろう……。

　そしてそんな恐ろしい暴言のあった夕方、私達は勅命を受けた【サムスプリング領の領主に関する事総て調べ上げろ。特にこの5年以内の事は詳細に。】

　いつも王の影として行動している1人が影らしからぬ慌てようで飛び込んで来た。王の怒り様がただならぬと言われ城の人間総てで情報収集となった。


……調べれば調べるだけ報告が恐ろしい。
そんな内容しか出て来ない。現当主の前から不正は有ったようだがここ数年あまりにも酷い。
　そして今私達が悩んでいる報告がある。サムスプリング領の元貴族からの情報で証人も複数あるため偽証ではないだろう内容は、“Ω奴隷計画”。
……まず報告した者が怒りのオーラを浴びて失神するだろう。

　そしてその犠牲者ともいえる役目は誰もが押しつけあい、ジャンケン大会となり…私になった。

　今、まさに緊張の瞬間だ。この領主館の扉を叩き王へこの報告を……行きたくない。いや、βである私はそんなに影響無いはずだ！大丈夫！
よし！！ノエル様を探そう！

｢何をしておる、早く扉を開けよ。」

　ビクッ！！として後ろを振り返ると、いきなりの登場…王だ。

｢おぅ　お、お、王都よりぃ…ごぅ報告ぅお……」

｢落ち着きなさい。王都からの報告なのだな？
　ああ。爺ちょうど良い所に。皆を集めよ詳しい報告が届いたようだ。この者を連れてまいれ。」

　してはいけない悪戯をしてバレた事が有るだろう？バレた時、ひどく冷や汗をかくだろう？その時より倍の冷や汗が私の背を流れている。

　王は気さくに｢私と対面するのは初めてか？なに、そんなに緊張する事は無い。」なんて言われてるが
豹変するそれが怖いのです。