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手紙
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『15年という長い間育ててやった恩を忘れた恥知らずを反省しなさい。何の役にもたたないお前に私達は住む場所も食事も、衣類も与えた。お前は私達の善意に敬意を込めて示すべきだ。まずは尊敬すべき兄のエルバルドにそれを示しなさい。このような事を教えられなければ出来ないお前はは非常に情けない、思い遣りの無い子供だ。エルバルドに詫びて教えを請いなさい。』
途中で読むのをやめれば良いのに、それもできず最後まで読んでしまう。体から血の気が引いていくのが自分でもわかる。
ふらついた僕の手からガブリエルが手紙をとって読み、「あんまりだ」と呟いた。リアンがガブリエルから手紙を受け取って読むと、「頭おかしんじゃ無いの?」と言って自分のポケットに入れてしまった。
僕はこの2人には育った境遇を話してある。家を追い出された時の離縁状も見せていたので全てを知っているのだ。2人に慰められて落ち着くと、本妻の言ってる事の方がおかしいと解る。そうやっていると次々とおかしいと点が出てくる。
「そもそも、この本妻おばさんどうやってルカが選ばれた事を知ってるの?選ばれたとか女官になるとかいう知らせは家族宛に出されるけど、後宮から決まった文言で出されるだけだよね?」
……確かにそうだ。リアンの質問に考える。
僕はここに来た日にマーガレットから何処の誰宛に知らせを送るかと聞かれて、家族も友人もいないから誰にも知らせる必要はないと言った。そして、知らされるとしても文言は決まっており、『◯◯家の第◯子の◯◯は後宮入りとなった事を知らせる』というものだ。だから誰が推薦者になったか、女官になるのかなんて知らない筈なのだ。いや、もしかしたらガブリエルの家のように大将軍とかの地位にいる人なら知るかもしれないがコントワール家は特にお役目を持っている訳でもないしがない田舎男爵家だ。
「そんなの、このエルバルドっていう奴が知らせたんでしょ。出入りの商人にお金握らせて、手紙を渡してもらってるんだよ。」
ガブリエルからあっさりと答えが出た。
「やっぱり?でも、その商人、よくやるね。見つかったら出入り禁止だけじゃすまないよ。よくて廃業。最悪だと廃業の上に罪人として捕まっちゃうのにね。」
さらりと言った言葉に思わず「え?」と声がもれる。
「ほら、僕の家も商人じゃない?だからこの手の話しはよく聞いてたんだ。ただ“自分で親に喜びを知らせたかったから”とかの理由なら最初の1回限りはご注意で終るという事もあるらしいけど、こうやって推薦者に脅しをかけるような物は……ねぇ?」
とガブリエルと頷きあっている。
この手紙の件はどうやら大事になりそうだ。どうしたら良いのだろうかと考えた僕は結局、忘れる事に決めた。内容には驚いたし傷ついたけど、この先エルバルドとは会わないようにして手紙はマーガレットか執事のコーネフが確認してからにしてもらえば済むだろう。僕はやっと訪れた落ち着いた日々を無くしたくないのだ。
ガブリエルもリアンも僕のこの日々のためならとこの事は忘れてくれると言ったのだけれど……そんなに甘くはなかった。
途中で読むのをやめれば良いのに、それもできず最後まで読んでしまう。体から血の気が引いていくのが自分でもわかる。
ふらついた僕の手からガブリエルが手紙をとって読み、「あんまりだ」と呟いた。リアンがガブリエルから手紙を受け取って読むと、「頭おかしんじゃ無いの?」と言って自分のポケットに入れてしまった。
僕はこの2人には育った境遇を話してある。家を追い出された時の離縁状も見せていたので全てを知っているのだ。2人に慰められて落ち着くと、本妻の言ってる事の方がおかしいと解る。そうやっていると次々とおかしいと点が出てくる。
「そもそも、この本妻おばさんどうやってルカが選ばれた事を知ってるの?選ばれたとか女官になるとかいう知らせは家族宛に出されるけど、後宮から決まった文言で出されるだけだよね?」
……確かにそうだ。リアンの質問に考える。
僕はここに来た日にマーガレットから何処の誰宛に知らせを送るかと聞かれて、家族も友人もいないから誰にも知らせる必要はないと言った。そして、知らされるとしても文言は決まっており、『◯◯家の第◯子の◯◯は後宮入りとなった事を知らせる』というものだ。だから誰が推薦者になったか、女官になるのかなんて知らない筈なのだ。いや、もしかしたらガブリエルの家のように大将軍とかの地位にいる人なら知るかもしれないがコントワール家は特にお役目を持っている訳でもないしがない田舎男爵家だ。
「そんなの、このエルバルドっていう奴が知らせたんでしょ。出入りの商人にお金握らせて、手紙を渡してもらってるんだよ。」
ガブリエルからあっさりと答えが出た。
「やっぱり?でも、その商人、よくやるね。見つかったら出入り禁止だけじゃすまないよ。よくて廃業。最悪だと廃業の上に罪人として捕まっちゃうのにね。」
さらりと言った言葉に思わず「え?」と声がもれる。
「ほら、僕の家も商人じゃない?だからこの手の話しはよく聞いてたんだ。ただ“自分で親に喜びを知らせたかったから”とかの理由なら最初の1回限りはご注意で終るという事もあるらしいけど、こうやって推薦者に脅しをかけるような物は……ねぇ?」
とガブリエルと頷きあっている。
この手紙の件はどうやら大事になりそうだ。どうしたら良いのだろうかと考えた僕は結局、忘れる事に決めた。内容には驚いたし傷ついたけど、この先エルバルドとは会わないようにして手紙はマーガレットか執事のコーネフが確認してからにしてもらえば済むだろう。僕はやっと訪れた落ち着いた日々を無くしたくないのだ。
ガブリエルもリアンも僕のこの日々のためならとこの事は忘れてくれると言ったのだけれど……そんなに甘くはなかった。
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