夢は果てしなく

白いモフモフ

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ある意味すごい

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 もらった書類の山に目を通していると自分達の考え方の違いに目が回る。どうやら『貴族足る者、こうあるべき!』という根本的な処から違うらしい。
 ……いや、知っていたけど。でもここまで違うとは思っていなかった。というか…思いたくはなかった。自分は貴族の事なんて知らなかったけど、ガブリエルと友達になりガブリエルから少しだけ『貴族とは……』を学べたつもりだ。そしてここでの生活でガブリエルの言っていた意味を理解しつつある。だからこそこの書類の山に頭を抱えた。

「大丈夫ですか?」

 そっとコーネフが聞いてくる。この少し後にエルバルドの様子を見ることになっているから迎えに来ると言っていたのを思い出した。

「大丈夫です。もう時間ですね。」

 椅子から立ち上がりコート代わりの羽織りに腕を通した。エルバルドが『保護』されている場所は病院のような牢に移されたらしくそこに向かう。

「エルバルドは大罪を犯しましたが幼少期からの育ちかたから問題があった為、更正を目指し再教育の目的で移されております。」

 僕はひとまずほっとした。エルバルドが連れていかれて直ぐの報告では事実確認後すぐにでも罰があたえられそうだったため、情状酌量の余地はないかと聞いてみたのだ。だって僕はあの異常な正妻の考え方を知っているから。エルバルドがその影響を受けて育ったのも知っているから。……エルバルドはまだ治せると思った。

「ご希望の面会はできません。ですがあちら側からは見えない場所から見る事ができます。声も聞こえますが、貴方のお言葉は代わりの者の口から伝えられます。……ショックを受けられるとわかっているのに何故行かれるのですか。」

 付き添って馬車に乗り込むコーネフがなんとか僕を引き留めようとする。それに対して僕は「馴れてるから大丈夫だよ。」とだけ返した。



 部屋のなかがひどい有り様だ。テーブルクロスは大きくずれて垂れ下がり上のコップは倒れて辺りは水浸し。テーブルクロスの色が所々黄色いのは卵料理の残骸と思われる。ドアの近くにパンが2つ落ちているし、ドアに向かって投げたらしくシチューがこびりついている。
 そのテーブルに向かって不機嫌丸出しのエルバルドが行儀悪く足を組み自分の綺麗に手入れした爪を眺めている。部屋の中にはもう1人いてその人が話しているようだが気に止める様子もない。

「……貴方とルカ様の血縁関係は意味が無いのですと何度も言っているでしょう。ここ後宮に入った時点で関係は一度断たれると説明を受けたはずです。正式な妃となるか一定の年月が過ぎるまで世俗から離れるのです。ましてや貴方のお家は離縁状を渡し追い出したということは調べがついています。それなのによくも兄弟だなどと言えますね?恥を知りなさい!」

 僕にとってはとても感情が揺さぶられるこの言葉にもエルバルドはちらりと目を向けて『…で?』と返しただけだった。
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