Ωの僕がお偉いさん

白いモフモフ

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異例の婚姻*

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 デジレ様は顔色も声も失ってようやく立っているような有様だった。

 にこやかにめでたい事だと笑い海軍提督に何かを促す王とそれを受けてデジレ様の前に進み出る海軍提督はそこだけ見れば王と海軍提督はとても良い主従のようだ。

「婚姻の許可が降りた!これによりデジレ殿を我が妻に迎え入れる!異議のある者はこの場で申されよ!」

響き渡る声に異論を唱える人なんていない。
 え?求婚はどうしたの?なんて思ったとしても
その迫力に圧倒されてしまい何の反応もできなかった。

「明後日には帰国の途につきます故、本日はこれにて御前を失礼致します!」

王が頷き、「首尾良く運べ」とだけ言うと海軍提督は身を翻してデジレ様の側に来た。

「すべて我に任されよ。悪いようにはせぬ!」

とだけ言うと、デジレ様を横抱きにして連れて行ってしまった。
……僕達?ポケーっと見てるだけだった。
迫力が違うんだよ。



 城の近衛が正面扉を開けると凄く意外な物を見た。何故か隣国の海軍提督がこの国の大臣を大事そうに抱えている。
 海軍提督の顔は、その顔に似合わず満足そうに笑い、大臣は魂が抜けたようになっている。
 扉の所にいた近衛は有り得ない2人を見ると顔に出さずに困惑した。この状況で顔に出さなかったのは流石に近衛兵だということだろう。

 客室へ続く廊下にいた近衛も困惑した。
ズシンズシンという効果音が似合う体躯の海軍提督の腕の中に大臣が収まっている。もしや大臣に何かあり、海軍提督が手を貸しているのかと思ったが海軍提督の後ろにいる側仕えとの会話で声をかけるのを止めた。

「シーツは代えてあるか?クッションは?デジレ殿は経験がなかろうからローションが必要だぞ!香の用意も忘れるな?」

驚きはしたが表情には出さなかった。その内心はえ?え?えええ?となっていたが一切表情は動いていない。流石に…(以下同文)

 海軍提督の客室の扉を守っていた近衛は目を疑った。フッフッフと機嫌よく帰ってきた客人は大事そうに腕の中の何かを撫でているようだ。頭を下げて扉を開けた時、この国の大臣だったような気がしたし、デジレ殿と聞いた気がしたが平静を保った。

 この夜の当番に当たった近衛の報告書を読んだ近衛隊長は こいつ等よく何の反応も面に出さなかったな… というのが正直な感想だった。


 客室担当の側仕えは激しく動揺していた。
客人は隣国の海軍提督様。その海軍提督の側仕えに頼まれた物は替えのシーツ、数枚のタオル、リラックスの香、ローション、クッション等だ。何に使うなど聞く迄もない物ばかり。

 客室担当はいらない気を利かせた。頼まれた物の他に数種類のお道具を用意したのだ。ムードも大事だろうと灯りを絞り、お酒と花も用意した。
…どこかで可愛らしい小姓でも見つけたのだろうと思い込んで、少しでもあの巨体のお客様を小姓が満足させられるようにと気を使ったのだ。

 バタンと音をたてて入って来た客人に連れられた人を見て客室担当は真っ青になった。
真っ青になりつつも「御用がなければこれにて下がらせていただきます。」と言えたのはベテラン側仕えだったからだ。

 しかし、そのベテランなのが悪かった。海軍提督から「側に控えよ」と言われてしまったのだ。


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