夢は果てしなく

白いモフモフ

文字の大きさ
上 下
4 / 17

再会

しおりを挟む
 僕の顔色が悪くなったのだろう、回りの皆が心配して声をかけてくれる。でも、それが悪い結果を招いた。

「……なんと、そこにいるのは家の召し使いじゃないか!」

 わざと大声を張り上げて近づいて来る。芝居がかった仕草で尊大に、いつものようになじり始めた。

「なぜお前等がこの場にいる!ここはお前のような卑しい者が居て良い所では無いのに!大方、ただで飲み食いが出来るからとこれ幸いに申し込んだのだろう!条件が当てはまったからといって図々しい事この上ない!恥を知れ!この私生児めっ!」

 2列目にいた為、無事だったがこれが1列目だったら椅子から引き摺り降ろされ、足で踏まれていただろう。今、周りの子が震える僕を抱き締めてくれているから耐えられているが、つい土下座して許しを請わなければと思ってしまう。
 僕がいつものようにしないのに腹をたてたのか掴み出そうと手を伸ばした時、後ろにいた子がその手を止めてくれた。

「失礼ですが、規則をお忘れですか?規則では生い立ちで虐げる事を禁止しているはずですよ?貴方がどちらのご出身かは存じませんが、そのように声を荒げてはお里が知れますよ。」

 僕を安心させるように手を肩に置いて宥めてくれる。正妻の長男に向かって止めるようにと言ってくれたが自分より大きな人に向かって言うのはその子も怖かったろう。その様子に周りの子も「大丈夫だよ」「心配無いよ」と言ってくれたおかげで僕の震えも段々落ち着いてきた。
 その頃になると会場の案内に回っていた人達が気付き、来てくれたおかげで正妻の長男は席に戻っていった。

「大丈夫?酷い扱い受けてたの?……ここは大丈夫だと思ったんだけどね。」

 最初に仲良くなったリアンが声をかけてくれる。リアンもあまり大事にされなかったがここまで酷い言い方はないよと慰めてくれる。
 そうこうしているうちに騒ぎがあったのにも関わらずこの白色の席は全部が埋まった。

「白色、揃いましたね。では、白色の方は隣の部屋よりご自分にあったドレスを選び、着替えて来てください。」

 示された部屋は先程の講堂と同じくらい広いのに、ものすごい数のドレスで埋め尽くされていた。
 ドレスと言われたのでびっくりしたが、ちゃんとパンツ式のドレススーツだったので安心した。大人しい物から派手な物までそのデザインは様々だ。僕はリアンと一緒にアレコレと迷い選ぶ。リアンも僕もクリーム色主体で襟や袖の折り返しが色違いのスーツ。リアンは薄いブルー、僕は藤色。それぞれの目の色と同じだ。本当はもっと地味で良いのだけど、これ以上地味なのがない。僕たち白色の色を選んだ子は皆あまり派手な色や形は嫌いらしく選ぶのが大変だった。
 着替えが終わる頃、次の人達が入ってくる。

「揃った順に選ばせるなんて酷くない?!」
「私より後に来たのに先に選ばせるなんて!……先に言っておいてほしい!」
「身の程知らずが先に選ぶなんてあり得ない!」

 等、非難が凄まじい。それもそのはず、次の人達は赤色の人達で、殆どが特権階級出身らしい。すれ違いざま、じろりと睨まれたり文句を言われる。
 しかし意外にも一人の言葉で蔑みの目で見られてはいても静かになった。

「いやいや。一応、身の程は弁えてるようだよ。ご覧なさい、なんとも地味な物を選んでいる。ここがどういう所か分かっていないようだ。ここは後宮選定の場……自分を美しく整えるのは当たり前だと言うのに!」
  
 ハハハハハと笑いながら奥へと進んで行ったのは先程の正妻の長男と話していた人だ。

「ルカ!」
 
 呼ばれ振り替えると、もう行ってしまったと思っていた正妻の長男がいた。

「これからは私の名を呼ぶことを許してやろう。遠慮せず呼んでみるといい。」

 薄笑いを浮かべたこの表情は良くない事を考えている時の顔なのだが、ここで酷い目に会うとは考え難いため素直に「エルバルド…様」と呼んでみた。口角を少しあげ満足そうに去って行った為拍子抜けしたが何事もなかったので安心した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

魔王様の瘴気を払った俺、何だかんだ愛されてます。

柴傘
BL
ごく普通の高校生東雲 叶太(しののめ かなた)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。 そこで初めて出会った大型の狼の獣に助けられ、その獣の瘴気を無意識に払ってしまう。 すると突然獣は大柄な男性へと姿を変え、この世界の魔王オリオンだと名乗る。そしてそのまま、叶太は魔王城へと連れて行かれてしまった。 「カナタ、君を私の伴侶として迎えたい」 そう真摯に告白する魔王の姿に、不覚にもときめいてしまい…。 魔王×高校生、ド天然攻め×絆され受け。 甘々ハピエン。

この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~

乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。 【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】 エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。 転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。 エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。 死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。 「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」 「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」 全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。 闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。 本編ド健全です。すみません。 ※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。 ※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。 ※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】 ※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

フードコートの天使

美浪
BL
西山暁には本気の片思いをして告白をする事も出来ずに音信不通になってしまった相手がいる。 あれから5年。 大手ファストフードチェーン店SSSバーガーに就職した。今は店長でブルーローズショッピングモール店に勤務中。 そんなある日・・・。あの日の君がフードコートに居た。 それは間違いなく俺の大好きで忘れられないジュンだった。 ・・・・・・・・・・・・ 大濠純、食品会社勤務。 5年前に犯した過ちから自ら疎遠にしてしまった片思いの相手。 ずっと忘れない人。アキラさん。 左遷先はブルーローズショッピングモール。そこに彼は居た。 まだ怒っているかもしれない彼に俺は意を決して挨拶をした・・・。 ・・・・・・・・・・・・ 両片思いを2人の視点でそれぞれ展開して行こうと思っています。

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について

はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

そういった理由で彼は問題児になりました

まめ
BL
非王道生徒会をリコールされた元生徒会長が、それでも楽しく学校生活を過ごす話。

処理中です...