夢は果てしなく

白いモフモフ

文字の大きさ
上 下
12 / 17

手紙

しおりを挟む
『15年という長い間育ててやった恩を忘れた恥知らずを反省しなさい。何の役にもたたないお前に私達は住む場所も食事も、衣類も与えた。お前は私達の善意に敬意を込めて示すべきだ。まずは尊敬すべき兄のエルバルドにそれを示しなさい。このような事を教えられなければ出来ないお前はは非常に情けない、思い遣りの無い子供だ。エルバルドに詫びて教えを請いなさい。』

 途中で読むのをやめれば良いのに、それもできず最後まで読んでしまう。体から血の気が引いていくのが自分でもわかる。
 ふらついた僕の手からガブリエルが手紙をとって読み、「あんまりだ」と呟いた。リアンがガブリエルから手紙を受け取って読むと、「頭おかしんじゃ無いの?」と言って自分のポケットに入れてしまった。

 僕はこの2人には育った境遇を話してある。家を追い出された時の離縁状も見せていたので全てを知っているのだ。2人に慰められて落ち着くと、本妻の言ってる事の方がおかしいと解る。そうやっていると次々とおかしいと点が出てくる。

「そもそも、この本妻おばさんどうやってルカが選ばれた事を知ってるの?選ばれたとか女官になるとかいう知らせは家族宛に出されるけど、後宮から決まった文言で出されるだけだよね?」

 ……確かにそうだ。リアンの質問に考える。
 僕はここに来た日にマーガレットから何処の誰宛に知らせを送るかと聞かれて、家族も友人もいないから誰にも知らせる必要はないと言った。そして、知らされるとしても文言は決まっており、『◯◯家の第◯子の◯◯は後宮入りとなった事を知らせる』というものだ。だから誰が推薦者になったか、女官になるのかなんて知らない筈なのだ。いや、もしかしたらガブリエルの家のように大将軍とかの地位にいる人なら知るかもしれないがコントワール家は特にお役目を持っている訳でもないしがない田舎男爵家だ。

「そんなの、このエルバルドっていう奴が知らせたんでしょ。出入りの商人にお金握らせて、手紙を渡してもらってるんだよ。」

 ガブリエルからあっさりと答えが出た。

「やっぱり?でも、その商人、よくやるね。見つかったら出入り禁止だけじゃすまないよ。よくて廃業。最悪だと廃業の上に罪人として捕まっちゃうのにね。」

 さらりと言った言葉に思わず「え?」と声がもれる。

「ほら、僕の家も商人じゃない?だからこの手の話しはよく聞いてたんだ。ただ“自分で親に喜びを知らせたかったから”とかの理由なら最初の1回限りはご注意で終るという事もあるらしいけど、こうやって推薦者に脅しをかけるような物は……ねぇ?」

 とガブリエルと頷きあっている。
この手紙の件はどうやら大事になりそうだ。どうしたら良いのだろうかと考えた僕は結局、忘れる事に決めた。内容には驚いたし傷ついたけど、この先エルバルドとは会わないようにして手紙はマーガレットか執事のコーネフが確認してからにしてもらえば済むだろう。僕はやっと訪れた落ち着いた日々を無くしたくないのだ。
 ガブリエルもリアンも僕のこの日々のためならとこの事は忘れてくれると言ったのだけれど……そんなに甘くはなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔王様の瘴気を払った俺、何だかんだ愛されてます。

柴傘
BL
ごく普通の高校生東雲 叶太(しののめ かなた)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。 そこで初めて出会った大型の狼の獣に助けられ、その獣の瘴気を無意識に払ってしまう。 すると突然獣は大柄な男性へと姿を変え、この世界の魔王オリオンだと名乗る。そしてそのまま、叶太は魔王城へと連れて行かれてしまった。 「カナタ、君を私の伴侶として迎えたい」 そう真摯に告白する魔王の姿に、不覚にもときめいてしまい…。 魔王×高校生、ド天然攻め×絆され受け。 甘々ハピエン。

この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~

乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。 【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】 エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。 転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。 エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。 死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。 「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」 「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」 全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。 闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。 本編ド健全です。すみません。 ※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。 ※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。 ※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】 ※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

フードコートの天使

美浪
BL
西山暁には本気の片思いをして告白をする事も出来ずに音信不通になってしまった相手がいる。 あれから5年。 大手ファストフードチェーン店SSSバーガーに就職した。今は店長でブルーローズショッピングモール店に勤務中。 そんなある日・・・。あの日の君がフードコートに居た。 それは間違いなく俺の大好きで忘れられないジュンだった。 ・・・・・・・・・・・・ 大濠純、食品会社勤務。 5年前に犯した過ちから自ら疎遠にしてしまった片思いの相手。 ずっと忘れない人。アキラさん。 左遷先はブルーローズショッピングモール。そこに彼は居た。 まだ怒っているかもしれない彼に俺は意を決して挨拶をした・・・。 ・・・・・・・・・・・・ 両片思いを2人の視点でそれぞれ展開して行こうと思っています。

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について

はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

そういった理由で彼は問題児になりました

まめ
BL
非王道生徒会をリコールされた元生徒会長が、それでも楽しく学校生活を過ごす話。

神獣様の森にて。

しゅ
BL
どこ、ここ.......? 俺は橋本 俊。 残業終わり、会社のエレベーターに乗ったはずだった。 そう。そのはずである。 いつもの日常から、急に非日常になり、日常に変わる、そんなお話。 7話完結。完結後、別のペアの話を更新致します。

処理中です...